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悪質な訪問販売被害にあったときの対応

2020年9月25日

世の中の人間が、皆、高齢者に対して優しく接する人間ばかりだと良いのですが、残念ながら、そうではありません。判断能力が衰えてきている高齢者や、孤独な高齢者を狙って、財産を奪おうとする人が世の中には存在します。

今回は、身内の方が、悪質な訪問販売被害にあったときの対応について、ご説明します。

訪問販売被害の実例

独立行政法人国民生活センターが令和元年9月12日に発表した資料の中に、下記の相談が載っています。

「父は認知症で要支援1、母は難病で要介護2でともに高齢だが、介護サービスの利用などを拒否し自分たちだけで生活している。先日母と電話で話したところ、家の外壁や屋根の工事、床下換気扇の取り付け、高額なふとんや浄水器などを訪問販売によって契約させられているようで、もうお金がなくなったと言う。それなのに来月また床下の工事をして、ふとんも買い換えるらしい。自分は遠方に居住しているので心配だ。何とかできないか。」

ご両親が本来必要でないと考えていたのに、訪問販売をうけて契約したのであれば、その契約を「なかったこと」にすることがご両親のためになります。特に、その契約によってお金がなくなったとなれば、ご両親の将来の生活のためにも、お金を取り返す必要があります。

それでは、訪問販売をうけて行った契約を「なかったこと」にするには、どのようにすれば良いのでしょうか。

クーリング・オフ制度

クーリング・オフの権利内容

訪問販売をうけて行った契約を「なかったこと」にするための手段の1つに、クーリング・オフの行使があります。

クーリング・オフとは、特定商取引法により、消費者に認められている権利で、この権利を行使すれば、契約を解除することができ、契約を「なかったこと」にすることができます。クーリング・オフを行使すれば、契約を無条件で解消することができ、支払った代金の返還を請求することができ、消費者は何らの負担を負う必要もありません。

クーリング・オフの行使期間

クーリング・オフを行使するに当たって、注意をしなければならない点は、法定書面を受領した日から8日間を経過すると行使できなくなる点です。

法定書面とは、販売業者に作成が義務づけられている書面のことで、訪問販売により契約を締結する際に、消費者に交付しなければならない書面のことです。消費者は、法定書面を受領した日から8日間を経過すると、クーリング・オフの行使が出来なくなってしまうのです。

しかし、販売業者から交付された法定書面に不備があり又は虚偽の記載がある場合は、法定書面を交付されたとはいえないので、その書面を受領した日から8日間が経過しても、クーリング・オフを行使できます。また、そもそも法定書面の交付を受けていない場合も、いつまでもクーリング・オフの行使が可能となります(但し、法定書面の不備が軽微であれば、8日間を経過すると行使できなくなる場合もあると考えられます。)。

まとめ

今回は、身内の方が、悪質な訪問販売にあったときの対応についてご説明しました。

クーリング・オフの行使をすることで契約を解除することができ、支払った代金の返還を受けることが出来ます。販売業者から法定書面を受領した日から8日を経過したときは、クーリング・オフの行使は出来なくなりますが、法定書面に不備がある場合は、8日間を経過しても行使できます(但し、法定書面の不備が軽微であれば、8日間を経過すると行使できなくなる場合もあると考えられます。)。

クーリング・オフの行使は、消費者に認められた最大の権利といっても過言ではないので、身内の方が悪質な訪問販売の被害に遭ったときは、クーリング・オフの制度の利用をご検討下さい。

用語解説

  • 特定商取引法
    特定商取引法は、①「特定商取引」と呼ばれる類型の取引を公正にし、②特定商取引による商品・指定権利の購入者や役務提供を受ける者(これらの者は「購入者等」と表記されます。)が受けることのある損害の防止を図り、購入者等の利益を保護すること、③あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、ひいては国民経済の健全な発展に寄与することを目的として制定された法律です。
  • 訪問販売の際に交付されるべき法定書面
    訪問販売の際に交付されるべき法定書面とは,申込書面又は契約書面のことです。申込書面と契約書面には,基本的に同じ事項が記載されることとなっており,①契約の当事者に関する事項,②契約の目的物に関する事項,③契約の代金に関する事項,④契約の履行に関する事項,⑤契約の解除に関する事項,⑥契約の日付に関する事項が,絶対的記載事項として,必ず記載されるべき事項です。

執筆:折田総合法律事務所 弁護士 浅田健一郎