認知症患者の排泄問題と対応とは?
高齢化だけでなく認知症の症状が進むにつれ、多くの人に排泄の問題が生じてきます。
排泄問題は様々あり、身の回りの世話をする家族にとっても負担の大きい問題です。
今回は、認知症患者に見られやすい排泄問題とその対応について解説します。
認知症の症状との関連を知り、冷静な対応の参考にしてみてください。
認知症症状と排泄の関係
排泄の問題は、そもそも高齢化が進むとADL(生活の質)が低下するため避けては通れないものです。
実は、認知症の症状の進行と排泄問題にも大きな関係があります。
認知機能や見当識の低下、運動能力の失行により、高齢者に見られやすい頻尿や失禁だけでなく違った症状も見られます。
それぞれ、認知症の症状が背景にある症状であることを踏まえて確認してみましょう。
便秘
便秘は、便の排出が困難になっている状態を指し、認知症の場合は大きく2つのパターンが挙げられます。
1つは、自分の身体の変化を知覚する能力が低下することで、体内に便が溜まっているにも関わらず便意がなくなったと感じるパターンです。
もう1つは見当識の低下で、便意はあるもののトイレの場所が分からずに我慢してしまうパターンがあります。
便秘が続くと腹痛や不快感からイライラなど気分の悪化が見られやすいため、様子の観察が必要です。
便失禁
失禁はいわゆる「おもらし」を指し、認知症の場合は見当識の低下でトイレを探しているうちに間に合わないことや、運動機能の低下でズボンの脱衣にてまどうことで生じやすいです。
便失禁は本人のプライドが傷つきやすく、トイレの失敗を隠すために汚れた下着を隠してしまうこともあります。
放便
放便は、トイレの場所が分からずに違う場所で尿や便を排出してしまう状態を指します。
放便も見当識の低下によるトイレを探せない要因や、認知が歪むことで別の部屋をトイレと勘違いしてしまったり、排泄の仕方が分からなくなったりする要因で生じることが多いです。
弄便
弄便は、大便などの排泄物を触ったり、あちこちにこすりつけてしまったりする行為を指し、弄便の多発は家族や介護者の精神的負担にもなりやすいと言えます。
原因としては、排泄を早く終わらせたいために肛門を触って付着してしまう場合や、認知の低下や歪みのために便と他の物を誤認してしまう場合があります。
弄便が見られると、家族も思わず怒ってしまうことが多いですが、認知症患者は認知機能の低下でこのような行為をしてしまうことを知り、なんとか落ち着いて話を聞いてみましょう。
排泄問題への対処
認知症の排泄問題は症状の進行により生じるものであって、決して家族への嫌がらせではありません。
まずは認知機能や見当識の低下が原因にあることを知ることが大切です。
基本的には排泄行為に対して怒らないように注意しましょう。
トイレに関する指摘を好まない人も多いため、以下のような工夫が好ましいと言えます。
- 「トイレ」など大きな文字で張り紙をしてトイレを分かりやすくする
- 夜間でもトイレだけ電気をつけて分かりやすくする
- 食後や外出前などトイレのタイミングをつくる
- 失禁や放便、弄便などが見られた場合はすぐに片づけ、「気持ち悪かったですね」「すっきりしましたね」などの声かけで恥ずかしさを軽減する
など
その他、着脱しやすい服を選んであげるなどの対処がありますが、排泄問題には疲弊する家族も多いため、冷静に対処できない場合は医療機関に相談してみましょう。
まとめ
排泄は日常生活に欠かせない行為であり、排泄の失敗は本人にも家族にとっても深刻な問題です。
認知症患者は記憶や認知の低下が見られますが、恥ずかしさなどの感情はしっかり残っています。
排泄の指摘は人にとって自尊心に関わる重要な問題なので、相手を思いやる気持ちを忘れずに対応しましょう。
また、面倒を見る家族の精神的負担も大きいため、1人で対処しようとせずに医療や福祉機関も頼ってみてください。