高齢者の住宅について
現在、高齢者の方々の人数が増えてきておりますが、今後の住まいをどうするべきか悩まれている方も多いと思います。
要介護になる高齢者の方であっても在宅でそのまま過ごしたいと考えておられる方も多いと思います。
高齢になれば、有料老人ホームを利用される方もいますが、他方、2011年の法改正によって、サービス付き高齢者向け住宅というものが誕生しています。これは高齢者が安心して暮らすための住宅であり、老後の生活を充実させつつ、介護などの問題を解消したい人に向いています。
双方の制度についてその概要をまとめました。
有料老人ホーム
老人福祉法第29条第1項の規定に基づき、老人の福祉を図るため、その心身の健康保持及び生活の安定のために必要な措置として設けられている制度となります。
老人を入居させ、定められたサービスのうち、いずれかのサービス(複数も可)を提供している施設となり、設置に当たっては都道府県知事等への届出が必要です。
介護保険制度における「特定施設入居者生活介護」として、介護保険の給付対象に位置付けられていますが、設置の際の届出とは別に、一定の基準を満たした上で、都道府県知事の指定を受けなければならないとされています。
有料老人ホームの契約形式は、終身利用権方式となることが多く、介護サービス費用は、介護度に合わせて定額で支払うことになり、タイムスケジュール(食事や入浴など)なども定められています。
有料老人ホームの種類として、
- 介護付有料老人ホーム
介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設
- 住宅型有料老人ホーム
生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設
- 健康型有料老人ホーム
食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設
などがあります。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者(60歳以上の者または要介護・要支援認定を受けている者)が賃貸借契約を締結して賃貸住宅として利用するものとなります。
あくまで個別の賃貸借契約であり、これに介護や生活支援など必要なサービスを選択して生活していくことになります。介護サービス費用は、利用した分だけ支払うことになり、生活も自宅と同様の暮らしを維持することが可能となります。
また、下記の様々な基準が定められています。
1 まず登録基準として、下記の基準が要件となっています。
①ハード面
床面積は原則25㎡以上等
②サービス面
サービスを提供すること(少なくとも安否確認・生活相談サービスを提供)
③契約内容
- 長期入院を理由に事業者から一方的に解約できないなど、居住の安定が図られた契約であること
- 敷金、家賃、サービス対価以外の金銭を徴収しないこと
→権利金その他の金銭を受領しない契約であることが基準となります。
- 前払金に関して入居者保護が図られていること
→サービス付き高齢者向け住宅の工事完了前に、敷金及び家賃等の前払金を受領しないものであることとされています。
2 また、登録事業者の義務として、下記の義務が課されています。
- 契約締結前に、サービス内容や費用について書面を交付して説明すること
- 登録事項の情報開示
- 誤解を招くような広告の禁止
- 契約に従ってサービスを提供すること
3 さらに、行政による指導も設けられています。
- 報告徴収、事務所や登録住宅への立入検査
- 業務に関する是正指示
- 指示違反、登録基準不適合の場合の登録取消し
サービス付き高齢者向け住宅の利用の増加と問題点
比較的介護度が軽い方である程度自立されているものの、自宅で過ごすことに不安を覚えていらっしゃる方などにとっては、自由度の高い暮らしができるサービス付き高齢者向け住宅が利用しやすいといえます。また、入居費用も、老人ホームに比べて低額であることが多いこともあり、実際その利用者も増加しています。
しかし、上記で述べたようにサービス内容の事前説明や誤解を招くような広告が禁止されているにもかかわらず、十分に対応出来ていない施設も存在します。
具体的には、外部サービスの利用や看取りが必要になった場合の対応等について事前説明が行われていなかったり、実際のサービス内容が、契約書の記載や契約時に聞いた話と異なるといった場合などがあります。
また、状況把握サービス等の提供に当たりプライバシーの確保がどこまでされるのか、緊急時対応の体制が十分に確保されているのかなども問題点となります。
まとめ
サービス付き高齢者向け住宅の利用を考えておられる方も多くおられると思いますが、サービス付き高齢者向け住宅ならではの問題点を把握し、事前に十分に説明を受け検討されたうえ、高齢者向けの住宅を上手に活用していただきたいと思います。
用語解説
「有料老人ホーム」
根拠法は老人福祉法第29条となる高齢者のための住居。①入浴、排せつ又は食事の介護、②食事の提供、③選択、掃除等の家事、④健康管理のいずれかをする事業を行う施設となります。
「サービス付き高齢者向け住宅」
根拠法は高齢者住まい法第5条となる高齢者のための住居。状況把握サービス、生活相談サービス等の復氏サービスを提供する住宅となります。
執筆者:たかぎし総合法律事務所 弁護士 高岸佳子
京都大学法科大学院卒業後、2015年弁護士登録。 企業内弁護士も経験し、相続、離婚、消費者問題、刑事事件、企業法務、いじめ問題などを扱う。趣味:日本酒(純米酒)。 |