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鶴見老人保健施設ラガール ~ベテラン職員が多く、利用者との信頼関係も深く~

2020年10月30日

鶴見老人保健施設ラガールは、大阪市鶴見区の新旧の住宅が混在する地域にあり、在宅復帰に向けたリハビリに力を注いでいます。施設の特色について、介護主任の金子勉(かねこ・つとむ)さんに聞きました。

この施設の特色をお話ししてください。

施設職員の約半数が勤続10年以上という経験豊富なベテランが多いということです。そのため、利用者さんの情報共有や部署間の連携が上手くいき、結果として利用者さんの体調管理や日常生活動作の向上につながっています。そして良好な人間関係により、仕事のために、職員が家庭を犠牲にすることはなく、子どもが熱を出しても遠慮せずに、休みを取ることができます。また育休を取っても職場復帰するケースが多くみられます。

入所定員は127人で、従来型の施設です。4人部屋が多く、入居者さん同士の小さなコミュニティーができていて、利用者さんが「この人、元気ないから、看てあげて」と言ってくれることもあります。

金子さんの仕事と役割を教えてください。

私は2001年に大学を卒業し、すぐここに就職して20年目になります。3年の実務経験後、介護福祉士の資格を取りました。他の3年以上の実務経験のある介護職員ほとんども、介護福祉士の資格を取っています。

資格はもっていても、人と人が接する仕事ですので、信頼関係を構築できるまでには時間がかかります。特に認知症の方への接し方は難しいことが多いです。私は主任としてアドバイスをしたり、個人に合った良い方法を常に考えます。結果として今の自分は利用者さんに育てられたと思っています。

入所者との間のエピソードを教えてください。

認知症の方の中には、声かけにも反応されない方が多くみられます。そんな時パソコン検索して藤山寛美や森繫久彌などの若い頃の映像を見てもらうと反応が良くなります。また小集団で「あんた、何言うてんねん」「またいらんこと言うて」と大阪らしく、ボケとツッコミのような雰囲気をつくり、笑いを誘ったりします。ある時カラオケをしていたら、ご家族が「お母さんが歌っている姿を初めて見ました」と驚かれたのが印象的でした。

何日か休んで久しぶりに出勤した時、利用者さんに「病気になっていたのかと心配していた」と言われ嬉しくなったこともあります。

これからの取り組みについて、教えてください。

施設に入所される方の年齢層が高くなって、80歳代、90歳代は当たり前、100歳代も数人います。寝たきりにならないように、ぎりぎりまで動けるように利用者さんの残った力を引き出したいと思っています。

それには利用者さんに寄り添う気持ちが大切です。声かけひとつでも違ってきます。「立ちますよ」と声をかけるだけで、利用者さんの立ち上がる力を引き出す職員もいます。

認知症のある方は、感情のコントロールができないことが多いですが、その人の個性と捉えたら介護する側の対応も異なってきます。また体調不良でも思いを伝えられないことがあります。例えばご飯を食べない時、体調不良なのか精神面の問題なのかを、医師・看護師・管理栄養士・理学療法士など多職種と連携して、顔色や言動の小さな変化にも気を配り、早期発見に努めています。

おれんじねっとを通じて、伝えたいことをお願いします。

利用者さん、ご家族とのご縁を大切にしたいと思います。ここで時間を過ごしてほしい。そして、いい生活を取り戻すことにつながったらいいな、と願っています。

医師でもある施設長の下條富美子(しもじょう・ふみこ)さんに、これからの施設の役割について聞きました。


鶴見区には特別養護老人ホームも多いという地域の特性があり、私たちは、病院と在宅をつなぐ中間施設としての老人保健施設の役割に力を注いでいます。ご家族が体調を崩される場合などの緊急ショートステイも可能な限り受け入れています。「ここがなかったら家庭が崩壊したかもしれない」とおっしゃるご家族もありました。お年寄りがお年寄りを世話する「老老介護」の問題もあり、困っている方に「いろいろな介護方法がありますよ」とお伝えしたい。まずは、気軽に相談してください。地域貢献のために、さまざまなニーズにお応えする施設としての役割を果たしていきます。

施設紹介


社会医療法人弘道会 鶴見老人保健施設ラガール
所在地:大阪市鶴見区横堤4丁目3番30号
電話:06-6915-8181
入所定員:127人
通所定員:34人

執筆:おれんじねっと記者  中尾卓司

1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。
1990年4月、毎日新聞入社。大阪社会部、外信部、ウィーン支局、社会部編集委員を経て、2020年3月、毎日新聞を早期退職。記者一筋に30年の経験を生かして、おれんじねっとの取材チームに加わり、記者活動を展開中。「つなぐ、つながる、つなげる」を掲げて新しい情報発信のかたちを提案している。
大阪大学箕面キャンパス「現代ジャーナリズム論」非常勤講師
関西大学社会学部「ジャーナリズム論」「時事問題研究2」非常勤講師

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