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【健ラボ通信vol3】まちの「かかりつけ薬局」に 健康づくりに薬剤師ができること

2021年9月1日

認定特定非営利活動法人・健康ラボステーションの〝病気を未然に防ぐ〟健康づくり活動を支える職種の一つは薬剤師です。薬剤師の松岡桓準(まつおか・かんじゅん)さんは「気軽に相談できる存在でありたい」と話しています。

薬剤師の仕事を紹介してください。

調剤薬局の薬剤師は処方箋に基づきお薬をお渡しするだけでなく、副作用確認や服用状況の把握、医療機関へフィードバックなど様々な役割を担っています。また、最近では地域社会で患者を支える医療分野の役割の一つとして、気軽に相談できるかかりつけ薬局・薬剤師が注目されています。身近な「かかりつけ医」が大切なように、地域社会で薬のことを相談できる「かかりつけ薬局」は地域にとって価値あるものだと考えています。厚生労働省は2015年に「患者のための薬局ビジョン」を打ち出しました。たとえば高齢者が認知症に進む前に、身近な薬剤師が相談に乗って必要に応じて専門機関を紹介する「地域包括ケア」の一端を担う取り組みです。

現在、調剤薬局の店舗数は、コンビニエンスストアの店舗数よりも多いといわれています。

体の調子がすぐれないけれども、病院を受診するほどでもないときは、薬局の薬剤師に相談してください。患者さんの症状に応じて、市販薬の紹介や受診の目安などをお伝えしています。
薬剤師が患者さんのわずかな変化に気づいて、本人やご家族に伝える事で、福祉や介護、医療のサービスにつながる適切なアドバイスになるかもしれません。

健康ラボステーションにおける薬剤師の役割をお話しください。

血液の採取が必要なヘモグロビンA1c、コレステロールの測定を検体測定室で行っています。ヘモグロビンA1cは糖尿病の指標、コレステロールの善玉、悪玉のバランスは脂質異常症の指標となります。検体測定室では測定結果を見た利用者様からの要望に応じて、生活習慣のアドバイスや受診勧奨を行っています。

普段から患者さんと接していると、専門家として健康について注意喚起できます。飽食の時代には、よほど気をつけないと、生活習慣病のリスクを抱えています。大病を患うと生活に大きな制限が加わり、糖尿病になると食事制限を強いられます。家族を悲しませる結果にならないようにやってみようかな、とか。ちょっとの心掛けで生活を少し変えると、病気の発症を遅らせられるかもしれません。

管理栄養士が身近な「食」についてアドバイスする健康ラボステーションの活動は逆に、調剤薬局の現場に応用できることが多くあり、日々学ばせてもらっています。

松岡さんのプロフィールについて、話してください。

高校生のころ、医療にかかわって多様な働き方ができる仕事をしたいと薬剤師を目指しました。大学の薬学部で学び、大学院で「有機合成」を専攻しました。その後化粧品会社の研究職を経て、薬局の薬剤師になりました。

インターネット上に出回っている健康の情報は玉石混交で、あぶなかしい情報もあります。化学を学んだ薬剤師の立場として、データに基づいて根拠を示して説明することを大切にしています。

情報の出どころを確認して、情報の信ぴょう性を確かめることも有効です。国の機関など、公益性の高い機関が出している情報は、その時点で合理性のある信頼に値する情報と考えていいでしょう。

「未病予防」という表現がありますね。未病とはどんな状態ですか。

健康な人が急に病気に移るのでなく、何か予兆が現れてその状態が徐々に進行して「病気」と診断されます。健康と病気の間には、それなりの時間の経過があります。

「健康です」とは断言できないけれども、「病気です」とも指摘されない期間が「未病」の段階です。この期間はすごく長くて、予防の働きかけに意味がある時期です。

健康計測の結果が正常値からずれ始めて、予兆がデータに現れてきた人に予防を促すことは効果的です。健康に不安があるけれども、病気とはいえない「未病」のステージに適切な対応を取ることができたら、健康寿命をのばすことができると考えています。

コロナ後に、どんな変化を期待していますか。

コロナウイルス感染予防では、手洗いやうがいが励行されました。徹底した感染対策の結果、冬の時期のインフルエンザの流行が抑えられるなど意外な効果も生まれました。

三密を避けるために、オンライン活用が広がったことも今後に応用できます。

健康測定会のオンライン予約が定着したら、会場に集まる人数も計画的に分散できます。お互いに余計なストレスを抱えることなく、健康計測や健康相談に臨むことになるでしょう。

健康のために、ひとことアドバイスをお願いします。

自分の健康を客観視するための判断材料を持ってください。

定期的な健康診断や健康チェックを受けると、健康状態が数字で確認できます。ノーチェックで放っておくと、病気になって初めて自分の健康悪化を突きつけられることになります。「病気かもしれない」と自覚症状を意識した段階には、すでに慢性病の状態に進んでいることが少なくありません。

毎日、体重計で体重をチェックする、血圧計で血圧をチェックすることを習慣にするだけでも、小さな体の変調にも敏感になり、行動変容につながります。

病気になって「あのとき、ああしておいたら」と後悔することも、家族を悲しませることもなくなります。

身近に相談できる相手を見つけてください。健康ラボステーションの健康測定会も相談相手を見つけるきっかけになります。

活きいきとした自分らしい生活を長く送ってもらう為にも、健康維持に今、自分ができることを積み重ねて「健康寿命をのばす」ことに努めましょう。

◇  ◇  ◇

健康ラボステーションの活動を紹介するシリーズ「健ラボ通信」。

Vol.1:「楽しみながら病気の予防を」

Vol.2:「食」の楽しみ提案 健康づくりをアドバイス 管理栄養士

次回のテーマは「オンライン健康セミナー・オンライン栄養指導」です。

組織案内

認定特定非営利活動法人 健康ラボステーション
所 在 地:大阪市北区天満橋1-8-30  OAPタワー10階1005号
電話番号:06-6948-8015

執筆:おれんじねっと記者  中尾卓司

1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。
1990年4月、毎日新聞入社。大阪社会部、外信部、ウィーン支局、社会部編集委員を経て、2020年3月、毎日新聞を早期退職。記者一筋に30年の経験を生かして、おれんじねっとの取材チームに加わり、記者活動を展開中。「つなぐ、つながる、つなげる」を掲げて新しい情報発信のかたちを提案している。
大阪大学箕面キャンパス「現代ジャーナリズム論」非常勤講師
関西大学社会学部「ジャーナリズム論」「時事問題研究2」非常勤講師

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