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一口大、刻み食、ペースト食など咀嚼機能に配慮した食事とは

2021年1月19日

高齢者の食支援で必要な環境整備の中に食事形態があります。食事形態というのは、食事を個人に合った食べやすい形状や物性にしたもののことを言います。病院や施設での呼び名に統一されたものはなく、一口大、刻み食、ペースト食などいろいろな呼び名があります。

当施設の副食の食事形態は普通食を基本に、咀嚼や食事動作に配慮した刻み食(3センチ)、刻み食(1センチ)と、嚥下機能に配慮したゼリー食、ペースト食の5種類を用意しています。選び方としては、利き手が自由に使えるか、食べるときに使用する道具は何か、使用するスプーンの種類ですくって口に運ぶことができるか、咀嚼能力はどの程度保たれているのか、疾患の影響はどうか、飲み込む力や麻痺はあるのか、というように、いろいろな角度から診て判断します。

適切ではない食事形態を選んだ場合、ご自身で召し上がることが難しく介助が必要となり、誤嚥や窒息のリスクが高くなることもあります。しかし、必要以上に細かくしてしまうと、もっている機能を生かせることができないため、噛む力が弱くなってしまう場合も。そのため、食事形態を選ぶときは慎重に判断しますし、一度決めたらそのままにしておくのではなく、随時様子を観察し、適宜状態にあったものに変更することになります。
当施設ではお正月の元旦と2日は朝食、昼食ともにおせち料理を提供します。施設では認知症を患った利用者さんもいらっしゃるので、バランやホイルカップなど、口に入れてはいけないものは使用していません。お重に詰める前にどの食材と食材を隣り合わせにすると味が移らないか、色使いを工夫して華やかに見えるためにはどのように切ればいいかと調理師さんが試行錯誤しています。そんな苦労も、配膳した瞬間の利用者さんの「うわ~きれいやなあ」「こんな豪華なん食べきれるかな」といった声におもわず顔がほころんでしまいます。
おせち料理には根菜や昆布や椎茸、練り製品など、しっかりと噛んで食べる献立が多いため、そのまま提供すると咀嚼による疲労を感じる方がいらっしゃいます。そこで、噛み疲れしやすい献立や食材を『やわらか食』と言われる加工したものに変更します。市販されている『やわらか食』は主に素材をミキサーにかけてなめらかにし、成形したものです。味付けした状態のものもありますし、素材の味付けのままの状態で販売されているものは、自宅で調理して味付けをしてから食べます。こういった加工品は、噛みにくい物を咀嚼し続けることに苦労する方には負担が減ります。咀嚼で疲れる度合いは個々で違いますので、施設では全部の献立を負担のない形態で提供する方もいらっしゃいますし、一部の比較的咀嚼しやすい献立は細かく刻んだ物を入れ、やわらか食と混合の方もいらっしゃいます。

食べることで疲れてしまい、食事を残すことが増えると必要な栄養が確保できなくなります。積み重なると体調を崩しやすく、転倒・骨折の原因にもなります。適切な食事形態がよくわからないという人は、栄養士や歯科衛生士など、身近にいるいろいろな専門職に相談してみるのはいかがでしょうか。

執筆:介護老人保健施設さやまの里 管理栄養士 西田 有里

この献立コラムは、介護老人保健施設さやまの里(大阪狭山市)の管理栄養士、西田有里さんが書いています。さやまの里では毎日昼夜、利用者さんはメニュー2種類から食事を選びます。食事の選択を聴いて回ることで利用者さんと食を通したコミュニケーションを深めています。


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