認知症による介護拒否の原因と対応~困ったときのヒント~
認知症の方を抱えるご家族のみなさん、介護拒否に悩んだことはありませんか?
「入浴を嫌がる、食事を摂ってくれない。」
など、生活に必要な行為でも拒否されてしまうことがあります。
ご家族の介護負担を減らせるよう、介護拒否の原因や対応を考えていきましょう。
また、認知症の介護拒否で困ったときのヒントもご紹介していきます。
介護拒否の起こる原因
はじめに介護拒否が起こる原因について考えていきます。
認知機能の低下
認知症により前頭葉が萎縮することで、認知機能が低下することが原因の一つです。認知機能が低下すると、するべきことが認識しづらいため拒否につながってしまいます。
羞恥心が強い
認知症の方々の介護では、人に見せたくないプライバシーの部分でも援助しなければいけない場面が多々あります。例えば、トイレ、着替え、お風呂などです。排泄シーンや裸を見られることには誰しも羞恥心があります。特に介護者が異性の場合、羞恥心が一層強まることも考えられます。
自立心がある
ご高齢の方々はこれまで何十年間もおひとりでさまざまな日常生活動作をこなしてきました。今まで自分でできていたという自立心から、介護を拒否される方もいらっしゃいます。
今までの習慣と違うため混乱している
これまで暮らしていた自宅から施設に移ったり、介護者が変わったり、環境に変化が起きると混乱される方もいます。食事では今まで好みの味付けで食べていたが、健康のため減塩食になった、など普段との違いから拒否行動が起こるケースもあります。
認知症の方によくある介護拒否6例
実際にある介護拒否の例を見ていきましょう
- 入浴を拒否する
裸を見られることに抵抗がある方もいます。もともとお風呂が好きだった方でも入浴拒否することがあります。 - 着替えを嫌がる
身だしなみを気にしなくなってしまったり、自分で決めた服にこだわり、着替えを拒否する方もいます。 - おむつ交換をさせてくれない
排泄は人の尊厳に深く関わっており、陰部を見られることに抵抗を感じる方もいます。 - 食事を摂ってくれない
食習慣が変わると受け付けなくなる人や、食べ方自体が分からなくなってしまう方もいます。 - 薬を飲んでくれない
服薬を嫌がる方もいます。食事に混ぜると味が変わり食事自体を拒否されてしまうこともあります。 - レクリエーションやリハビリを嫌がる
どのような場所でなにをするのかが分からず、拒否されることがあります。
介護する側ができるかんたんな3つの対策
ではどのような対策をしたら、介護を受け入れてもらえるでしょうか。対策をご紹介します。
嫌がる理由を聞く
本人なりの原因があるかもしれません。例えばデイケアを拒否している場合は、参加した際に嫌な思いをしてしまったことも考えられるでしょう。まずはなぜ拒否するのか理由を聞いてみましょう。
怒らずに前向きな声掛けで説明する
拒否されるのは辛く、介護者側も傷付きますが、怒ってしまうと怖い印象を持たれてしまいます。やみくもに無理強いさせることは拒否感を強めさせてしまうので、「一緒に行ったら楽しいよ」「お風呂に入ったら気持ちいいね」など、やってもいいかなと思ってもらえるよう前向きに声掛けしてみましょう。
安心感を与える
相手の立場に立って考えてみましょう。認知症になり分からないことが増えている状況で、誰かわからない人に手伝われるというのは恐怖心があります。安心感を与えられるよう優しい声掛けや、体に優しく触れることで恐怖心を取り除きましょう。
在宅介護で認知症の方の介護拒否に困ったときのヒント
最後に在宅での認知症患者の介護拒否に困った際のヒントをお伝えします。
介護に当たっての基本的な考え方
残存機能と呼ばれるその人のできることは奪わずに、やってみてもらいましょう。
尊厳を守るためにも大切なポイントです。時間がかかってしまったり、失敗もあるかもしれませんが、全てを手助けすることは余計に認知症を進行させてしまう恐れがあります。信じてやってもらう、という姿勢も忘れずに介護にあたってみてください。
専門家を信頼しましょう
ケアマネジャー(介護支援専門員)は頼れる介護の専門家です。相談に乗ってくださり、介護認定等の必要書類の作成もお願いできます。また、認知症の方やそのご家族に早期に関わってサポートする「認知症初期集中支援チーム」という専門家チームもあります。どちらもお近くの地域包括センター等で相談することができますので、お困りの際はぜひ相談してみてください。
まとめ
介護者、介護を受ける側ともに無理のある状態は、ネグレクトや虐待の原因になりかねません。病院には「家族で介護していたときは拒否が強かったが、入院後は穏やかに過ごせるようになった」という方も多くいらっしゃいます。環境が変わると、改善されることもあります。施設やグループホームなど介護サービスの利用も検討してみてください