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認知症の人が店番する「てへぺろキッチンカー」出店を準備 大阪を元気に

2021年8月23日

認知症の当事者がホールスタッフを務める「てへぺろキッチン」を再開しよう——。

コロナ禍の最中でもできることを探ろうと、大阪市此花区の特別養護老人ホーム「ラヴィータ・ウーノ」施設長の中川春彦さんらが「てへぺろキッチンカー~まちがいが許されるお弁当屋さん~」プロジェクトを始めました。認知症の人と、コロナ禍で苦境に直面する飲食店の両方を応援したいとの願いを込めた取り組みです。先行き不透明なコロナ禍の情勢を見極めつつ、此花区と福島区で今秋、イベント開催を目指しています。

中川さんはこのプロジェクト代表となって、プロジェクトの目的や意義を広くアピールしています。「てへぺろキッチンカー~まちがいが許されるお弁当屋さん~」プロジェクトのため、キッチンカーを調達する資金集めとして7月にクラウドファンディングを始めました。目標額を越えないと達成できない「オールオアナッシング方式」を採用して、数日間で最初の目標額の50万円を達成しました。さらに、次の目標額100万円を設定し、クラウドファンディングを継続して協力を呼び掛けています。

逆転の発想「てへぺろキッチンカー」に

逆転の発想から「てへぺろキッチンカー」のアイデアが生まれました。

「てへぺろキッチン」とは、注文をまちがえても「てへっ」と照れ笑いを浮かべ、「ぺろっ」と舌を出すような高齢者の愛嬌のあるふるまいを客も一緒になって楽しみます。スタッフと客の間のそんな温かい関係を目指す食堂の呼び名です。

「てへぺろキッチン」を昨年春も開店する予定でした。しかし、コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で計画が中止になりました。

コロナ禍で「てへぺろキッチン」を再開できないなら、キッチンカーを用意してまちに飛び出せばいい。三密を避けながら、コロナ禍に苦しむ飲食店のお弁当を売ろう。そんな企画を立てました。

中川さんが「てへぺろキッチン」を始めたきっかけは、2017年秋に「注文をまちがえる料理店」というイベントを知ったことでした。

南青山のおしゃれなレストランを借りて、認知症を抱えた方たちがホールスタッフになる一大イベントでした。NHKのディレクターだった小国士朗さんが介護の現場を取材する過程で巡り合った心温まる現場をまちの中で再現しようと取り組んだ企画でした。

小国さんは認知症の人を介護するグループホームを取材して昼食をごちそうになりました。利用者が昼食を準備していると、昼食のメニューを「ハンバーグ」と聞いていたのに餃子が出てきました。それを誰も責めず、みんな、おいしく楽しみながら食べていました。「みんなが受け入れたら、まちがいはなくなる」。そんな展開に驚き、面白がって、小国さんは、イベント「注文をまちがえる料理店」を始めたのです。

福祉イベントをやるなら、参加する人の善意に頼るだけでは長続きしません。どこかに本物がないといけない、中川さんもそのことを意識し、認知症を抱えた方たちも参加者も本気で楽しめるイベントにと願い、「注文をまちがえる料理店」を大阪市此花区でやるならここしかない、と海辺のレストラン「Garden Terrace 舞洲キッチン」と交渉しました。

本人たちも、周囲も温かく 好評だった「てへぺろキッチン」

2019年4月と10月、2回にわたって、「Garden Terrace 舞洲キッチン」で、「てへぺろキッチン」を交渉の末、開くことができました。此花区社会福祉協議会や此花区内の他の福祉事業所とも協力して開いた「てへぺろキッチン」はとても好評を博しました。ホールスタッフを務めた認知症を抱えた方たちのいきいきとした表情が印象的でした。90歳代のスタッフが「私まだ新人ですねん」と笑いを誘うなど、温かい空気に包まれました。 2回目は80人ものお客の参加があり、レストランを完全貸し切りに。20人のホールスタッフのフォローを、「助け方マニュアル」なるものを作成し、接客前に渡しておくことで、お客さえもイベントスタッフに仕立ててしまうという主催者の目論見は見事に成功しました。まちがいがあっても、許し合い、認め合う。なんとも心地のいい空間となりました。

特別養護老人ホーム「ラヴィータ・ウーノ」は、「もう一つの人生がここから始まる」という願いを込めた施設名です。「『施設』でなく『住まい』でありたい」という思いをモットーにしています。利用者の「やりたい」気持ちを尊重しようと、万博公園に出かけたり、車いすの利用者とともに海水浴に出かけたり、大阪港の観光クルーズ船「サンタマリア号」に乗船したり。認知症であっても利用者の願いをかなえる活動を大切にしてきました。

認知症の人も 飲食店も プラスの発想で支えよう!

中川さんは、「認知症となって介護の必要な人の存在は、マイナスととらえられがちです。コロナ禍で飲食店もコロナ感染を広げる場とみなされマイナスに評価されます。マイナスとマイナスを掛け合わせることでプラスに転じたいと願うのです」と話しています。

中川さんは「多くの人にこのプロジェクトを伝えたい。ご協力とご支援をお願いします」と呼び掛けています。

「てへぺろキッチンカー~まちがいが許されるお弁当屋さん~」プロジェクトのクラウドファンディングは今、継続中です。8月末まで。

認知症高齢者も働いてええやん♪ 逆転発想のキッチンカー出店で大阪を盛げ上げたい!

執筆:おれんじねっと記者  中尾卓司

1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。
1990年4月、毎日新聞入社。大阪社会部、外信部、ウィーン支局、社会部編集委員を経て、2020年3月、毎日新聞を早期退職。記者一筋に30年の経験を生かして、おれんじねっとの取材チームに加わり、記者活動を展開中。「つなぐ、つながる、つなげる」を掲げて新しい情報発信のかたちを提案している。
大阪大学箕面キャンパス「現代ジャーナリズム論」非常勤講師
関西大学社会学部「ジャーナリズム論」「時事問題研究2」非常勤講師

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