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【事後手続】相続トラブル防止に備え~遺言について

2020年9月2日

遺産を分ける際、子供たちといった相続の権利を持つ人同士が話し合って円滑に終わればいいですが、そうとは限らないこともあります。最高裁の統計では、調停などが成立した遺産分割事件を金額別に見ると、約3割は1千万円以下となっています。相続トラブルは金額の多寡に限られるわけではありません。
相続人の誰が、どれくらい受け取るかは民法で決められています。その「法定相続」よりも優先されるのが、遺言による相続です。遺言で意思が示されていれば親族間のもめごとを防げ、相続人以外に世話になった人などにも財産を譲ることができます。

南原太郎さん(仮名)の事例

南原太郎さんは、妻を亡くし独り身ですが、三男夫婦(子供はいない)が同居して世話をしてくれています。しかし、その三男も一年前に亡くなってしまいました。それでも三男の妻桃子さん(仮名)は太郎さんの世話を同居してみてくれています。
「法定相続」によると、太郎さんの死後、相続人となる人は、長男、次男の二人だけとなります。
太郎さんは、桃子さんにも何らかの財産を残してやりたいと思い、エンディングノートの相続のページに、「同居してずっと面倒をみてくれている桃子さんにお礼がしたいので、私の預金の3分の1を桃子さんに相続して下さい。」と記載しました。
しかしながら、知り合いの弁護士に聞いたところ、このエンディングノートは遺言書としての法的効力はないと言われてしまいました。

エンディングノートと遺言

エンディングノートは、自分自身が死亡した場合に備えて、自らの考えなどを記録するものが多く、「日付がない」、「押印がない」など遺言として法的効力を有するための要件を充たさないのがほとんどです。
そのため、法的効力を持った形で思いを残しておきたいのであれば、遺言という形で残しておく必要があります。
事例の太郎さんのように、太郎さんの子供の配偶者(桃子さん)など、相続人以外の人に財産を残したい場合など、法的効力をもった遺言で記しておけば、桃子さんにも財産を残してあげることができます。

遺言の種類

遺言書の代表的なものとして、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
自筆証書遺言は、ご自身で作成できる遺言書です。全文、日付を自書で記載し、署名捺印します。(ただし、2019年法改正により方式が緩和されています。)
いつでもどこでも自由に作れるという手軽さがある一方で、形式に不備があると無効になる恐れや、自宅などに保管して死後に発見されないという危険性もあります。また、死後に遺言書を開封するには、家庭裁判所で遺言書の状態や内容を確認する手続き(検認)を受ける必要があります。
なお、2020年7月より自筆証書遺言保管制度という制度が新たに制定されました。ご自身の自筆証書遺言を法務局に保管するというものです。この制度を利用する場合、検認は不要となります。
もう一つの「公正証書遺言」は、公証役場で2人以上の証人が立ち会い、法律の専門家である公証人と作る遺言になります。財産額に応じた手数料が必要となります。
遺言書は公証役場に保管されるので、死後に紛失や偽造等される危険性はなく、検認は不要となります。

まとめ

ご自身が亡くなられた後のトラブルを防止し、かつ、ご自身の思いを残しておくためにも遺言書を作成しておくことはとても重要なことといえます。
もっとも、遺言書を作成しても死後に確実に発見され、その内容通りにならないと意味がありません。その辺りも含めて、ご自身にあった遺言書を残されるといいでしょう。

用語解説

自筆証書遺言の方式緩和

2019年の法改正により、自筆証書遺言の方式が緩和されています。今まで遺言全文を自書する必要がありましたが、財産目録の記載部分についてパソコン等により作成したものでも認められるようになりました。自作したもののほか、不動産の登記事項証明書や通帳のコピーでも認められます。ただし、財産目録の各ページにそれぞれ署名捺印する必要があります。

自筆証書遺言保管制度

2020年7月制定された制度で、自筆の遺言を全国312か所の法務局に預けることができる制度です。法務局の職員が自筆証書遺言の形式をチェックし、原本やデータを法務局に保管します。手数料は1件3,900円です。相続開始後、相続人らは遺言書の保管の有無を確かめることができますし、内容を閲覧することができます。家裁での検認は不要となります。
ただし、公正証書遺言の様に内容について助言を受けることはできません。

執筆:弁護士 高岸佳子(大阪弁護士会)