介護老人保健施設さくらがわ ~利用者と職員「なじみの関係」を築いて~
介護老人保健施設さくらがわは大阪市浪速区にあり、地元との触れ合いを大切にしています。全室が個室ユニット型となっていて、職員との「なじみの関係」を築けることが特色となっています。さくらがわの総括副施設長、北谷善寛(きたたに・よしひろ)さんに施設の取り組みについて聞きました。
施設の概要を教えてください。
府内でもまだ少ない全室個室ユニット型の介護老人保健施設です。入所定員は100人、一つのフロアごとに入所者20人を受け入れています。ショートステイ、日帰りのデイケア、訪問リハビリのサービスも提供し、在宅復帰と在宅で生活されている方の支援に取り組んでいます。
常勤、非常勤合わせて約120人いる職員は、フロアごとの担当制になっているので、利用者さんとなじみの関係を築きやすい。常に知った顔が利用者さんに応対することがここの特徴になっています。
北谷さんの役割を教えてください。
22年前グループ最初の介護老人保健施設グリーンガーデン橋本(和歌山県橋本市)の介護職から経歴をスタートしました。私は現在は、法人全体での人員配置、管理職等の悩みを聞いたり、一緒に考え行動で示したりすることで施設の運営に携わっています。また人材育成、施設の役割や目的の啓発活動を地域に広げていけるように、中学校や高校等とのつなぎ役として行動しています。
施設のモットーは「人にやさしく、全ての関わる人の質の向上を目指す」。
管理する側になっても、利用者さんとは常に接点を持っているので、利用者さんも心安く「にいちゃん、どうしたんや」と声を掛けてくれます。
どのようなことを大切にされていますか。
施設に入ると、外との接点がなくなります。退屈な時間をより良い時間に変えていくように努めています。ご縁があって来ていただいた利用者さんには、季節感を楽しんでいただけるように、季節の行事を大切にします。初詣、もちつき、節分、桜の季節には近くの公園に花見に行く……。
コロナ禍には特別、気を使っています。今は、できるだけ持て余す時間ができないように、行事を簡素化しつつも、何か楽しみがあるように工夫しています。最近も、スイカ割りと流しそうめんを企画しました。大勢が密集することにならないように、フロアごとに日を変えて、連日、続けました。
コロナについては、「正しく、こわがろう」と、話し合っています。
ちょっといいお話があったら教えてください。
つい先日、若い職員が利用者さんの小さな異変に気付き、そこから、脳梗塞の早期発見に至ったケースがありました。食事の介助の際に、「いつもようにかめていない。何かおかしい」と。高校を卒業して新卒採用で1年ほどの経験の若手職員です。
医師の診断を受けて、すぐに病院に運ばれ、脳梗塞の初期段階と判明し、1週間ほどで退院できました。
介護職員は、間近にいるので利用者さんのことを最も知っています。毎日を同じスタッフが対応することで利用者さんの気持ちも落ち着いて、「自分の居場所だ」と感じていただけるのだと思います。
「いつもよりお茶を飲むスピードが遅い」「寝つきが悪い」「ナースコールが多い」といった利用者さんのささいな変化を見逃さないように申し合わせています。気づいたことを何でも申し送りノートに書き留めたり、パソコンに入力したりして、情報を共有しています。
今後できたらいいことは?
一対一の対応を向上して、一人一人の利用者さんのニーズや思いを引き出せるように努めたい。職員の世代の幅は広く、20代30代の職員も多い。
時代は変わっていきます。今は、昭和二桁生まれの利用者さんが多い。物のない時代に生き抜いてきた人も、戦前と戦後では、ものの見方や価値観は異なります。
今やっているやり方が10年後には通用しないかもしれない。若い職員にも、そのことを知っていてほしい。認知症のために表面上、うまくできないように見えるだけ。その人が生きてきた時代の背景をイメージしてみることで、対応のヒントが浮かびます。
施設の外に出ようとされる帰宅願望のある方に、「なんで帰りたいのか」と踏み込んで理由を聞いてみると、本人の安心につながることもあります。本人に聞けない場合には、家族に聞き取りをすることもあります。
おれんじねっとを通じて、伝えたいことをお願いします。
地域の住民との触れ合いや交流を大切にしています。地蔵盆に参加したり、年末夜警の集合場所を提供したり、老健ではいろんな職種が働いているので、そのことを知ってもらう為に地元の高校や中学校に出向かせていただくこともあります。求人のために、職場体験やボランティア等も積極的に受け入れ、高齢者の方や認知症などの特徴を正しく理解していただくことができるような取り組みを増やしていきたいと思っています。
施設紹介
医療法人敬英会 介護老人保健施設さくらがわ
所 在 地:大阪市浪速区桜川4-10-13
電話:06-6567-4165
入所定員:100人(全室個室ユニット)
通所定員:30人
執筆:おれんじねっと記者 中尾卓司
1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。 |