認知症を理解し、共に暮らすための情報サイト

その人が望む生き方を大切にする「鶴見区オレンジチーム」のご紹介

2022年4月26日

おれんじねっとでは、大阪市各区「オレンジチーム」の活動や特徴などをシリーズでご紹介しています。今回は鶴見区オレンジチームの佐藤 由紀恵(さとう ゆきえ)さん、地域包括支援センターの殿井 祐一(とのい ゆういち)さん、前田 絵美(まえだ えみ)さんにお話をお聞きしました。

鶴見区のオレンジチームについてお聞かせください

私たちは、鶴見区のキャラクター「つるりっぷ」の名前を頭につけて「つるりっぷオレンジチーム」として活動しています。

メンバーは常勤の介護福祉士とチーム員の医師ですが、同じフロアで地域包括支援センターの職員やケアマネジャー、生活支援コーディネーター、社会福祉協議会の地域支援担当者などと机を並べているので、活動にはたくさんのスタッフが関わっています。

日々、状況を伝えて共有し、それぞれの得意分野を生かして支援方法について話し合っています。この多分野の人材が密接に関わって支援に向き合えるのは鶴見区の大きな特徴だと思います。

また、つるりっぷオレンジチームのチーム員医師は神経内科が専門で、認知症診断を出していただいたり、LINEや電話、メールなどで頻繁に連絡が取れ、タイムリーに相談ができるので心強いです。

鶴見区の特徴についてお聞かせください

鶴見区は12の小学校区があり、エリアによって高齢者の比率に差があります。最も東側の校区では高齢化が進み、高齢者は3人に1人の割合です。また、市営住宅が多い地域では、高齢の一人暮らしや夫婦のみの世帯が多く、私たちのような支援組織への相談につながりにくい状況にあります(2021年度)。

その一方で、10年前に新たに小学校が創設されるほど若い世代が増えている校区もあります。

地域ごとには町内会や地域活動協議会があり、多くの住民の方が加入していて、その存在はとても大きく、訪問の際にサポートいただいたり、住民の方にオレンジチームの存在を伝えてもらえたり、さまざまなご協力をいただいています。

他に、守口市と門真市、大東市、東大阪市の4つの市と隣接する土地柄から、郵便局から相談を受けて訪問すると、対象の方が東大阪市の方だったことがあり、現地のオレンジチームにつないだことがありました。

また、鶴見区の方も利用されるので、守口市や大東市の病院とも連携を取り合っています。市が異なると対応の仕方が変わる部分があるので、都度調べて引き継ぐようにしています。

活動でのエピソードなどをお聞かせください

私たちはフットワークの軽さを大切にしています。相談を受けたら1週間以内の訪問を心がけています。大半はご家族からの相談ですが、近年は郵便局や金融機関からの連絡も増えてきました。

「窓口で会話が成り立たない」「何度も通帳をなくしている」「暗証番号がわからない、印鑑がないと言う」といった状況を知らせてくれます。

ご近所の方から連絡が入り、訪問する際は対象の方にとっては突然の訪問になるので、いきなり本題から話すのではなく、まずは知り合いになり信頼関係を築くところから始めます。

そうした働きかけをした中には生活の困りごとを一緒に考え、動いたことで、拒否していた病院での診察を受け入れてくれたケースがありました。

また、コロナ禍ならではの出来事もありました。日頃、在宅時間が少ない息子さんが在宅勤務になった時に父親の異変に気づき、相談を受けたその日に訪問したところ、別の病気ですでに介護認定を受けていることがわかりました。オレンジチームからすぐにケアマネジャーに依頼した結果、病院を受診してから2週間という短い期間でデイサービスにつなぐことができました。その後、最初は無気力な印象だった方がニコニコして冗談も言うようになられたのを見たときは、嬉しかったですね。

オレンジチームの存在を周知することも大切な活動の一つです。悩みを抱えているご家族の目に留まるように、作成したチラシを区役所やショッピング施設、大阪メトロの駅などに置いています。

鶴見区のこれからについてお聞かせください

校区によっては相談件数がまだ少ないところもあるので、意識的に声かけや周知を行っていきたいと思っています。単に困っている方が少ないのならいいのですが、本当は支援を必要としているのに私たちの手が届いておらず、相談につながっていない、といったことがないようにしたいです。

鶴見区は地域包括支援センターが3箇所あり、当センターは認知症強化型でオレンジチームが所属しており、12校区のうち5区を担当しています。そこは情報が届きやすいのですが、西部と南部のセンターとの連携をもっと深めて、1人でも多くの方を支援できる環境を整えたいと思います。

おれんじねっとを通じて一言

私たちは、初期の認知症の方々を介護保険サービスなどにつなぐ役目がありますが、それだけではなくご本人が《どう生活していきたいか》を大切にしています。住み慣れた地域で安心して暮らせるよう地域住民のボランティアによる「ふれあい喫茶」や大阪市が推奨する百歳体操の教室などへの参加を提案し、地域住民とのつながりづくりをする場合もあります。

より選択肢が広がるように、さまざまな機関と連携を取り合い、ネットワークを強化していくことも課題の一つです。

関わった方々が、支援の後に笑顔で過ごしている姿に出会うことは、私たちのモチベーションにもなります。認知症になっても一人でも多くの方が笑顔で暮らし続けられることを目指して、これからも活動を続けていきます。

鶴見区オレンジチーム(大阪市鶴見区社会福祉協議会 鶴見区地域包括支援センター内)


住所:〒538-0051 大阪市鶴見区諸口5丁目浜6-12
電話:06-6913-9595
開設時間:9時〜17時
休業日:日・祝日・年末年始

執筆:おれんじねっと記者 古舘知子

ライター歴、約20年。10年以上にわたり美容と健康にまつわる記事づくりに携わり、雑誌や製品パンフレット、広告、新聞、WEBなどの制作を手がける。今ほど認知症についての情報が知られていなかった頃、認知症の家族がいた経験をきっかけに、おれんじねっとの取材チームの一員に。

▼百歳体操とは
https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000425655.html

▼ふれあい喫茶について
http://www.tsurumi-kushakyo.or.jp/fureaikissa

 

認知症の基礎知識

04
認知症の予防・備え
認知症の予防法や事前に備えておきたいことなどの情報をまとめています。
02
認知症かな?と思ったら
ご自身や家族が認知症かもしれないと思ったときに見ておきたい情報をまとめています。
03
認知症だと分かったら?
介護保険や認知症の方への接し方などの情報をまとめています。