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マイカーのない生活をお試し「運転免許証返納体験」~ 高齢ドライバーの交通事故を減らす取り組み。大阪府警の担当者に聞く

高齢ドライバーによる交通事故を減らす取り組みが強化されています。
来年(2022年)施行される改正道路交通法では、一定の違反歴がある高齢ドライバーには、運転技能検査が義務づけられます。大阪府警は、高齢ドライバーに向けた独自の「運転免許証返納体験」を始めました。

大阪府警本部交通部運転免許課で啓発活動を続ける高齢運転者等支援担当の田中努警視に、その取り組みを聞きました。

高齢ドライバーの交通事故を減らすため、どのように注意を喚起されていますか。

アクセルとブレーキの踏み間違いなどによる高齢ドライバーの事故は社会的な反響が大きく大ニュースとなります。いったん交通事故が起きると、取り返しがつきません。
人生の終盤で、ご本人もご家族も後悔することがないように、認知症の疑いがあったり、身体機能に不安があったりする方には運転免許証の自主返納をお勧めします。
まだ免許証を持ち続ける人には、安全運転に徹する方法をお伝えします。交通事故の件数は大きく減る中、高齢者による事故の減り方のペースは遅く、高齢ドライバーによる交通事故の割合は高くなっていますので、高齢ドライバーの事故を減らす啓発活動に力を注いでいます。

改正道路交通法が来年6月までに施行されると、どのように変わりますか。

運転免許証の更新の通知時点で過去3年間に一定の違反がある75歳以上の高齢ドライバーには免許更新時に、運転技能検査が新しく導入されることになっています。
実際に車を運転する運転技能検査に合格できないと、運転免許証を更新できなくなります。

安全運転サポート車等の限定免許も始まります。安全運転サポート車には、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い・急発進の抑制装置など先進安全技術を備えた自動車が想定されています。
高齢ドライバーが安全な運転の継続をするための選択肢が増えると考えてください。

現在も75歳以上の方は免許更新の際、認知機能検査があり、検査の結果「認知症のおそれあり」の人は医師の診断を受けていただきます。
免許更新の時期に関係なく、一定の違反をした75歳以上の方には、臨時認知機能検査が求められます。大阪府内だけで臨時認知機能検査は年間1万件近く実施されています。

大阪府警が独自に始めた「運転免許証返納体験」を説明してください。

運転免許証の返納を検討しても「生活に支障があるかもしれない」と決断できないという方が少なくありません。
運転免許証返納体験は、マイカーを手放す生活と免許証返納をお試し体験していただく取り組みです。
コロナ禍のため、人が集まる啓発イベントの実施は困難ですが、この返納体験ならば、チェックシートを郵送等で受け取ることにより個別に取り組むことができます。

20日間のチャレンジ期間に、バスや自転車等を活用して車の運転を減らして、車の運転が本当に必要なのか、返納後の生活で不便・不具合な点は何か、を体験者とご家族に確認していただく仕組みです。
チェックシートの「運転しなかった」「運転した」の欄に毎日チェックを入れて、運転した場合は、行先や距離を記録します。昨年試験的に導入して好評でしたので、今年4月から大阪府内の運転免許試験場や各警察署に本格導入しております。

「マイカーがなくても生活できることが分かった」「返納を考えるきっかけになった」といった反響があり、体験した後に運転免許証を返納した方もおられました。

体験者には返信されたチェックシートを基に「夜間の運転は控えましょう」等といった、運転行動と今後についてのメッセージを添えたアドバイスカードをお渡しして、それぞれに応じた安全指導を行っております。

自主返納のメリットをどのように説明されますか。

悲惨な交通事故を未然に防止できます。ご自身が加害者となる交通事故を起こすと、取り返しがつきません。交通事故に巻き込まれた被害者も、事故を起こした加害者も、つらい思いに直面することになります。

免許証を返納し申請していただくことで、公的な身分証明書として生涯使える運転経歴証明書を受け取れます。サポート企業の特典もあり、運転経歴証明書を提示すると、タクシーの乗車運賃割引や電動自転車の購入割引などさまざまなサービスを受けることができます。特典やサービスを一覧にしたパンフレットを配布しています。

自主返納を検討できるように、車の維持費とタクシー利用を比較して、以下のような情報も提供しています。

「車(コンパクトカー)の維持に年間約20万円。駐車場やガソリン代も合わせると年間約45万円もかかります。タクシー(約5km、約1800円)を利用すると250回も乗ることができます」

▼運転経歴証明書で受けられるサービスは下記サイトをご参照ください。

運転免許証を自主返納されている人はどのくらい、いますか。

大阪府内で昨年2020年に自主返納した人は、3万9270人です。そのうち、65歳以上は、3万6118人です。更新時期に更新せずに運転免許証を失効される方もいます。

65歳以上の免許人口は、91万8221人です。

重点的な取り組みをお話しください。

運転免許証の自主返納の促進、高齢ドライバーに対する啓発活動、安全運転の相談対応、安全運転サポート車の普及に、取り組んでいます。

コロナ禍の前は、安全運転サポート車の試乗体験も実施していました。現在、コロナ禍のために啓発イベントを開催することが困難ですので、各自動車メーカーの協力を得て、安全運転サポート車の機能を説明する動画を作成して啓発しています。また専門学校の協力を得て、学生の若い感性を生かした自主返納促進の動画やチラシ等を作成するなど、さまざまな工夫を重ねています。

運転免許証の返納を悩んでいる人に、アドバイスをお願いします。

年齢を重ねると、認知機能や身体能力は低下します。認知機能が低下した状態で運転することは、ご本人が思うより危険です。高齢や認知症が疑われるため運転に不安を覚える方には、運転免許証の自主返納をお願いします。
まだ、免許証を持ち続ける方には、安全に運転できる選択肢を紹介しています。

ご家族から、「返納してほしいけれど本人が拒んでいます」といった相談も寄せられます。ご家族で運転免許のことについて話し合う機会を持ってください。ご家族で対応が難しい場合は、警察の相談窓口を活用してください。

全国共有の安全運転相談ダイヤルがあります。安全運転相談ダイヤル「#8080(シャープ ハレバレ)」と覚えてください。
状況に応じて、具体的な対応を説明させていただきます。お気軽に相談してください。

法改正で変わる免許更新手続きについての周知も含めて、これからも高齢ドライバーの交通事故を減らす取り組みを進めていきます。

高齢ドライバーによる交通事故の割合 20.1%

大阪府内の交通事故件数は、4万7361件(2011年)から2万3965件(2020年)と10年間で半減した。
一方、高齢ドライバーの事故は同じ10年間で6201件から4814件と約22%の減少にとどまり、事故全体に占める割合は10年間で13.1%から20.1%と増加した。

高齢ドライバーの免許更新に運転技能検査

改正道路交通法で、75歳以上の高齢ドライバーが一定の違反歴がある場合、運転免許証の更新時に、運転技能検査の受検が導入される。
一定の基準に達しないと運転免許証の更新ができない。来年6月までに施行される予定で、施行時期など詳細は今後決まる。

取材先 : 大阪府警察本部  交通部運転免許課

執筆:おれんじねっと記者  中尾卓司

1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。
1990年4月、毎日新聞入社。大阪社会部、外信部、ウィーン支局、社会部編集委員を経て、2020年3月、毎日新聞を早期退職。記者一筋に30年の経験を生かして、おれんじねっとの取材チームに加わり、記者活動を展開中。「つなぐ、つながる、つなげる」を掲げて新しい情報発信のかたちを提案している。
大阪大学箕面キャンパス「現代ジャーナリズム論」非常勤講師
関西大学社会学部「ジャーナリズム論」「時事問題研究2」非常勤講師

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