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地域・医療と共に全体で見守る「淀川区オレンジチーム」の紹介

2022年12月20日

おれんじねっとでは、大阪市各区「オレンジチーム」の活動についてシリーズでご紹介しています。
今回は、淀川区オレンジチームの今井 知世美(いまい ちよみ)さん、野田 隆照(のだ たかてる)さん、森口 浩(もりぐち ひろし)さんにお話を伺いました。

淀川区のオレンジチームについてお聞かせください

淀川区の東部地域包括支援センターに所属する淀川区オレンジチームは、現在の医療・福祉職のメンバー3人での活動は今年(2022年)5月からです。3人ともまだ配属から日が浅く手探り状態ではありますが、個々の動きやそれぞれが受け持つ支援計画について情報を共有できるよう、毎日ミーティングの時間を取るようにしています。

区内の各地域包括支援センターとも密に繋がっており、認知症サポート医も8名と多いため、相談者の方がそのまま地域で生活を続けて行けるようなサポート体制が整っている、ということが強みだと感じています。

活動では平均して週に1~2件ほど電話での相談が入るのに加え、区内に4つある地域包括支援センターやコーディネーターさんから困難ケースの協力依頼が寄せられることもあります。特に、介入が難しいケースについてはオレンジチーム単独ではなく包括など他のメンバーと共同で動くことが多く、ひとつの事例につき関わる期間が比較的長期化しやすい特徴があります。

高齢者と接する機会が最も多いのですが、中には若年性認知症の方や脳血管性認知症の方など、比較的近い世代の方と関わることもあります。我々もまだチーム員として駆け出しではありますが、どう接するのがベストか、どんなサポートができるのか、日々の活動を通じて勉強しているところです。

淀川区の特徴についてお聞かせください

東西に長い淀川区は東部、西部、南部、区と、地域包括支援センターが4つあり、それぞれに異なる特徴があります。

新大阪駅がある東部は商業地域で、オフィスビルや学校、マンションが多く、朝と夜の人口流動を認めます。尼崎市に隣接する西部は小さな工場が密集する工業地帯で、昔ながらの下町という雰囲気です。大阪でも有数の繁華街・十三駅がある南部は飲食店が多く、区北東部にあたる区包括地域は昔からの横の繋がりが残る住宅街です。

淀川区の高齢化率は24~25%ですが、近年、区内に多数ある市営住宅が老朽化による建て替えを行うことが多く、そこに住んでいた高齢者が移動するケースが増えています。転居先は区内であることが多いとはいえコミュニティが変わるため、それまで毎日のように顔を合わせていた住民同士がバラバラになることで人付き合いが減りがちになることもあり、その結果、人と話す機会が減って部屋にこもりがちになり、認知症が進んでも周囲が気づきにくい…となっているケースも少なくありません。こうしたケースをいかにして防ぐか課題であると感じています。

その課題を解消していくためにも、区内三師会、18町会、区役所、各地域包括支援センターなどに認知症サポートブックを配布しました。認知症当事者だけではなくその関係者が気づいて初期のうちに連絡をもらうことができるよう、地域への啓発とネットワーク作りに力を入れています。

活動をする中で、特に印象に残っているエピソードは?

初期集中支援に取り組むチーム員支援は、最長6か月間の間に、医療機関への受診勧奨や状態に合わせたサービス利用勧奨、生活状況の改善等を目的に支援を行いますが、チーム員支援終了後も困ったときは気軽に相談してもらいたいので、電話を受けた際や訪問時は聞き取りやすいようゆっくり話す、自発的に話しやすい雰囲気を作る、ということを日頃から心がけています。

これまでの活動で医療・介護サービスにお繋ぎすることができた方の中に、奥様と2人で暮らしている認知症の方がいるのですが、ご自宅で一緒に過ごされている時に姿が見えなくなりオレンジチームに連絡をいただく、ということがありました。その後無事見つかりホッとしましたし、担当ケアマネージャーを中心に生活のサポート体制が整っている中、我々を頼ってくれたことをとても嬉しく感じました。

淀川区のこれからについてお聞かせください

年に4回ほど、ドクターや作業療法士の方など各種専門家を招いて「オレンジ教室」を開催しています。

コロナ禍以降は人が集まる機会が減り、認知症カフェや居場所作りがなかなかできない状況ではありますが、ネット環境を必要とするイベントは高齢者の方には難しいですよね。なので毎回人数制限をしながら対面での教室を実施していますが、毎回すぐに定員になるほど楽しみにしてくださっている方がいるのでやりがいがあります。

教室では参加者・ボランティアの方が一緒になって簡単にできる体操を参加者全員で楽しんだり、カードゲームを交えつつ人生をどのように結んでいきたいかグループセッションをするなどさまざまなプログラムにチャレンジしていますが、今年3月に北大阪病院の脳外科専門医で認知症サポート医でもあるドクターに講話していただいた際はとても反応が良かったので、今後もバージョンアップしながら続け、地域で活動している方と共に認知症への理解を深めていきたいですね。

最後に、おれんじねっとを通じて一言お願いします

20~30年前のことを考えると認知症に対する世間の反応は劇的に向上しましたが、まだまだ壁は高いと感じています。理想は、何か変だな、と感じたら家族や周囲に気軽に話せて、周りもそれをフラットに受け入れられるようになること。そうすれば、今よりもっと初期のうちに気づくことができ、ご本人やご家族の負担も減るのではないでしょうか。
例えば、認知症の予防にもっと力を入れられるように行政や医療機関でチェックシートによる初期認知症のスクリーニングを行ったり、定期健診に来なければ訪問できる、といったような制度があれば…と思うこともありますが、個人情報の問題や抵抗感などのハードルがあり、やや非現実的ですよね。
せめて、認知症に対して偏見を持たないバリアフリーな地域づくり、認知症と共生できる温かな地域づくりのために、1人ひとりの認識を改めていけるような活動を続けていきたいと思います。

淀川区オレンジチーム(淀川区東部地域包括支援センター)

住所:大阪市淀川区西宮原1-6-45(ミード宮原センター内)
電話:06-6391-3770
開設時間:9時〜17時
休業日:日・祝・年末年始

執筆:松下 陽子

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