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はつらつ脳活性化教室~大阪市北区、地域に根づいた交流と運動の場

2021年2月4日

「認知症予防の輪を広げよう!」を合言葉に、「はつらつ脳活性化教室」が大阪市北区で開かれています。「体を整える」「頭を使う」「心を動かす」という三つの要素を取り入れて、高齢者のみなさんが楽しみながら認知症予防に取り組む交流の場となっています。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言が続く間、はつらつ脳活性化教室も中断しています。コロナ禍が落ち着いた段階で教室を再開できるように、担当している保健師やサポーターのみなさんは準備を重ねています。
はつらつ脳活性化教室は介護費用、運動機能、心理面のそれぞれに効果が期待されています。
教室には、「いきいき百歳体操」と「脳活性化レクリエーション」があります。
いきいき百歳体操は、手首と足首におもりを巻き付けて椅子に座っったまま、DVDを見ながら体を動かす筋力運動です。1回30分かけて筋力アップを目指す体操になっています。

脳活性化レクリエーションには、以下のようなプログラムがあります。
◇まちがい探し
◇思い出パズル
◇思い出の歌
◇チャップリン・スピーチ
チャップリン・スピーチとは、めくったカードに記されたお題について話す取り組みです。いずれの活動も、記憶を活性化して頭を使い、心も動かし、認知症予防につなげます。地域住民が集って、コミュニケーションを深める交流の場としても定着し、参加者から「友達の顔を見に来るのが楽しい」「会話できるのでうれしい」と好評を得ています。
5人程度から50人程度まで大小の規模の教室が地域ごとに開かれています。はつらつ脳活性化教室サポーターの養成講座を終えた市民のみなさんがサポーターとなって教室を支えます。「楽しく勉強になります」「私たちも刺激を受けます」。参加者とサポーターが一緒になって楽しむ交流の場となり、教室が長く続く秘訣になっているようです。

はつらつ脳活性化教室の成果や今後の課題について、大阪市北区健康課の担当係長、神尾直佳(かみお・なおか)さんに聞きました。

はつらつ脳活性化教室はどのように定着してきましたか。

地域に密着した形で健康維持と認知症予防の取り組みとしてこの教室は定着しています。地域ごとの会館や老人福祉センターのほか、マンション住民を対象にマンションの集会所で開かれている教室もあり、地域ごとに展開されるコミュニティーの活動となっています。サポーターのみなさんの尽力や口コミでも教室の輪が少しずつ広がっています。

教室にはどんな課題がありますか。

レクリエーションのひとつ「思い出の歌」は、懐かしい歌を歌って歌にまつわる思い出を語り合う趣向です。歌を歌うことが好きな人は多いのですが、新型コロナウイルスの感染予防のために今は、歌を歌う活動は控えています。マスクを装着しての体操も無理はできません。コロナ禍の中、体調面の配慮も欠かせませんので、サポーターのみなさんにとっても難しい1年だったといえます。コロナ禍で活動が制限される中、自宅でもできる簡単な体操を紹介したお手紙を戸別にポスティングして配るなど地道な啓発活動も続けています。

今後、どのようなことに取り組む予定ですか。

「自分が今、住んでいる地域で、はつらつ脳活性化教室を開きたい」という要望にはできる限り応えられることを目指しています。はつらつ脳活性化教室は2011年に始まり、今年で10年の節目を迎えます。コロナ禍が収まれば、10周年の記念シンポジウムを開きたいと準備しています。コロナウイルスの感染防止にかかわる健康相談も多く、市民のみなさんの不安を取り除けるように対応しています。

はつらつ脳活性化教室を支える大阪市北区健康課の保健師のみなさんにお話を聞きました。

保健師の西田彩夏(にしだ・あやか)さんは「サポーターさんのやる気に感化されています」と話していました。

はつらつ脳活性化教室は、コミュニケーションの場です。新型コロナウイルスの感染防止のために制約が多い中、どうしたら密接にならずにコミュニケーションを取れるのか、サポーターさんがアイデアを出してくれます。普段は2列並べる長机を3列並べて人と人の間隔を広げたり、グループを6人から4人に減らしたり。3密を避ける方法を話し合って、「それ、いいアイデアですね」「じゃあ、こうしましょう」と場の雰囲気を盛り上げてもらっています。

保健師の山脇里奈(やまわき・りな)さんは、「前向きなサポーターさんのやる気と元気に支えられています」と語っています。

サポーターさんが脳トレの情報を仕入れてきて、「残りの時間、この脳トレをやりましょう」と提案してくださいます。「ここに来たら私も元気になるから」と参加しているサポーターさんの知恵で教室の楽しいムードが保たれています。
マンションの集会所で開かれているはつらつ脳活性化教室もあります。マンション内で知り合いの輪が広がるので防災意識の向上などコミュニティーづくりにもつながり、認知症予防にとどまらない相乗効果が生まれ、私たちも刺激を受けています。

執筆:おれんじねっと記者  中尾卓司

1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。
1990年4月、毎日新聞入社。大阪社会部、外信部、ウィーン支局、社会部編集委員を経て、2020年3月、毎日新聞を早期退職。記者一筋に30年の経験を生かして、おれんじねっとの取材チームに加わり、記者活動を展開中。「つなぐ、つながる、つなげる」を掲げて新しい情報発信のかたちを提案している。
大阪大学箕面キャンパス「現代ジャーナリズム論」非常勤講師
関西大学社会学部「ジャーナリズム論」「時事問題研究2」非常勤講師

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