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【健ラボ通信 Vol1】健康ラボステーションの提案 楽しみながら病気の予防を

2021年6月22日

認定特定非営利活動法人・健康ラボステーションは、病気を未然に防ぐ健康づくりを提案しています。体を測定してデータを示す〝見える化〟によって健康寿命をのばす啓発の活動です。理事長の浦田千昌(うらた・ちあき)さんは「楽しみながら自分の健康を守りましょう」と呼び掛けています。

健康ラボステーションの役割と活動を紹介してください。

健康ラボステーションは、調剤薬局を母体として生まれたNPO法人です。2013年に設立しました。
12種類の計測器を使って健康測定のイベントを開いてきました。出張測定にも出かけて健康づくりを啓発しています。
糖化度測定では、体のこげつき度を測ります。体内でタンパク質と糖質が結びつく糖化反応が起きると、動脈硬化や骨密度の低下など体に良くない反応がおこると言われています。指先の毛細血管をモニターに映す血流測定も人気があります。

調剤薬局はコンビニよりも数が多いといわれています。病気になってからでは遅いので、薬局は健康な時からの関わりとして、地域向けに健康サポートの役割も期待されるようになりました。病気の予防には、「食」が大切です。これからは、管理栄養士の活躍に期待しています。

これまでの成果と、活動から見えてきた課題をお話しください。

健康測定に参加する人の多くは日ごろから健康を意識しています。健康管理に無関心な人にどう働きかけるか。そのことが課題です。

「俺は大丈夫」「酒を飲んだら治る」「寝たら治る」。根拠のない自信を示す人が少なくありません。大阪府内では、健康診断の受診率も、がん検診の受診率も高くありません。

逆に「健康診断の数値を見るのが怖い」と逃避するケースもあります。血圧や中性脂肪など、自覚症状がないままに悪化するので注意が必要です。

私の父親も55歳で肝臓がんと診断されて25日後に急逝しました。とてもつらかったことを今でも昨日のことのように思い出します。同じ思いをする人が少しでも減るように、この活動に力を注いでいます。

その方の健康意識に働きかけようと思うと…要は、人かもしれません。管理栄養士やスタッフの声掛けが健康に気を配るきっかけになることを願っています。

コロナ禍では、どんな取り組みを工夫されていますか。

コロナ禍で地域や企業向けの健康測定のイベントは、すべてキャンセルになりました。そこで、オンライン栄養相談やオンラインのセミナーを始めました。健康にいいオリジナルのレシピを発信するなどコロナ禍を乗り切る工夫を重ねています。
オンラインと対面を併用しているセミナーでは「やっと人に会えた」と喜ばれています。

健康計測イベントや栄養相談の事前予約システムを開発しました。事前予約システムを使い、完全予約制にすることで密を避けることができ、待ち時間が減り、アドバイスにも集中していただけます。また、運動、食事、生活習慣を聞き取る75項目のヘルスチェックシートに回答していただくとご本人の健康状態を把握していただくことができ、アドバイスに役に立っています。コロナ禍を乗り切る知恵の一つになっています。

今後の展開を教えてください。

協力団体の一般社団法人「プレシジョンヘルスケア研究機構」と連携して、「研究応援隊」という取り組みを計画しています。

健康にかかわる商品やサービスの研究開発に、「世のため、人のためなら協力するよ」という方に参画していただきたいと思っています。研究段階から参加することで、商品やサービスが生まれた後も愛着が生まれるのではないでしょうか。コロナ禍だからこそ、社会に役立つ健康づくりの一助になることを望んでいます。
さまざまな工夫を重ねて、健康づくりに向けた行動の変容を提案し続けたいと思っています。

管理栄養士の樋口遥香(ひぐち・はるか)さんは「人と人の関係を大切にして健康アドバイスを心掛けています」と語っていました。

健康ラボの職歴は6年目になります。相手の気持ちを大切に、アドバイスをしていると「樋口さんが言うてくれるから」と反応が返ってきます。我慢を強いたり、食事を制限したりするような助言は長続きしません。自分のことも「運動が続きません。飽き性なので」「でも諦めずにやっています」と率直に話していると想いが伝わります。「健康診断の結果を持ってきたから見てや」と言ってくれるようになると、私のことを信頼してくれたんだなと嬉しくなります。

よくある管理栄養士の業務ではなく、健康関連の新しい研究開発にかかわる仕事もあって新鮮に感じています。

管理栄養士の大原奈緒(おおはら・なお)さんは「頼りにされるとやりがいを感じます」と話していました。


糖尿病や高血圧の方から、食事や調理方法のアドバイスを求められます。栄養相談で、「あなたしか頼る人がいない」と言ってもらうと、とてもやりがいを感じます。また、相手に寄り添ったアドバイスができるように、より頑張ろうというやる気にも繋がっています。

コロナ禍で、会員様の健康状態が気になっています。若い世代も意識してインスタグラムやFacebookなどのSNSを活用して、食事の心掛けや栄養のバランスに配慮したレシピを発信しています。オンラインセミナーでは、コロナ前とコロナ禍の変化を絡めて説明しました。受け手側がどんな情報を求めているのか、知り合いから情報収集して、発信の仕方を研究しています。

事務職員の佐光瑞穂(さこう・みずほ)さんは「オンラインの会員サービスを充実させたい」と提案していました。

福祉系の大学で高齢者福祉を専攻して、認知症カフェや高齢者施設でもボランティアを経験しました。施設のおじいちゃん、おばあちゃんにもかわいがってもらいました。そうした経験から、この組織の未病予防の取り組みに魅力を感じています。

「野菜、不足していませんか」。そんな簡単なアドバイスでも真剣に耳を傾けてもらえるとうれしいと感じます。コロナ禍で会員が減る傾向にあるので40代や50代、もっと若い世代が入会しやすい環境を整えたいと考えています。今は紙ベースである会員サービスのオンライン化を進めています。インスタグラムやメールマガジンも充実させ、積極的に健康情報を発信していきたいと考えています。

健康ラボステーションの健康測定や活動をシリーズで紹介します。

「健ラボ通信」と名付けました。次回のテーマは「管理栄養士の役割」です。

組織案内

認定特定非営利活動法人 健康ラボステーション
所 在 地:大阪市北区天満橋1-8-30  OAPタワー10階1005号
電話番号:06-6948-8015

執筆:おれんじねっと記者  中尾卓司

1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。
1990年4月、毎日新聞入社。大阪社会部、外信部、ウィーン支局、社会部編集委員を経て、2020年3月、毎日新聞を早期退職。記者一筋に30年の経験を生かして、おれんじねっとの取材チームに加わり、記者活動を展開中。「つなぐ、つながる、つなげる」を掲げて新しい情報発信のかたちを提案している。
大阪大学箕面キャンパス「現代ジャーナリズム論」非常勤講師
関西大学社会学部「ジャーナリズム論」「時事問題研究2」非常勤講師

 

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