土用の鰻で暑い夏を乗り切ろう
今年の夏の土用の丑は7月28日でした。土用とは暦の「立春・立夏・立秋・立冬」の直前の18日間を表す言葉で、季節の変わり目ごとに登場します。今年の夏の土用は7月19日から土用入りとなり、8月6日に土用明けを迎え、8月7日が立秋となります。この土用の期間の丑の日が土用の丑の日となるため、毎年日付が異なります。丑の日に“う”から始まる食べ物を食べると夏負けしないといわれたことから、土用の丑の日に鰻の蒲焼を食べる習慣が今ではすっかり定着していますね。
鰻の蒲焼には関東風と関西風があるそうです。関東風は白焼きした鰻を蒸してからタレをつけて焼くため、柔らかく仕上げています。関西風は白焼きにした鰻を蒸さずにそのままタレをつけて焼くため、香ばしく表面はカリッとしています。当施設は大阪南部にあるため関西圏の利用者様が多く、食べ親しんだ鰻の蒲焼は関西風の香ばしい鰻です。例年、予算の都合上、鰻の蒲焼の大きさは満足していただける大きさを提供しているとは言えません。鰻の蒲焼をそぎ切りにして提供しているため身が薄く、加熱の加減によっては焦げて硬くなる恐れがあるため、香ばしさを追求したことがありませんでした。
昨今、介護業界を意識した食品が多数、商品化されています。鰻の蒲焼風の練り製品もその一つです。テレビでも紹介されているのでご存知の方もいらっしゃると思いますが、見た目は鰻の蒲焼にそっくりで、炭火焼風の香ばしさも工夫しているとのこと。さっそくサンプルを取り寄せて調理師、管理栄養士で試食してみました。見た目は鰻の蒲焼にしか見えず、口に入れた瞬間も香ばしさがあります。一口二口と食べ進めていると、少し練り製品特有の香りを感じました。食感はとても柔らかいのですが練り製品のため、均一な舌触りが少し鰻の蒲焼らしくない気もしました。
今年の土用の鰻の蒲焼は、思い切って魚の練り製品に変更してみようかな。小骨を心配することもなく、香ばしい鰻を頬張ってもらいたい。そんなことを思いながら、ギリギリまで複数人の調理師、調理パートさんと一緒に考えました。利点・欠点で比較して多数決をしても意見はほぼ半数にわかれました。これだけ決まらないということは、今はまだ変更の必要がないのではないか。そう思い、今年も例年通りの鰻の蒲焼を利用した土用の鰻を提供しました。利用者様の反応は、「家では蒲焼のままで食べてたわ。ご飯の上にはのせてなかったな」「夏はやっぱり鰻やわ。誰が作ってくれたんやろう。お礼が言いたいわ」などなど、嬉しい感想をたくさんいただきました。
介護業界で通用する商品は毎年新しいものが開発されています。栄養士は情報収集をキチンとしないと、知ろうと思えば知れることを知らないのは、サービスの低下につながるということか。と今回改めて思いました。来年はどんな鰻の蒲焼が話題になるのだろうかと今から楽しみです。
執筆:介護老人保健施設さやまの里 管理栄養士 西田 有里
この献立コラムは、介護老人保健施設さやまの里(大阪狭山市)の管理栄養士、西田有里さんが書いています。さやまの里では毎日昼夜、利用者さんはメニュー2種類から食事を選びます。食事の選択を聴いて回ることで利用者さんと食を通したコミュニケーションを深めています。