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認知症の方が前向きに生きるための家族の接し方とは?

2021年5月26日

認知症になると「治らない」「迷惑をかける」「恥ずかしい」などのネガティブな考えに襲われ、人生を楽しめなくなる方がいます。
しかし、認知症を抱えていても自分らしく前向きに生きる方が、本人はもちろん、介護する家族にも良い影響を持つことが明らかになっています。
今回は認知症の方が前向きに生きるメリットをご紹介すると共に、認知症の方が前向きになれる接し方について解説します。

認知症の方が前向きに生きるメリット

認知症の進行を遅らせる

2016年に国立長寿医療研究センターは「ポジティブ感情で認知症リスクが半減」という研究結果(※1)を発表しました。
この研究では、65歳以上の高齢者に「今の生活に満足していますか」「普段は気分がよいですか」「自分は幸せなほうだと思いますか」「こうして生きていることはすばらしいと思いますか」「自分は活力が満ちていると思いますか」の5項目に「はい」か「いいえ」で回答してもらい、その4年後に認知症を発症しているかどうかを調べました。
その結果、5項目全てに「はい」と回答していた高齢者は、1つも「はい」がなかった高齢者に比べ、男性では約50%、女性では約70%も認知症発症リスクが減少していたのです。
つまり、前向きに生きている人の方が認知症の進行を抑えることができると考えられます。

※1 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(2016.4)ポジティブ感情で認知症リスクが半減 Press Release No.72-16-02

周囲の助けを得やすい

認知症には、脳の神経細胞が減少・壊死することで記憶や判断能力などが障害される「中核症状」と、中核症状に伴い、周りの人と関わる中で発生する「行動・心理症状(BPSD)」の2つの症状があります。

BPSDの例としては

  • 行動症状:暴言・暴力・徘徊・介護拒否など
  • 心理症状:不安・抑うつ・妄想・幻覚など

が挙げられます。

そして、認知症の方のネガティブな感情はBPSDに影響します。
例えば、「できなくなっていく自分を認めたくない」という不安感が「暴言や暴力」「介護拒否」などの形で現れ、介護している家族を苦しめてしまうのです。
こういった状態に陥ることを防ぐためにも、認知症の方が前向きに生きられるようサポートすることが大切です。

認知症の方が前向きになれる接し方とは?

「できない」ではなく「できる」に注目する

認知症になっても「できる」ことに注目し、役割を任せたり、頼ったりすることで「自分もできることがある」「みんなの役に立っている」という自己効力感を高めることができます。
2006年に行われた認知症の方の自己効力感に関する研究(※2)では、当初は自己否定感の強かった認知症の方に一貫して「教えてほしい」とお願いし、自分の人生経験を教える役割を果たしてもらったところ、自己効力感が高まったことが明らかになっています。
また、やってもらったことには「ありがとう」を伝えると、さらに自己効力感を高める効果が期待できます。

※2 畑野相子・筒井裕子(2006)認知症高齢者の自己効力感が高まる過程の分析とその支援 人間看護学研究 4 pp47-61.

認知症の方の言い訳を認める

認知症の方が物をなくしたとき、「絶対にここに置いたのになくなった!誰かが盗んだに違いない!」と訴えることがあります。家族は「自分がどこかに置き忘れたくせにまた言い訳して」と思うかもしれません。
しかし、認知症の方の言い訳は「自分は何もできなくなるんじゃないか」という不安から心を守る大切な手段。「そんなの言い訳でしょ」と否定すると、認知症の方の心は深く傷つき、前向きに生きることが難しくなってしまいます。
「そうなの?困ったね。私も一緒に探してみるよ」と寄り添い、言い訳を否定しないようにしましょう。

家族も資源を活用して休む

家族に余裕がないと、認知症の方にできることがあっても「私がやった方が早い」と感じますし、言い訳には「こっちも忙しいのに!」とイライラしてしまいます。その結果、認知症の方に否定的な言葉をぶつけてしまうことも。
デイサービスやデイケア、ショートステイといった介護サービスを上手に活用し、家族も定期的に休みを取るようにしましょう。

まとめ

認知症の方が前向きに生きると、

  • 認知症の進行を遅らせる
  • 周囲の助けを得やすい

といったメリットがあります。

家族が認知症の方が前向きになれるよう接する際には、

  • 「できない」ではなく「できる」に注目する
  • 認知症の方の言い訳を認める
  • 家族も資源を活用して休む

の3点に注意してみてください。

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