幅広い連携の力で支援する「西区オレンジチーム」のご紹介
おれんじねっとでは、大阪市各区「オレンジチーム」の活動や特徴などをシリーズで紹介しています。
今回は西区オレンジチームの藤本 治美(ふじもと はるみ)さん、古山 江利(ふるやま えり)さん、赤木 久枝(あかぎ ひさえ)さん、地域包括支援センターの吉田 美幸(よしだ みゆき)さん、在宅医療・介護連携 相談支援室コーディネーターの砂川 桂子(すなかわ けいこ)さんにお話をお聞きしました。
西区のオレンジチームについてお聞かせください
西区役所内に地域のさまざまな相談事が届く地域包括支援センターが1カ所あり、オレンジチームはそこに所属しています。
訪問看護師経験や理学療法士資格、老人保健施設や通所リハビリテーション勤務など豊富な経験を持つ医療・福祉職のチーム員3名、そして精神科のチーム員医師が、年間約40件の支援に取り組んでいます。
私たちが支援として関わる期間 は約6カ月が目途と位置付けられているため、支援や医療機関の受診を強く拒否される場合など、状況によっては兼任する認知症地域支援推進員としてまず関わりをもつところから始め、オレンジチームとしての支援をスタートするタイミングを見極める場合もあります。その際には、地域の支援者や地域包括支援センターのスタッフの協力が欠かせません。
最近では、コロナ禍で久々に親と会われたという遠方にお住まいのご家族が、親の今までの様子との違いなどから心配されて、私たちオレンジチームのことをインターネットで調べて連絡いただく、というようなケースもありました。
西区の特徴についてお聞かせください
大阪市の中でも転入率が高く、人口は年々増えていますが、高齢者の割合は他区と比べてかなり低い状況にあります。西区は14地域それぞれに会館があり、見守りコーディネーターの方がいます。そちらによく足を運び、連携をはかることで区全体に目が届きやすい環境をつくるようにしています。
新しいマンションが続々と建ち若い方の転入が増えていますが、西区は盆踊りなど昔ながらの地域活動が盛んで、町内会の会長や活動者の方々との交流を深めているので、何かあれば連絡をいただけるような親密な関係性も築くことができています。
ただ、若い方の割合や地価が高いこともあり、高齢者向けの施設は少ない状況です。その一方で病院や診療所は100以上あり、医療機関が充実しているので、かかりつけ医がいない方のケースでも、その方に合った受診先を見つけやすいのではないかと思います。
また、西区の在宅医療・介護連携 相談支援室コーディネーターは、以前病院の地域連携室に勤めていたご経験があり、現在は(一社)大阪市西区医師会の事務長を務めていらっしゃるため、区内の医療機関や関係者とのつながりが深く、支援対象の方を受診へとつなげる強力なサポーターとして非常に頼もしい存在です。
他に、「西区徘徊高リスク高齢者支援システム」という、認知症の方やご家族を支援する西区独自の仕組みがあります。
通常は徘徊して行方不明になった際は、警察へ届出をしないと探してもらえません。このシステムは、徘徊の可能性がある方の特徴や顔写真、緊急連絡先を事前に警察へ登録しておくことで、区内の交番に保護された場合など、ご本人が名前や住所を言えなくても、登録情報からその方を特定し、すぐに緊急連絡先へ知らせてくれます。私たちも、区内の交番などへは頻繁に足を運び、連携を深めるようにしています。
活動でのエピソードなどをお聞かせください
支援対象の方は一人ひとり状況も個性も違うので、私たちが「このサービスが良いのでは」と考え、施設と対象者をつなげようとしても、結局通わなくなる場合もありえます。そのため、何にお困りなのか、ご本人からお話しいただけるような関係性づくりを心がけています。
例えば、訪問時まず玄関先での何気ない会話からヒントを探すようにしています。そうした世間話から始めて、打ち解けやすいような雰囲気づくりを大切にし、掃除に困っている場合はヘルパーさんに、薬を飲むのを間違えて困っているなら訪問看護につなげるなど、その方の本当に必要なことに寄り添えるようにしています。
また、看護師や理学療法士といった医療関係者がチーム員なので、体の不調についてもお聞きしやすく、その方を知る糸口になっています。
病院の受診をお声がけする場合、診療科名(精神科)など言葉に敏感になられ拒否されてしまうことがあります。西区では、日本生命病院に「脳機能センター」があるので、「年齢的に一度受けてみませんか」と提案しやすく、「それなら行ってみようか」と言ってくださる方も多いので、受診のきっかけが作りやすいです。
大きい病院にかかる際などは、かかりつけ医の紹介状が必要となりますが、西区医師会による連携シートで事前にかかりつけ医へ支援対象の方の状況をお伝えしていることで、医師にもきちんと情報が伝わり、支援対象の方が気分を害することがないようスムーズに受診いただくことができます。こうした、仕組みづくりや支援対象の方への配慮を大切にしています。
私たちが担当するケースには、支援を拒否されることもありますが、何度も何度も通ってようやくデイサービス利用につながり、数ヶ月過ぎた頃には別人のようにハリや元気を取り戻されていく様子を見られる場合もあります。このように、支援対象の方々の生活が整っていく、体調良く楽しく生活されている様子を見ることができると、この仕事をやっていてよかったなと実感します。
西区のこれからについてお聞かせください
西区では一般の方向けに、区内の関係団体が共催して年1回の認知症講演会を開催しており、専門の先生による認知症についてのわかりやすい解説があります。講演会の後は地域包括支援センターや医師等多職種による相談ブースが置かれ、色々なご相談にのる場がありました。コロナウィルス感染拡大のため中止となっていましたが、令和4年3月には人数を制限して、2年ぶりに開催できました。講演会のみの開催だったので、コロナ前のように相談コーナーも再開できることを願っています。
他にも、地域包括支援センターが毎月発行する高齢者向けの広報紙「包括レンジャー」には「オレンジ情報」として私たちからのメッセージを掲載しています。多くの方の目に留まるように交番や診療所、銀行など約200カ所で配布しており、中には「スーパーで見ました」と相談に来られる方もいらっしゃいます。
私たちは、認知症の方を公的なサービスだけにつなげるのではなく、その方が元々大切にしてこられた人付き合いや趣味などを尊重し、その方らしい生活が送れることを目指しています。そのためにも、町の喫茶店やボランティア活動といった一般の方が参加するさまざまな場で、受け入れてもらえるような体制ができれば、と思っています。こういう場があることで地域の方の見守る目も増えるので、早期発見にもつながるのではないかとも考えています。
また、核家族が多くおじいちゃんやおばあちゃんがどういう存在かを知らない子どもたちが増えている今、子どもと高齢者が交流できる機会も作っていきたいと思っています。
おれんじねっとを通じて一言
認知症の方はもちろん、そのご家族へのサポートにも力を入れています。10年前から、年4回「認知症家族の集い」を開催しています。介護の大変さ、状態がどう変化していくのかなどの悩みを打ち明けて、少しでもご家族の心が和らぐ支えになればと思っています。
医師や福祉関連事業者、薬剤師などの協力も得て、具体的な介助のアドバイスを受けることもできます。コロナ禍で中止にしたこともありましたが、「こんな時こそ開催してほしい」との声があり、感染予防対策をとって実施しています。
その他に、オレンジチームと地域包括支援センター、在宅医療・介護連携相談室、生活支援コーディネーターの4事業が協力し、高齢者が元気に暮らすための啓蒙チラシを作るなど、西区では多くの事業や機関が広くつながり、さまざまな視点から高齢者と認知症の方のことを考えています。今後も、よりよい支援につながるように連携を深めていきます。
西区オレンジチーム(大阪市西区社会福祉協議会 西区地域包括支援センター内)
住所:〒550-0013 大阪市西区新町4-5-14 西区役所合同庁舎6階
電話:06-6539-8248
開設時間:9時〜17時
休業日:日・祝・年末年始
執筆:古舘知子