入院の保証人は必要か?
入院手続をしようとすると、医療機関から、お身内の方に入院の連帯保証人・身元保証人になってもらえないかと、保証人を求められることがあります。
子供や兄弟など頼れる親族が近くにいれば良いが、遠方であったり、頼れる子供や兄弟がいなかったりした場合には、どうすればよいのでしょうか。
友人等に依頼すると大きな責任が生じます。
医療機関から連帯保証人・身元保証人から要求されたときに、頼れる親族が近くにいない場合、多くの方々が、友人や知人等に依頼して、入院していると聞きます。
もっとも、連帯保証人になると、医療機関から支払いを求められた場合、いつでも支払いに応じなければなりませんし、身元保証人になれば、意思疎通が困難な患者に代わって意思決定をしたり、患者が死亡した時の遺体の引き取りをしたり等を行うことになります。
非常に重い責任を負うことになるため、頼む患者側も頼まれる友人や知人等としても、感情的なしこりを残し、場合によりトラブルになることもあります。
保証人が必要という法的根拠はない
入院をするためには、保証人が必要という法的根拠はありません。むしろ、入院が必要であるにもかかわらず、入院に際して、保証人がいないことだけを理由に、患者の入院を拒否することは、医師法19条1項に違反するものと考えます。
したがって、保証人がいなくても、保証人となってくれる方が身近にいないことを伝えることにより、法律上は、入院をして治療を受けることができます。
患者相談室等に相談してみましょう
もっとも、現実的には、これから入院し、治療を期待している医療機関に対して、医師法19条1項を根拠にして、保証人を立てずに入院を求めることは現実的ではありません。
そこで、このような場合には、病院の患者相談室や医療ソーシャルワーカー、あるいは、行政の地域福祉権利擁護事業(お住まいの市町村社会福祉協議会)に相談することで解決できる場合があります。
なお、病院によっては、保証会社と提携し、連帯保証人を提示できない患者のために、所定の保証料で一定額までの債務を保証するような制度を設けているところがあります。
また、保証会社以外にも、クレジットカード番号の登録、入院保証金を預け入れること等を積極的に案内し、入院を認めているところもあります。このような制度がないかどうかを確認することも一つの方法です。
以前のコラムで紹介した任意後見契約(【財産管理】認知症への備え~任意後見契約について~)を締結していた場合に、契約をしていれば、任意後見人が、入院時の身元保証人となることもあります。また、成年後見人(又は保佐人、補助人、任意後見人等)が選任されている場合は、成年後見人等が患者の財産を管理しているため、患者に代わって治療費や入院費用等の支払いをしてくれるだろうとの信頼から保証人がいなくとも入院が認められる場合があります。
まとめ
医療機関が入院時に保証人を求めることには、法律上の根拠はない。保証人を立てることができない場合には、病院の患者相談室等に正直に保証人を立てることができないことを伝えて、他の方法がないかどうかを検討してみてください。
参考
医師法
第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
執筆:山口心平法律事務所 弁護士 山口心平