認知症の初期症状「取り繕い」とは?気づきにくい初期症状への対処法
認知症の初期症状「取り繕い」についてご存知ですか?
今回は身近な人がなかなか気づきにくい「取り繕い」への対処法をご紹介します。
認知症で見られる「取り繕い」とは?
認知症の「取り繕い」とは
認知症は様々な原因により脳細胞が破壊・減少し、認知機能低下や記憶障害が起こることにより社会生活に支障が出る病気です。特に認知症初期の方は記憶障害があるのをうまくごまかすために相手に話を合わせて忘れてしまったことを憶えているかのように振舞う態度が見られます。このような態度のことを「取り繕い」と言います。認知症の初期症状ではありますが「取り繕い」は身近な人でも気づきにくく、知らず知らずのうちに認知症が進行してしまうケースもあります。
「取り繕い」をする理由
「取り繕い」をする理由の解明はされていませんが、記憶障害が起こっても思考や判断力が損なわれにくいことが原因の一つだと考えられています。認知症の方が自尊心を保ちたいという気持ちや周りの空気を壊したくないという気遣いから来るものだとも言われています。
気づきにくい「取り繕い」への対処法
早期発見するには
認知症の初期症状「取り繕い」を早期発見し対応をすることにより、認知症の方の生活の質はより良いものになります。早期発見のためには「取り繕い」の具体例を知っておくことで日々の変化に気づき易くなります。
- 具体例①
実際は、なんの日か思い出せないので話をすり替えてごまかしている例。
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Aさんの息子
「お父さん、今朝は調子が良さそうですね。今日は何の日か覚えてます?」
Aさん
「今から新聞を読もうとしてたんだ。その話は後にしてくれないか。」
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- 具体例②(振り向き動作)
実際は友人との会話の内容を思い出せず、横にいる娘の方に振り向いて助け舟を求めている例。
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(娘と買い物中にばったり出会った友人に声をかけられた時のこと)
友人
「この間はお世話になりました。楽しかったわね。」
Bさん
「あ〜この前のあれね。(横にいる娘に振り向く)」
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※このように認知症の方が「取り繕い」をするときにみられる動作を「振り向き動作」と言います。
このように、認知症初期には普段のちょっとしたやり取りの中で気づきにくい「取り繕い」が見られます。「取り繕い」に気づいたら、認知症専門医などに早めに相談しましょう。
不安に寄り添い受け止める
認知症の方は、記憶障害や物忘れをごまかすために「取り繕い」をします。一緒に暮らしている家族や身近な人にとっては「また嘘をつかれた」「約束を守ってくれない」と「取り繕い」がストレスになってしまうことが多くあります。しかし、本人には悪気がないことがほとんどです。
また何より、本人が記憶障害や物忘れがあることを否定したかったり、誰も私のことを信じてくれないなど、孤独で不安な気持ちになり悩んでいる場合もあります。
もし間違った言動をとってしまったとしてもそのような不安に寄り添い受け止めること、頭ごなしに「取り繕い」を否定しないことが大切です。
生活環境を見直す
認知症の方は、「取り繕い」をすることで生活上の問題が見えにくくなり、生命の危険や周囲とのトラブルにつながってしまうケースが多くあります。生命の危険やトラブルを予防するためにも生活環境の見直しを行いましょう。
▼生命の危険につながることへの対策
・火の消し忘れが増えた・食べること自体を忘れる場合には、食事摂取量の確認・配食サービスの利用
・高血圧や糖尿病などの大事な薬を飲み忘れる場合には、目の前で服薬確認する。お薬カレンダーや小分けケースを使って毎食ごとに薬を管理する。
このように、生活の中で起こる危険を予測し対策をとっていきます。
▼不安になりにくい環境づくり
認知症の方は「取り繕い」をすることで、家族を怒らせてしまったり、周囲の人とトラブルとまで行かずとも変な雰囲気になってしまうことがあります。そんな時「取り繕い」をした自分に気づき、物忘れが増えていることに対して非常に不安を覚えます。
少しでも不安が減るような環境作りも大切です。
例えば、日付や曜日が確認できる時計・カレンダーや連絡用ホワイトボードなどを目につきやすい場所におくこと。よく忘れるものは置き場所を一緒に決めて見えやすいよう付箋を貼っておくなど。
もし間違っていても頭ごなしに否定せず一緒にスケジュールや片付け場所を確認することもできます。また、新しい環境で不安を感じることが多いため、なるべく昔から大事に使っているものや家族の写真などを見える場所に置いておくことも安心につながります。
まとめ
気づきにくい認知症の初期症状「取り繕い」。
早期発見のためには「取り繕い」の具体例を知っておくことや生活環境を整えることが大事です。認知症の方が安心して過ごせることでご家族や介助者にとってもメリットはたくさんあります。不安な気持ちに寄り添いながら、生活環境を見直してお互いが気持ちよく過ごせるよう工夫していきましょう。