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介護老人保健施設みずほ倶楽部 ~笑顔に包まれて身体機能の回復を~

2021年1月18日

大阪市天王寺区の介護老人保健施設みずほ倶楽部は、大阪市中心部を東西に貫く長堀通に面し、笑顔に包まれた明るい雰囲気の施設でした。認知症フロアを担当する介護福祉士2人、フロア長の椿野菜緒(つばきの・なお)さんと森岡久乃(もりおか・ひさの)さんに、お年寄りケアについて聞きました。

この施設について、教えてください。

椿野さん 7階建ての建物の2階から6階が入所フロアです、そのうち2階の認知症フロアに24人の入所者さんがいます。建物中央に吹き抜けスペースがあり、どのフロアもぐるぐる歩ける回廊になっています。

お二人のプロフィールをお話しください。

椿野さん 私はおばあちゃん子でした。祖母を看取った小学4年生の頃、おばあちゃんの最期に何もできなかったことが心残りでした。介護科のある高校で学び、1年間、在宅介護をした後、この施設に就職しました。ここで10年の経験を積んで、今ならできることはたくさんあり、おばあちゃんにできなかったことをかたちにできていると思います。

森岡さん 子育て中でも働きやすい環境です。この施設で17年間、働いています。途中に1年間離職して義理の祖母を介護しました。身近な家族を介護して、ズボンのゴムを入れ替えると快適に過ごせるとか、いろんなことを学びました。そして認知症の人は今、何を考えているのか。当事者の思いをより深く理解したいと考えるようになりました。

笑顔が多くて、とてもいい雰囲気の職場ですね。

椿野さん 忙しいときほど笑えます。自然体です。笑うとその空気が利用者さんにも伝わり、フロアのムードがよくなります。一人で考えても解決できないことも、みんなで「こんなん、どうやろ」と相談すると、できることが見つかり、いろいろと気づきや発見が生まれます。

森岡さん 食事の際、おかずを見ているだけで食べない利用者さんに小皿を差し出したら、おかずを小皿に移して食べました。「やったね」と職員同士で確認し合いました。そんな小さなことの積み重ねがやりがいにつながります。日々、手探りの連続です。

安心して居心地よく過ごしてほしい。「15分間、会話すると安心できる」といいます。利用者さんとも、ご家族とも、しっかりコミュニケーションを取るように心掛けています。今は新型コロナウイルス対策のために直接面会できません。私たちが1階に降りていって、洗濯物を届けてくださるご家族に、利用者さんの状態をお伝えします。

日々、大変なことや利用者さんとのエピソードを教えてください。

椿野さん 認知症の行動・心理症状が出て怒りっぽくなり、暴言・暴力がみられる利用者さんがいます。それによって周りの利用者さんに嫌な思いをさせたくないし、ご本人を悪者にもしたくない。どちらの立場も守りたい。お互いに認知症であることを理解できないので対応に困りました。
最近、落ち着かれない女性の利用者さんを「大丈夫だよ」と抱きしめました。
ある女性の利用者さんのケースでは、息子さんの話題を振ると、落ち着かれるようになりました。オンライン面会の際に、息子さんが中学生の頃の話をされたことがきっかけです。「当時、茶髪に染めて帰ったら母親に泣かれて、びっくりした。それから態度を改めた」という内容でした。それ以来、息子さんの話を持ち出すと、安心した表情を見せるようになりました。職員の間で「いい方法見つけたよ」と笑いながら共有します。

森岡さん 近くの高校の同窓生とわかり、入所者同士が打ち解け合ったこともあります。たまたま利用者さんが生まれ育った土地を訪ねた際の話をしたり、ニックネームで呼びかけたりするだけでも喜んでもらえます。「七草がゆは苦いから私の子ども食べんのよ」とか、自分の家族のこともよく話します。関心を持たれる話題を探すのが楽しいです。

これから取り組みたいことはありますか。

森岡さん やりたいこと、興味・関心があることに取り組んでほしい。「編み物をしたい」と話した利用者さんに、ご家族が編み物セットを持ってこられたことをきっかけに、編み物の好きな人の集まりができました。フロアには、美空ひばりとか昭和の歌謡曲など音楽がかかっています。好きな歌が流れると、知っている歌詞を歌う人もいます。関心があることが見つかると、できることが広がり、身体機能の回復につながります。

おれんじねっとを通じて、伝えたいことをお願いします。

椿野さん 全員にもっと関わりたいと考えています。老健施設は生活の場です。自宅と同じことができるようになってほしい。
ご家族が認知症になってどうしたらいか分からない人に、お伝えしたいと思います。家族だけで悩まず相談してください。きっと解決策が見つかります。

施設紹介



医療法人瑞穂会 介護老人保健施設みずほ倶楽部
所 在 地:大阪市天王寺区清水谷町5-27
電話番号:06-6767-2311
入所定員:100人(うち認知症フロア24人)
通所定員:20人

執筆:おれんじねっと記者  中尾卓司

1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。
1990年4月、毎日新聞入社。大阪社会部、外信部、ウィーン支局、社会部編集委員を経て、2020年3月、毎日新聞を早期退職。記者一筋に30年の経験を生かして、おれんじねっとの取材チームに加わり、記者活動を展開中。「つなぐ、つながる、つなげる」を掲げて新しい情報発信のかたちを提案している。
大阪大学箕面キャンパス「現代ジャーナリズム論」非常勤講師
関西大学社会学部「ジャーナリズム論」「時事問題研究2」非常勤講師

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