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認知症の睡眠障害と3つの対処法

2021年3月3日

認知症と言えば、本人の自覚がないままに物忘れをしてしまったり、認識する力が低下してしまう症状が有名です。
しかし、認知症の人は認知機能障害に加えて、睡眠障害を合併しやすいと言われています。
今回は、認知症の睡眠障害と3つの対処法を解説するので、睡眠に困る認知症患者が身近にいる人は参考にご覧ください。

睡眠障害とは

まず睡眠障害とは、睡眠に関する問題全般を指します。
「なかなか寝つけない」入眠困難や、「途中で何度も目が覚めてしまう」中途覚醒、「朝方早くに目が覚めてしまう」早朝覚醒などをまとめた不眠症が有名です。
ほかにも、過剰な眠気で眠りすぎてしまう過眠症や、夜間の睡眠に問題はなくても日中の不適切なタイミングで眠ってしまうナルコレプシーなども睡眠障害の一種です。
睡眠障害の原因は加齢や心理的な問題、生活リズムの乱れなどがあります。

認知症の睡眠障害

認知症の場合、加齢に加えて中途覚醒してしまうことが多く、同世代の人よりも睡眠が浅くなるのが特徴的です。
夜間の中途覚醒のため睡眠が足りなくなり、日中の睡眠が増えることで生活リズムが崩れ、さらに睡眠障害を悪化させてしまうことが多いです。
また、夜間の中途覚醒がない場合でも、見当識の低下から日時が分からなくなり昼夜逆転してしまうのも特徴的と言えます。

認知症の睡眠障害への3つの対処法

ストレスの蓄積やカフェインの過剰摂取で生じやすい一般的な睡眠障害とちがい、認知症の場合は生活リズムの乱れや、病状による脳内物質の減少が影響しやすいです。
そのため、睡眠薬を利用した対症療法よりも具体的な行動で根本的な改善を図ることが効果的と言えます。

朝に日光を浴びる

生活リズムを整えるためには、朝から日光を浴びることが効果的です。
1日中自宅や施設の中で過ごすことが多い認知症患者にとって、午前中に日光を浴びると意識のメリハリをつける効果もあります。
また、朝方に日光を浴びることで体内時計をリセットすることもできますし、日光浴をすることで睡眠誘導ホルモンの「メラトニン」を分泌できます。
「メラトニン」は日光浴の15時間後頃に分泌されるため、早朝の行動を推奨します。
雨や曇りの日でも、1時間ほどベランダで過ごすなど外の空気にふれることで「メラトニン」は分泌されます。

睡眠リズムを整える

認知症の睡眠障害は、加齢や寝ぼけによる中途覚醒から生活リズムが狂う影響が多いため、睡眠リズムを正す行動が効果的です。
たとえば、このような具体的な行動ポイントがあります。

  • 起床後や寝る前は必ずトイレへ行く
  • 横になるのは夜寝るときだけにする
  • 昼間は明るく、夜は暗めなど明るさ調整をする
  • 大まかに1日のタイムスケジュールを決め、紙に書くなどで共有する

夜間の睡眠効果を上げるために、日中は散歩など軽めの運動を取り入れ、適度な疲労を感じながら昼寝ができない時間づくりをするのも効果的です。
また、認識力が低下するため、本人の行動やスケジュールを紙に書くなどで共有し、目で見て分かるようにすることもおすすめです。

不安を取り除く

睡眠障害全般に対する対処法ですが、些細な不安や孤独感などで眠りが浅くなり、中途覚醒することも多いです。
不安で眠れなくなることは誰にでもあります。
夜の暗さや1人で眠ることに不安がるなど環境要因であれば対応し、何か悩みをもっている場合は話を聞く時間をとってみましょう。
物忘れから同じ話を何度もする人が多いため、家族が話を聞くことが難しい場合は、医師や専門家に話を聞いてもらうことをおすすめします。

まとめ

認知症は、認知機能の低下から中途覚醒などの睡眠障害を合併しやすく、日常生活上で悪循環から重症化もしやすい特徴がります。
対応するには本人の生活リズムを正していくことが効果的です。
睡眠リズムを整えるために朝から日光を浴びたり、日中の散歩などで予定をつくり、寝る前はトイレへ行くなど、本人と共有しながら規則正しい生活をしましょう。
具体的な行動で、睡眠障害の予防・改善を行えます。

監修大阪市立大学大学院医学研究科 神経精神医学 講師
内田 健太郎先生
日本認知症学会専門医

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