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介護老人保健施設希望ケ丘~自然と緑に囲まれた国内初のモデル施設で心おだやかに

2021年7月20日

介護老人保健施設希望ケ丘(貝塚市)は1987年に老人保健施設制度が整えられて初めて、国の指定を受けた全国7モデル施設の一つです。自然と緑に囲まれた小高い丘の上にあり、比較的に重度の認知症の利用者が笑顔で心おだやかに過ごせる施設となっています。

支援相談員の小林圭(こばやし・けい)さんは「安心できるコミュニケーションを大切にしています」と話しています。

私は社会福祉士の資格を持って、支援相談員として働いて16年になります。ご家族から最初に入所の相談を受ける際の窓口の役割を担い、提供できる介護サービスを説明します。
50代から100歳まで入所者の平均年齢は84歳、大阪府北部や和歌山県から入所される人もいます。
重度の認知症の利用者さんが多いという特徴もあり、家族さんには入所前に施設を見てもらいます。ご家族も利用者さんも安心できるコミュニケーションを大切に考えています。
コロナ禍で大変ですし、面会の制限もあります。家族向けに毎月送る通信文書には、行事などで撮った利用者さんの写真を印刷して入れています。

認知症であっても、程度に応じた身体の機能は残っています。今できることを大事にしてほしいと願います。
根気強く接することを重ねると、利用者さんとの信頼関係もよい方法に向かい、利用者さんの笑顔を取り戻すことができます。いいときも悪い時もあり、多職種の職員が時間を掛けて向き合っています。

ご家族のためにも、地域社会のためにも、気軽に相談できる窓口を目指しています。

作業療法士の西野佑妃(にしの・ゆき)さん は「笑顔で心おだやかに過ごせるように努めています」と説明していました。

重度の認知症の利用者さんが多く、笑顔で心おだやかに過ごせるように努めています。
作業療法士3人が分担して、ひとり1回20分間、週2回のリハビリを担当します。ひとりひとりの状態に合わせて対応を工夫します。

イネーブルガーデンという名前の農園があり、サツマイモやタケノコ掘り、ミカン狩りなどの活動もリハビリに有効です。室内でも、コロナ禍の感染対策に気を配りながら、季節ごとに旬のものを味わえるよう、お菓子づくり、流しそうめんなどの行事を工夫しています。

グループ内には大阪河﨑リハビリテーション大学や河﨑会看護専門学校があります。
学生たちはこの施設で9週間の実習に臨みます。働きながら看護専門学校に通って看護師の資格を目指す職員もいます。若い世代の存在が刺激になり、普段見られないような入所者さんの様子に、こちらも嬉しくなります。

生活の質の維持に向けてすべての職種の職員が協力します。ここで看取る人もいます。よりよい最期を迎えられるように、看護師とも介護職員とも職員間の情報共有には気を配っています。
しんどい思いをされるご家族のためにも「最後のとりで」の役割を担いたいと願っています。

作業療法士の須古星浩一(すこぼし・こういち)さんは「自分の得意分野を生かせる仕事です」と話しています。


小さい頃からもの創りが好きです。施設の中を明るくしようと、春にはサクラの木を作ったり、今は長靴と傘の飾りを作っています。
季節の創作物作りに力を入れて、外出できないコロナ禍の施設内でも四季を感じてもらいたいと考えています。

入所者さんひとりひとりと、リハビリに取り組む中で、認知症の入所者さんに対しては、相手を否定せずに、まずは受け止めることが大切です。自分が輝いた時代を取り戻してもらえるような関わりを心掛けています。

「エピソード記憶」といって、うれしかったことや悲しかったことなど感情に働きかける記憶は残っているものです。子育ての楽しかったことも、戦争のころの悲惨な体験も。感情の起伏がある人でも、好きな毛糸と編み棒を持つと編み物に没頭すされることもあります。
声かけひとつで反応が違います。足の痛みがある人に「歩きましょう」と言っても、「足が痛いから」と断られる方に、「(好きな)花を見に行きましょう」と声をかけると歩いてくれる時があります。利用者さんの好きなこと、得意なことを引き出すことも、とても大事にしています。
作業療法士は、自分の趣味や好きなことも生かせる仕事です。「野球が好き、釣りが趣味」と話すと会話のきっかけになります。釣りの話題を振ると「ああ、そうなん。昔、釣りに行ったにときにな」と話が弾みます。自分自身が普段から、いろんなことに興味を抱いて、何でも経験しておくと、色々な入所者さんとの関係作りやリハビリプログラムに生かすことができます。

作業療法士はそんな楽しさや、やりがいのある仕事です。若い世代に知ってほしいと願っています。

事務長の坂ノ上五十鈴(さかのうえ・いすず)さんは「地域社会における役割を果たしたい」と訴えていました。

新型コロナ感染対策は大変でした。ほとんどの利用者さんはご家族の了解を得てからワクチン接種を受けて、7月中には2回目の接種も終わる見通しです。法人グループの水間病院と歩調を合わせて、面会が再開できることを期待しています。

モデル事業で生まれた歴史のある老健施設として、地域社会における役割を果たしたいと願っています。

ここに移る前にグループ内の特別養護老人ホームに勤務していたとき、オレンジカフェやこども食堂を開くなど地域社会とのつながりを大切にしてきました。地域の人に、医療や福祉、介護のサービスをもっと知ってもらう機会を広げたかったからです。
地域に入り込むには時間は掛かりますが、地域社会とのつながりを大切にしたいのです。

高齢者の介護には24時間365日、終わりがありません。「家族だから」とぎりぎりまで、頑張りがちですが、我慢の限界を超えると介護は続きません。
余裕があるうちに相談してください。施設に預けて面会に訪れる選択肢もあります。老健施設や相談窓口を活用して早めに相談してください。

施設情報


医療法人河﨑会 介護老人保健施設希望ケ丘
所 在 地:大阪府貝塚市水間510
電話番号:072-446-7881
入所定員:70人

執筆:おれんじねっと記者  中尾卓司

1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。
1990年4月、毎日新聞入社。大阪社会部、外信部、ウィーン支局、社会部編集委員を経て、2020年3月、毎日新聞を早期退職。記者一筋に30年の経験を生かして、おれんじねっとの取材チームに加わり、記者活動を展開中。「つなぐ、つながる、つなげる」を掲げて新しい情報発信のかたちを提案している。
大阪大学箕面キャンパス「現代ジャーナリズム論」非常勤講師
関西大学社会学部「ジャーナリズム論」「時事問題研究2」非常勤講師

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