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地域とともに一人ひとりに向き合う「生野区オレンジチーム」のご紹介

2022年9月6日

おれんじねっとでは、大阪市各区「オレンジチーム」の活動などをシリーズでご紹介しています。
今回は、生野区おかちやまオレンジチームの松本 佳代(まつもと かよ)さん、瓜生 悦郎(うりゅう えつろう)さん、前川 初芝(まえかわ はつえ)さん、井上 寿美江(いのうえ すみえ)さん、地域包括支援センターの木島 みどり(きじま みどり)さん、髙橋 美津惠(たかはし みつえ)さんにお話をお聞きしました。

生野区のオレンジチームについてお聞かせください

勝山通りを挟んで生野区役所のほぼ向かいの生野区地域包括支援センター内にある「おかちやまオレンジチーム」では、社会福祉士1名、看護師1名、介護福祉士2名のチームメンバーをメインに、一部を地域包括支援センターの社会福祉士が業務を兼務・総括するような形で日々活動を行っています。

今のメンバーになったのは2022年5月1日からで、これまで7年間の活動の中で最も“強い布陣”と自負しています。
その理由は、まず1つは幅広い知識を持つ社会福祉士が加入したことで、困難事例の対応に迅速に動けるようになったこと。もう1つは、新メンバーとして加わった介護福祉士が2人とも非常に高いコミュニケーション力の持ち主で、支援に対し不安感や難色を示される方とも難なくお話しすることができ、心の扉をスムーズに開けてくれるという事例をすでに何度も経験し、心強く感じていることです。
相談件数は令和3年度で210件あり、そのうち77件を支援につなげることができました。我々は相談の電話はSOSだと思っているので、連絡が入るとまず訪問、という形にしています。

ここ1~2年はコロナ禍の影響で「なかなか実家に帰れない、電話をしてもいつも同じ話を繰り返して心配だ」という若い世代の別居家族からの相談も増えました。
そうした状況を踏まえ、昨秋から医師会のご協力で区内の医療機関にオレンジチームの連絡先を記載したポケットティッシュを置いてもらう広報活動も始めました。
チラシと違ってティッシュなら持ち帰ってもらえる確率が高いですし、何気なく目にすることで、認知症に関する相談機関があるということを頭の片隅に置いておいてもらえるのでは、と期待しています。実際、わずかではありますがティッシュをご覧になっての相談と思われる事例もすでにあったので、今後も続けていきたいと思っています。

生野区の特徴についてお聞かせください

生野区は大阪市内でも特に高齢化率が高く、高齢者の独居率も高い状況にあります。区画整理などで街並みはどんどん変わっています。戦前からの住宅も多く、昔から住んでいる方も多い、なじみのある土地から離れがたいという高齢者が多いのが特徴です。

また、外国籍住民の方が市内で一番多い区で、その方々が高齢となり認知症等で必要な更新手続が行えず、意図せず在留資格が切れてオーバーステイ(非正規滞在者)として扱われてしまうこともあり生野区全体の課題となっています。
こうした課題を抱えながら、オレンジチームと地域支援包括センターが連携しながら活動しているという点が、他の区とは異なる特色だと思います。

生野区内でも、ファミリー層が多い北巽地域、独居マンションの多い今里地域、昔ながらの長屋が多い勝山地域…と、地域性に違いがあります。
また、有料老人ホームや特別養護老人ホーム、高齢者向け住宅が非常に多く、24区内でも随一です。

活動でのエピソードなどをお聞かせください

訪問先には「自分は大丈夫」と頑張って生活されている方も多いので、「助けに来ました」と伝えるのではなく、友人を訪ねるような感じで世間話から入り、少しずつその人の興味があることは何か、どんな性格なのか、想像力を働かせながら話しかけるようにしています。
初回は扉を開けていただけないケースもありますが、訪問のペースや時間帯、チーム内の誰が声をかけるかなどを細かくディスカッションしながらアプローチを重ねて行くと、初めは扉を閉めたままのコミュニケーションだったのが徐々に開いてゆき、ついに「あんた、もう入り」と言ってていただけると、運命の赤い糸ではありませんが「糸が繋がった!」と実感できて本当に嬉しいです。
オレンジチームのやりがいというのは、そこにあるのかなと思います。
生野区の高齢者は長く住んでいる方が多いだけに、ご近所同士の助け合いや地縁のつながりがしっかり残っています。それゆえ町会の役員さんや民生委員さん、ご近所さんなど周囲の方が力を貸してくれることも多く、本当にありがたいですね。

また、毎月第4木曜日は認知症カフェ「おかちやまなごみカフェ」を開催しており、7月はグループトークやうちわ作りを楽しんでいただきました。奇数月第2水曜日には若年性認知症の方の集いの場「おしゃべりサロン」を開催しています。
毎回、参加者1人ひとりの状況に寄り添いながら企画・実施しているので、介護サービスに繋がりにくい方でも笑顔になっていただけることが多く、やりがいがありますね。
コロナ禍での実施についてはいろいろ検討しましたが、月に一度の楽しみとして期待して下さる方もいらっしゃるので、感染予防対策を徹底し、状況に応じて柔軟に対応しながら続けています。

生野区のこれからについてお聞かせください

生野区は本当に地域力が高く、住民の方や地域役員の方も意識が高い方が非常に多いんです。だからこそオレンジチームには地域の方々ができること以外を求められていると思うので、高い専門性を持って地域と繋がること、いつでも気軽に相談していただけるような関係づくりを意識しています。今年から認知症の方の居場所づくりや交流の場として農園での野菜栽培を始めました。認知症の方とチームのメンバーが一緒になって野菜を育てているのですが、すごくいい効果が出ているんです。先日も、認知症の方が水やりのために農園を訪れ、そのことを農園ボランティアの方が教えてくれる、ということがありました。私たちがいないところでも、認知症の方と農園ボランティアの方の間に新たな交流の場が生まれているんです。

また、生野区発祥の「スリーアイズ」というスポーツにもチャレンジし始めたところです。まずは体験してみて、「楽しかったら大会にも出てみよう」という話になっていて、このままうまく盛り上がったらオリジナルTシャツを作ろう、という楽しい企画も出始めています。
このように、こちら側だけで考えて作業を押し付けるのではなく、利用者の方々がしたいことを自分たちで考え、それをすくい上げて実施していく。その流れの中で、地域の人やボランティアの方にわざわざ見守りをお願いするのではなく、日常の中で認知症当事者が地域の人と交流できる、地域と繋げていく―。
そんな橋渡しがもっとできるようになればいいなと思いながら日々活動しています。

おれんじねっとを通じて一言

認知症を特別なことと捉えず、高齢になったらどなたでもかかり得る病気ということを皆さんにお伝えするのがオレンジチームの役目。ご心配なことがあれば遠慮なくオレンジチームに相談してください。

また、大阪市には24区すべてにオレンジチームがあり、その一同が集まる会議に参加して感じるのは、オレンジチームのスタッフはどこの区も熱い人が多いということです。おれんじねっとを通じて、市民の方にもこの“熱さ”が伝わると嬉しいですね。

おかちやまオレンジチーム(生野区地域包括支援センター内)

住所:〒544-0033  大阪市生野区勝山北3-13-20
電話:06-6712-3113
開設時間:9時〜17時
休業日:日・祝・年末年始

執筆:松下 陽子

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