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すこやかデイサービスセンター ~認知症の当事者と人と人のつきあいを大切に~

2020年9月17日

医療法人仁悠会のすこやかデイサービスセンターは、認知症を専門とする通所施設です。大阪市と堺市内にすこやかデイサービスセンターのアン、ドゥ、トロワ、タマダの4施設があり、その4施設の統括部長、森口洋一(もりぐち・よういち)さんは、大阪市認知症介護指導者としても活躍しています。利用者との接し方について、森口さんにお聞きしました。

森口さんの活動をお話しください。

認知症の当事者の方の介護に当たりながら、地域に向けた啓発の活動や専門職に向けた指導者の役割も担っています。認知症ケアのニーズは高まっており、実践者やリーダー向けの研修や認知症サポーター養成講座の講師も担当しています。
認知症の当事者を抱える家族が周囲から孤立すると、疲弊してしまいます。
相談できる相手がいない中、ご家族が「しんどいねん」と打ち明けられるような人と人との関係を大切にしたいのです。

施設の役割について、教えてください。

すこやかデイサービスセンターは平成22年にオープンしました。
認知症に特化した定員12人の地域密着型のデイサービスです。
認知症に特化したデイサービスはまだ多くありません。認知症予防の早期の段階で、利用者さんに来ていただけると認知症の進行は抑えられます。
認知症は病気だけれども、機能をすべて失ってしまうわけではありません。
残された能力にどれだけ、寄り添えるかが大切です。今できていることを引き続き維持すること、そして、ご本人がやりたいと思える選択肢を多く準備することを重視しています。
私たちの理念は「行動には、理由がある」。人の行動には、理由があり、根拠があります。その行動に行き着く理由を探ることが大切です。
ご本人の生活史や暮らしの環境、健康状態など、細かい項目を聞き取るアセスメントシートもあります。
私たちは、出会った以降のことしか知りません。ご家族から、過去にさかのぼってお話を聞き出します。過去のいい思い出を知り、そのいい思い出に近づけることを目指します。ご本人の過去の歴史を知り、今をともに過ごして、一緒になって未来に向けて歩んでいくイメージです。

どんなことを重視されていますか。

利用者さんと向き合って、相手との信頼関係を大切にします。
外出することもよくあります。釣りに一緒に出かけたり、動物園に出かけたり、買い物に行ったり。一緒に行動して、心理的な垣根を取り除くことを目指しています。
相手を知るために、共通点は何かを探します。ある程度、仲良くなると、嫌な面も見えてきます。そして、その段階を乗り越えると、大の仲良しになれます。長年付き合っていると、思い出も生まれます。「あいつと行ったあそこがよかった」、「あいつがおってくれな、あかんわ」と思われるようになりたい。利用者さんに名前を呼んでもらえる関係を大事にしたい。利用者さんと、共有できる小さな物語を一緒に作るように心掛けています。

どんなエピソードがありますか。

認知症デイを始める以前から、長く付き合っている利用者さんもいます。お互いを知るために、こちらも、家族のことも含めて何でも話します。認知症だった母親のことも知っていて「お母さんに、親孝行しているか」と声を掛けられる関係になります。
認知症だから、といっても、記憶すべてがなくなるわけではありません。印象的だったことは、覚えているものです。
風呂を拒絶していた利用者さんが「風呂入るわ」と話す瞬間があります。「風呂に入れよう」と無理強いすると、通じない。けれども、職員が利用者さんのために悩んでいる姿を見て、利用者さんが響いてくれることもあります。

おれんじねっとを通じて、伝えたいことをお願いします。

認知症のデイサービスを地域に広めたい。これまで、積み重ねてきた事例や取り組みを地域に向けて発信したい。以前に比べたら、認知症に対する理解はかなり進んでいます。認知症の人が地域で暮らす姿が当たり前の社会にしたいと願っています。

現場で介護を担当する次長の山下有紀子(やました・ゆきこ)さんに、最初の日の対応で態度が一変した利用者のケースについて聞きました。


「何しに来たんや」「しゃべりたくない」「外に出たくない」と抵抗した利用者さんに人間として向き合いました。「ええ加減にしときや」とけんかのようになって、「それで生きていると言えるんか」と本音でぶつかりました。その利用者さんは2日目には、スーツを着て外で迎えの車を待っておられました。その方は後で「あんたには負けた」と話していました。
素の感覚でお年寄りに接しています。私はもともと、おじいちゃん子でした。相手に興味を持つこと、相手を知る気持ちを大切にしています。

施設紹介


医療法人仁悠会 すこやかデイサービスセンター トロワ
認知症対応型通所介護
所在地:大阪市平野区平野南1-8-32
電話:06-6703-1266
定員:12人

執筆:おれんじねっと記者  中尾卓司

1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。
1990年4月、毎日新聞入社。大阪社会部、外信部、ウィーン支局、社会部編集委員を経て、2020年3月、毎日新聞を早期退職。記者一筋に30年の経験を生かして、おれんじねっとの取材チームに加わり、記者活動を展開中。「つなぐ、つながる、つなげる」を掲げて新しい情報発信のかたちを提案している。
大阪大学箕面キャンパス「現代ジャーナリズム論」非常勤講師
関西大学社会学部「ジャーナリズム論」「時事問題研究2」非常勤講師

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