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防災の日の行事食 ~備蓄食でおもてなし~

2021年9月8日

防災の日とは、「台風、高潮、津波、地震等の災害についての認識を深め、これに対処する心構えを準備する」として昭和35年に制定されました。
日付を9月1日に定めたのは、大正12年9月1日に発生した関東大震災にちなんだようです。非常時に備えて防災グッズを常備しているご家庭が多いと思いますが、大勢の高齢者が生活している施設でも、様々な災害を想定して準備しています。
マニュアルや物品は1度準備すると、見直し時期まで特に気を使うことはありません。しかし、ライフラインの影響や人手不足で使用することになる備蓄食の準備には大変気を使います。

当施設には100名分1日3食3日分の備蓄食を常備しています。内容は主食のご飯や粥、パンと、副食の牛丼や焼き鳥缶、魚の缶詰などです。
昨今、備蓄食は改良が重ねられ、食べやすい味の商品が多数、商品化されています。

施設に常備する備蓄食を選ぶ際にはいくつか考慮している点があります。
1つ目はなんといっても味と食感です。消費期限前に献立に取り入れて消費しなければならないため、誰もが抵抗なく食べられる味であり、硬すぎず、安全に食べられることが重要です。

2つ目は作りやすさです。非常時に実際に使用することを想定しているため、誰でも準備することができるものでなければなりません。当施設では防災の日に、非常時を想定してその日に出勤している職員だけで、実際に備蓄食の準備ができるのかを実践してきました。
厨房とは関係のない部署の職員が、初めて手に取った備蓄食の説明書きを読み、混乱なくスムーズに準備できた商品を採択するようにするためです。

3つ目は使い勝手です。消費期限前に備蓄食を献立に入れて消費するのですが、例えば焼き鳥缶なら散らし寿司にトッピングしたり、パンは生クリームを添えたりパンプティングにして提供しています。

こうして選び抜いた備蓄食は、9月1日の防災の日に『防災の日の行事食』として、消費期限に関係なく、利用者や職員の昼食で提供しています。

最初の頃は「絶対に美味しないやろう」「そんなんほんまに食べれるん?」といろいろなご意見をいただきましたが、入れ替えのたびに商品やメーカーを見直し、今では「意外と食べれるな」「言われんかったら全然わからんかったわ」と言っていただけるようになりました。

今年の『防災の日の行事食』は、水を入れるだけでできるアルファ化米の山菜ご飯、鰯の梅煮缶、豚汁缶に杏仁豆腐缶です。
備蓄食は比較的しっかり味がつけられているため、お口直しになるようにモズク酢をつけ、缶詰の魚が苦手な人のために出し巻き卵と大根おろしを添えました。魚の缶詰は見た目で備蓄食とわかりますが、豚汁は想像していなかったようで、誰も缶詰と気づいていないようでした。

こうして毎年備蓄食を食べて思うのは、何日間食べ続けても苦痛を伴わない備蓄食を、これからも可能な限り探し、準備しなければならないなと改めて考えさせられました。

執筆:介護老人保健施設さやまの里 管理栄養士 西田 有里

この献立コラムは、介護老人保健施設さやまの里(大阪狭山市)の管理栄養士、西田有里さんが書いています。さやまの里では毎日昼夜、利用者さんはメニュー2種類から食事を選びます。食事の選択を聴いて回ることで利用者さんと食を通したコミュニケーションを深めています。


 

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