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誰が成年後見の申立をできるのか?

2020年12月9日

認知症になると、もの忘れや判断力の低下から、例えば、家賃や公共料金の支払いを忘れたり、ゴミの出し方を忘れたりする等、様々なトラブルに遭遇することが予想されます。そのようなときに、本人の周りにいらっしゃるご友人や近所の方、日常生活を支援するホームヘルパーなどの介護サービス事業者等が最初に、本人が認知症にかかってしまっているということに気づくことがあります。

このようなときに、好意であったとしても、例えば、勝手に本人のお金の中から家賃の支払い等をしてしまえば、後々にトラブルになる可能性があります。そこで、本人が認知症になってしまったために、ご友人や近所の方などの本人の周りの方々から、成年後見の申立をしたいという相談が寄せられることがあります。誰でも、本人のためであれば、成年後見の申立をすることができるのでしょうか。今回のコラムでは、誰が成年後見の申立をすることができるのかについてご説明します。

成年後見の申立について

法律上、成年後見の申立ができるものは、本人、配偶者、4親等以内の親族、検察官、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、市町村長などに限られています。このうち、4親等内の親族とは、親(1親等)、兄弟(2親等)、孫(2親等)はもちろんのこと、おじ・おばや甥姪(3親等)、いとこ(4親等)や甥姪の子(4親等)までの親族ということになります。

例えば、ご友人や近所の方、民生委員、介護事業者の方の場合には、親族ではないため、成年後見の申立をすることはできません。

ただし、65歳以上の方、知的障害者、精神障害者について本人の福祉を図るために特に必要がある場合等には、市町村長等が、申立をすることがあります。市町村長等の申立については、親族がいないのかどうかの調査をしたり、親族がいる場合には、親族の意向を確認したりするため、一定程度の時間を要することが多くなります。検察官申し立ては、市町村申立ができない場合に行います。

親族のご協力を得ることができない場合には、弁護士や司法書士等の専門家に相談し、成年後見の申立が可能かどうか、検討されることをお勧めします。

なお、一度成年後見の申立をすると、すぐに成年後見の申立を取り下げることはできません。成年後見制度は本人(被後見人)を保護するための制度であるため、本人保護の観点から簡単には取り下げができません。取下げの理由を明らかにしたうえで、家庭裁判所の許可をえる必要があります。
例えば、申立人自らが後見人に選任されると思って、後見開始の申立をしたが、成年後見人に弁護士や司法書士等の専門職が選任される見込みになったことを理由に、申立を取り下げるということは認められません。

執筆:山口心平法律事務所 弁護士 山口心平

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