介護老人保健施設ケーアイ ~一人一人の利用者に寄り添う個別ケアに力を注ぐ~
介護老人保健施設ケーアイ(高槻市)は、56歳から102歳まで平均年齢86歳の入所者を受けて入れています。健康状態が一人一人違う利用者に寄り添おうと、介護福祉士の具志堅光茂(ぐしけん・みつしげ)さんは「見守り支える個別ケアに力を注ぎたい」と話しています。
施設の特徴を教えてください。
在宅復帰を目指す利用者さんの安心、安全の生活が送れるように介護指導に力を入れています。朝礼時に、スタッフみんなでスピーチロック撲滅宣言を唱和しています。
スピーチロックとは、ことばで行動を制限したり制止したりして、利用者さんの自由と尊厳を損なう行為を意味します。
宣言の内容は、
・私たちは理由のないちょっとまっては言いません。
・ケアの基本は思いやり。
・必ず名前を呼んで問いかけます。
・必ず理由を説明します。
名前で呼ばれたら、誰でもうれしいですよね。名前を呼んで「どうしましたか」と声掛けすると、ご本人も安心します。利用者さんが安心して暮らせる環境に心を配りたい。全職員がそんな思いを共有しています。
具志堅さんのプロフィールを教えてください。
私は沖縄県出身です。おばあちゃんが大好きだったので、高齢者とかかわる仕事をしたいと希望してヘルパーの養成施設に行きました。介護福祉士の資格を取ってから、この法人に入り、この施設に働いて12年間になります。
今、どのようなことに取り組んでいますか。
その人が何をしたいかを聞きます。盆栽が好きな人なら、家から盆栽を持ってきてもらいます。盆栽に水やりするだけでも、ご本人の表情はまったく違ってきます。
生活のためのリハビリとして、日中はベッドから起きて行動することが基本です。車いすで移動するだけでも視点が変わります。
日中に毎日あるレクリエーションは、コロナ禍のためにできることが限られ、DVDを見て楽しんだり、脳トレなど頭を使ったりして時間を過ごしています。DVD鑑賞では、映画の寅さんやモノクロの洋画「ローマの休日」、若い頃に子どもに見せたアニメ「じゃりン子チエ」といった元気な頃を思い出せる作品を探します。
今後、取り組みたいことはどんなことですか。
利用者さんから学ぶことが少なくありません。ひげそりの習慣がある方に、ひげそりと鏡を渡すと、ちゃんと使えます。時間がかかっても、気長にじっと見守る姿勢が大切です。
認知症を見るのではなく、人として向き合える施設にしていきたい。
「旅行に行きたい」「買い物に行きたい」と願う利用者さんがいたら、みんなでアイデアを出し合って、その希望をかなえてあげたい。利用者さんの気持ちに寄り添い、気持ちを支える存在でありたい。その個別ケアに力を入れています。
オレンジネットを通じて、伝えたいことをお願いします。
ふれあいを大切にしたい。業務の効率化を図って、利用者さんにかかわる時間を増やします。利用者さんの心が動くケアを実践して、在宅復帰につなげたいと考えています。
介護職員や看護師など多職種の職員をまとめる療養科長の中川文子(なかがわ・あやこ)さんに今後の施設の方向性について、お聞きしました。
病院で寝たきりだった人が施設に入って生活のためのリハビリを重ねると元気になります。「介護の力」はすごいと可能性を感じます。「こうしたい」「こうなりたい」と希望されるご本人やご家族の意向を尊重し、あらゆる職種の職員が在宅復帰を支えるために連携しています。長期の利用者さんにも「家に帰ってよかった」と言ってもらえるように。認知症の人にもできることはたくさんあります。地域とのつながりを大切にして、周囲の人が知恵を出し合って利用者さんの居場所づくりを大切にしたい。その人の生きる力を引き出すケアに力を注いでいます。
施設紹介
社会医療法人愛仁会 介護老人保健施設ケーアイ
所在地:大阪府高槻市原112
電話番号:072-687-0103
入所定員:100人
通所定員:40人
執筆:おれんじねっと記者 中尾卓司
1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。 |