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目で、味で、雰囲気で楽しめる行事食「ひな祭り」

2021年3月16日

3月3日はひな祭りでした。行事食として散らし寿司を提供する施設が多いと思います。なぜひな祭りに散らし寿司を食べるようになったのか。その理由の一つとして、平安時代に保存食として利用されていた「なれずし(魚に米を詰めて発酵させたもの)」を、ひな祭りを始めお祝い事で食べる風習があり、江戸時代になるとこの風習が「ばら寿司」に変わり、近年の華やかな散らし寿司がイメージとして定着してきたというものです(諸説あり)。

毎月入所、退所で利用者様が入れ替わる当施設では、その時々の年齢や性別の割合などによって、好まれる人気の献立も変化します。毎食選択食を実施している当施設では、お一人お一人実物サンプルをお持ちしてお好きな方を聞き取りするため、どの献立の反応がよくて好まれているのか、ダイレクトに伝わってきます。

行事食はただ豪華にすることが目的ではなく、季節感のある食材を使用したり、雰囲気を楽しんでいただき、食生活に彩を感じていただく効果を期待しています。そのため、配膳した際に「うわあ、すごいやん」という声が聞かれると、本当に嬉しくなります。行事食は日ごろ組み合わせない献立同士を提供することもあり、食材の色使いや硬さ、量(ボリューム)にも配慮します。食べきれない量を準備すると、「美味しく食べる」。を通り越して、我慢しながら食べてくださる方の負担になります。限られた品数の中に納まるように、好まれる献立を思い返して行事食を決定します。

散らし寿司が主役のひな祭りを見返すとわかりやすいことに気づきました。今年は揚げ物やボリュームのあるメニューを好む利用者様が多いため、かき揚げを副菜に選びました。昨年は手の込んだ和食が人気だったため、手作りがんもどきでした。数年前まではあっさりした茶碗蒸しが人気だったようです。

今年90歳になるN様は、この日初めて当施設の散らし寿司を食べました。「まさかこんなキレイな食事が出てくるなんて驚いたわ。時間かかったけどかき揚げも全部食べたよ」と言って、満面の笑みで感想を聞かせてくださいました。

年齢が他の利用者様より少し若いH様は、行事食に登場する箸袋やカードをクリアファイルに貼り、アルバムを作成していました。外出などで欠食する日が行事食の日では、「Hさんがカード残しておいてね。と言っていましたよ」と、栄養課に伝言があります。またある日は「〇〇の日の箸袋が汚れたから新しいのが欲しい」と言ってくださりました。
目で、味で、雰囲気で楽しめる行事食でありたいと思います。

ひな祭りに登場する菱餅の色には順番によって情景が変わるようです。下から「緑・白・赤」の順番で配置されている菱餅は、雪の下に新芽が芽吹き、梅の花が咲いている情景。下から「白・緑・赤」の順番のときは、雪の中から新芽が吹き出、桃の花が咲いている情景だそうです。

今年写真を振り返ってふと、調理師に3色ババロアの色の配置が毎年違うのはなぜか問うと、「理由はありませんよ、桜の塩漬けがどうすれば映えるのか考えて、毎年配色を考えていました。順番、決まっていたのですね・・」という回答が返ってきました。昔からの言い伝えも行事(食)には必要な要素なので、今後はきちんと確認することにしました。

執筆:介護老人保健施設さやまの里 管理栄養士 西田 有里

この献立コラムは、介護老人保健施設さやまの里(大阪狭山市)の管理栄養士、西田有里さんが書いています。さやまの里では毎日昼夜、利用者さんはメニュー2種類から食事を選びます。食事の選択を聴いて回ることで利用者さんと食を通したコミュニケーションを深めています。


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