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“和食の日(11月24日)”に、入所者さんと楽しむ「家庭料理」の会話 ~管理栄養士 西田有里さんの献立コラム~

2020年12月1日

“和食”とは、日本の伝統的な食文化のことで、魚や野菜など地域の食材を使用したり、料理そのものではなく自然を尊ぶという食に関する習わしのことを言うそうです。日本の国土は南北に長く、海、山、里と自然が広がっていることから多様な食材が用いられ、一汁三菜を基本とする食事スタイルが知られています。

当施設では毎月様々な行事食を提供しています。今年の和食の日の献立は蕪の葉ご飯、秋刀魚竜田揚げ、あんかけ茶碗蒸し、胡瓜の酢の物、味噌汁です。蕪の葉ご飯は旬の蕪の葉を軽く塩もみし、炊き立てのご飯に混ぜます。ほんのり苦みと胡麻の香ばしさが絶妙です。秋刀魚は日ごろ塩焼きやかば焼きで提供する機会が多いため、今回は漬け汁がしみ込んだ秋刀魚に片栗粉をまぶして竜田揚げにし、ふっくらした食感で魚が苦手な人にも美味しく召し上がっていただけるよう工夫しました。

昭和3年生まれの91歳の方は、お肉よりもお魚を好まれる女性です。ある日のその方との和食についての会話です。「昔はなあ、なんでも炊いたもん食べとったんやで。肉といえばすき焼き。魚はめざしとかな。私の好物はひろうすや」と昔から食べ親しんだ食事の話で盛り上がりました。

認知症の症状の一つに記憶障害があります。新しいことが覚えられなかったり、以前覚えていたことが思い出せなくなります。加齢による物忘れとの違いを判断するのは難しいのですが、日常生活に支障がでたり、進行して悪化することで周囲が困っている。といった場合は、認知症の可能性があるかもしれません。認知症の方は会話の中で、物の名前がわからず言いたいことが思い出せなかった時に「そんなん知らん」と言って急に会話を中断されることがあります。その場合には答えやすい話題(その日の天気など)にすぐに切り替え、不愉快な思いや不安な気持ちにならないよう配慮します。何気ない会話でも、気楽に楽しめる話題を提供するよう常に反応を確かめて話すことで、人に会うのが億劫になって家に引きこもる高齢者を少しでも減らすことができるのではないかと思います。

11月24日はイイニホンショク=“和食の日”と言われています。調理師の包丁細工の菊の人参に目を奪われ、茶碗蒸しをみて「今日は豪華やなあ」というお声をいただきながら「和食の日」をお題に昔の家庭料理について会話を楽しみました。「和食といえば刺身か天ぷらやな」「よく鰆の炊いたん食べたわ」と思い出話に花を咲かせましたが、秋刀魚の名前は誰1人口にしてくださることはありませんでした。来年はさらに思い出話に花が咲く献立にしたいと思います。

執筆:介護老人保健施設さやまの里 管理栄養士 西田 有里

この献立コラムは、介護老人保健施設さやまの里(大阪狭山市)の管理栄養士、西田有里さんが書いています。さやまの里では毎日昼夜、利用者さんはメニュー2種類から食事を選びます。食事の選択を聴いて回ることで利用者さんと食を通したコミュニケーションを深めています。


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