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松下介護老人保健施設はーとぴあ~24時間365日、すべてはリハビリの時間です~

2021年1月28日

在宅復帰のために24時間365日すべてを生活リハビリの時間とみなしています。守口市にあるパナソニック健康保険組合の松下介護老人保健施設はーとぴあは、そんな方針で利用者の思いを尊重していました。利用者の思いをかなえる介護について、それぞれの担当者にお話を聞きました。

認知症フロアを担当する理学療法士の面谷知一(おもたに・ともかず)さんは、「初期段階の評価が大切です」と語っていました。


入所後すぐの時期に、利用者さんご本人の健康の状態や体力、ご自宅の生活環境を確認して、どのようなリハビリに取り組むのか計画を立てます。どこまでできるのかを見極める評価がとても大切なのです。家に帰って生活するという目標に対して、職員がひとりひとりの課題を共有します。
ベッドで体を起こすことも、トイレの付き添いも、食事も、あらゆる生活の場面がリハビリにつながります。それが、生活リハビリです。
リハビリに前向きに取り組む人も、リハビリということばが苦手な人もいます。老健施設では、ご利用者が楽しくリハビリができるよう内容を考えます。声の掛け方ひとつも工夫します。入浴を好まない人には「お風呂に行きましょう」と言わず、「まず、体重を測りにいきましょうね」と話し掛けるとかです。
「家に帰られへん」と不安そうに話していた人がリハビリを重ねてつい最近、家に帰ることができました。利用者さんも、ご家族さんも、とてもいい笑顔を浮かべておられました。利用者さんの喜ぶ笑顔を見ると、この仕事のやりがいを実感します。

認知症フロアの入所担当リーダーの介護福祉士、品山尚美(しなやま・なおみ)さんは「その人らしさと自然なふるまいを大切にします」と話しています。


携帯電話を使って家族に電話する。電子レンジで食事を温める。洗濯機を回して、洗濯物を干したり、取り入れて畳んだり。日常生活の基本動作を一緒に練習します。暮らしに結びつく行動すべてが生活リハビリになります。
「ちょっと待って」「さっき言ったでしょ」といったネガティブな言葉遣いは避けます。「認知症だからできない」といった決めつけもよくありません。利用者さんができることに自信を持てるように、そして、利用者さんを不安にさせることのないように気を配ります。職員みんなが専用ノートに記録したり、ミーティングを重ねたりして、利用者さんひとりひとりの情報を共有します。
認知症フロアも在宅復帰が目標です。入所されて施設の環境になれるまで、安心して過ごしてもらうように心掛けます。認知症であってもしたいことを自由にしてもらう。そんな自然なふるまいを大切にします。その人らしさを尊重して、その人の思いを支えたいと思います。

通所リハビリテーションを担当する介護福祉士、泉敦子(いずみ・あつこ)さんは「やりたいことをやる姿勢を大切にしていると元気になります」と紹介しています。


通所リハビリは日帰りの活動です。家を出てから家に帰り着くまで、行動すべてをリハビリととらえています。モットーは「やってみたいことはやってみよう」。食事や入浴、レクリエーションはもちろんですが、それだけではなく興味のあることなど、やりたいことはやってみよう!というスタンスです。。
フラダンス、農園、麻雀、将棋、囲碁、料理教室などいろんなメニューがあります。
敷地内に、庭を耕した農園があり、利用者さんは野菜づくりや収穫を楽しんでいます。農園では、ジャガイモ、サツマイモ、タマネギ、人参、キュウリ、スイカ、トマト、ナス、イチゴ、ブルーベリーなどを育てています。スイカ割りを楽しんだり、ブルーベリーのジャムをつくったり、収穫した野菜を使って料理教室を開いたり。買い物にも一緒に出掛けます。


利用者さんがフラダンスの先生になり、コーラスのピアノ伴奏も利用者さんが担当します。教える人は仲間に教えて自信を取り戻し、参加する人はその時間に集中します。利用者さん同士が交流して、やりがいや生きがいを感じることが身体機能の回復にもつながります。

買い物や通院の付き添い、配食サービスなど在宅では使える介護サービスが多くあるので、そうしたサービスをフル活用してください。

ヘルスケアサービス部副部長を務める看護師の浅田久子(あさだ・ひさこ)さんは「認知症に対する理解を広げたい」と説明しています。


「認知症だから」というのではなく、人生の先輩として、人間として、おひとりおひとりの利用者さんに向き合い、かかわっています。ご本人の思いをかなえることを大切にします。利用者さんが好きなことができる自由な環境を保って生活リハビリに取り組めるように、私は看護師として、多彩な職種の職員と情報を共有して連携することを重視しています。
認知症サポーター養成講座が定着するなど認知症について学ぶ場は増えています。しかし、認知症は様々な病気がもたらす症状。『私たちと同じように、ひとりひとり色んな思いや考えを持って生活されており、やりたいことやできることはたくさんある』のですが、そのことが浸透できていないなど、課題はまだまだ少なくありません。地域社会に向けて認知症の理解を広げる地道な啓発活動を広げて、誰もが暮らしやすい社会になることを願っています。

施設長の医師、大野悦子(おおの・えつこ)さんは「24時間365日、すべての時間がリハビリです」と強調していました。


「自宅に帰りたい」と願っている利用者さんを支えることに徹し、24時間365日すべてはリハビリの時間と考えています。家に帰るために、利用者さんご本人の思いを最優先して、ご家族と担当職員がコミュニケーションを大切に支援の形を考えていきます。「認知症だから言ってもわからない」、だからご本人の思いを聞かずに決めていくという態度はよくありません。
ご家族は困ったらどんな段階でも助けを求めてほしい。症状が進んでから、ご相談を受けることも少なくありませんが、初期の段階で相談していただければ、できることは広がります。
家族会を毎月開くなど、ご家族との連携や地域社会とのつながりも大切にしています。

施設案内


パナソニック健康保険組合 松下介護老人保健施設はーとぴあ
所在地:大阪府守口市外島町5-55
電話:06-6992-8131
入所定員:100人(うち認知症フロア30人)
通所定員:80人

執筆:おれんじねっと記者  中尾卓司

1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。
1990年4月、毎日新聞入社。大阪社会部、外信部、ウィーン支局、社会部編集委員を経て、2020年3月、毎日新聞を早期退職。記者一筋に30年の経験を生かして、おれんじねっとの取材チームに加わり、記者活動を展開中。「つなぐ、つながる、つなげる」を掲げて新しい情報発信のかたちを提案している。
大阪大学箕面キャンパス「現代ジャーナリズム論」非常勤講師
関西大学社会学部「ジャーナリズム論」「時事問題研究2」非常勤講師