認知症への備えをお忘れなく!家族と相談しておくべきこと
65歳以上の高齢者のうち、認知症になる人の割合は2025年には20%に達すると言われています。
高い確率で認知症になると思うと、自分や親がどうなるのか、不安になると思います。でも、きちんと備えておけば、必要以上に怖がることはありません。認知症はもはや珍しい病気ではないのです。自分や家族の不安を減らすために、具体的にどんなことに備えればいいのか考えておくことが必要です。
認知症に備える必要性
どうして認知症に備えることが必要なんでしょうか。
認知症になると、物事を考えたり決めたりすることが苦手になってきます。治療や介護の方針など、重要な意思決定をできなくなっていく可能性が高くなります。認知症になってからでは対応しきれない、様々な事柄を先回りして考える必要があります。
身辺情報の整理
処理しきれない情報量が、混乱や焦りを強めてしまい、認知症の症状を悪化させることがあります。
安心して過ごすためには、身の回りの情報を整理し、家族と共有しておくことが大切です。
私物を整理する
元気なうちから少しずつ私物を整理しましょう。衣類や装飾品、カード類、財布など、認知症になると、色々なことに混乱しやすくなり、どれを持っていけばいいのか、何を着たらいいのか分からなくなってきます。必要以上に私物が多いと、本人が混乱して苦しみますので、必要最小限のもので日常生活を過ごすように整理していくことが大切です。
緊急連絡先(優先順)を整理する
困った時や緊急時、誰に電話をかけるのか、絞り込んでおきましょう。
認知症になると、不安が強くなって、色々な知り合いに電話してしまうことがあります。連絡先は少なめに整理して、見やすい所に貼っておきましょう。
過去の受診歴、入院歴、お薬情報を整理する
家族でも意外と親の病歴や入院歴を知らないもの。公的なサービスを使う時に必ず必要になります。どんな病気になり、どこの病院に何日入院したのか。その後の通院の頻度や薬の情報を時系列にまとめておくと医療や介護のサービスを受ける時にスムーズです。本人だけでなく家族にも知らせておくことが大切です。
住まいの環境を整理する
認知症になると環境の変化に混乱しやすいので、元気なうちから生活しやすい環境に慣れておくことが大切です。今のうちに子どもと同居する、二階から一階に部屋を移す、ガスコンロからIHコンロにリフォームして使い方に慣れておくなど、認知症になっても安全に暮らすための備えをしておきましょう。
自分の望みを伝える・記しておく
人生の終盤を、どこでどんな風に過ごすのかはとても大切です。
認知症になると、そういった重要なことを決めるのが難しくなってしまいます。後回しにせず、家族に望みを伝え、記しておきましょう。
終末期治療について
自分の延命治療について判断できなくなった時、代わりに判断するのは家族になります。
一人暮らしで成年後見制度を利用する場合も、後見人は医療的な判断はできないこととされています。認知症になる前に、終末期治療をどうするのか決めておかなければなりません。いわゆる延命と言っても、心臓マッサージだけでなく、経管栄養や胃ろう、人工呼吸や輸血、輸液、人工透析などそれぞれについて決め、『事前指示書』を作っておくことをおすすめします。
家や貯金など財産について
まずは、どこにいくつ銀行口座や保険(個人年金を含む)、株を持っているのか洗い出します。口座はできるだけ解約して少なくしておくのが良いでしょう。何十年も前の契約内容のままにしている保険は見直しや解約が必要です。不動産は売却か生前贈与にするのか、あるいは相続なのか、必要に応じて司法書士に相談してみましょう。株式や有価証券はリストアップし、クレジットカードは解約しておきましょう。
介護サービスについて
元気なうちに早めに施設を探したいのか、できるだけ長く家で過ごしたいのか、家族と相談しておきましょう。自治体により、配食や徘徊用の登録サービスなど社会資源は様々あります。可能なら下調べは親子で一緒に行うと、認知症になった時、家族が一から社会資源を探す手間が省け、負担が軽くなります。
まとめ
認知症の備えとは、身近なものから相続に関するものまで多岐にわたります。時間をかけて、家族に相談しながら進めていきましょう。
監修大阪市立大学大学院医学研究科 神経精神医学 講師 内田 健太郎先生 日本認知症学会専門医 |