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どうすればいい?認知症における服薬管理の工夫

2021年3月17日

認知症の方に薬を飲んでもらうのに苦労していませんか?
日本では、高齢化にともあって認知症患者は増加しています。認知症の治療で最も重要とされるのが服薬ですが、認知症の症状から服薬が困難であることが多いです。京都大学大学院が実施した調査によると認知症の方の約50%が薬の飲み忘れがあり、嚥下困難などで飲み込みにくいなどの理由で32%の方が薬剤を変更の希望したという報告がされています(※1)。そのため認知症の方には服薬管理に工夫が必要です。
今回は、認知症における服薬管理の工夫を紹介していきます。

(※1)認知症患者に対する服薬調査 ,京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻

認知症の方が直面する服薬管理の問題

認知症は、複雑性注意、実行機能、学習および記憶、言語、社会認知などの認知能力の低下を起こす疾患です。そのため、多くの認知症の方は服薬管理に大きな問題を抱えることが多いです。
認知症の服薬管理に関する問題は三つに分けることができます。薬の飲み忘れ、薬を飲んだのに薬を要求する、服薬の拒否です。

飲み忘れる場合

認知症になると記憶力が低下するので薬の飲み忘れが増えることがあります。特に、高齢者になると服用する薬が増える傾向にあるため薬を指示通りに服用することが困難になります。
そのため、薬の管理が簡単になるように工夫する必要があります。

一包化

一包化は服用する時間ごとにまとめて袋に入れることです。一つ一つの薬を管理する必要がなくなるので管理の手間が少なくなります。また、錠剤をヒートシールから取り出しにくいなどの問題も解決できるので手が動きにくくなったと感じる方にもおすすめです。
医師の指示があれば調剤薬局で一包化できます。

お薬カレンダー

お薬カレンダーは、用法と曜日ごとにポケットがあるので薬を入れることができます。薬の飲み忘れなどの服薬状況が視覚的に確認できるため管理が簡単になります。

訪問介護やデイサービス利用時の服用

訪問介護やデイサービスを利用している場合にはヘルパーや職員に服薬をお願いすることも有効です。サービス利用時であれば服薬の確実性が上がります。

服用したのに薬を要求する場合

薬を服用したのに薬を要求する場合、薬を服用した記憶がないので本人にとっては事実ではなく説得することは困難です。しかし、薬を指示された量より多く服用すると副作用が強くでる可能性があるため、薬は決められた量を服用することが重要になりますが、要求を拒否すると反発される場合も多いので納得してもらうための工夫が必要です。

偽薬を使用する

薬を要求する場合には乳糖やビタミン剤、整腸剤など続けて服用しても害の少ないものを飲んでもらうという方法があります。医師に相談して偽薬として処方してもらえる場合もあります。

服用を拒否した場合

高齢者の中には嚥下能力が低下しているため薬が飲み込みにくいケースもあります。また、味が苦手と感じる場合や薬に対して不信感を抱いている場合もあります。

薬局で粉砕してもらう

医師の指示があれば薬局で薬を粉砕して一包化することも可能です。服薬管理も簡単になるだけでなく嚥下能力が下がっている場合でも飲み込みやすくなります。また、薬に対して不信感を抱いている場合には粉砕することで本人にわからないように料理や飲み物に混ぜるという方法もあります。薬によっては粉砕してはいけないものもあるので薬局に相談してみましょう。

薬を変更してもらう

認知症の薬の中には服薬しやすいように製造されたものもあります。ゼリー状の薬剤であれば味も比較的に良く、飲み込みやすいという利点があります。薬を飲むことが難しい場合には貼るタイプのお薬も存在しています。

まとめ

認知症になると記憶力や学習能力などの社会的認知能力が低下するため服薬管理に問題を抱えることが多いです。薬の管理が難しい場合には一包化、お薬カレンダーなどを利用してみるといいでしょう。味に問題がある場合や飲み込みにくい場合には粉砕したり料理にまぜることも選択肢にあがります。認知症の薬にも様々なタイプが存在しているので医師や薬剤師などに相談していみるといいでしょう。

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