介護老人保健施設グリーンライフ ~利用者を第一に、小さな取り組みを積み重ねて~
大阪市城東区の介護老人保健施設グリーンライフは、住み慣れた地域で暮らし続けられる利用者の喜びを大切にしています。利用者を第一に考えるチームの力で認知症ケアと在宅復帰に取り組んでいます。療養サービス部科長の春日美和(かすが・みわ)さんにお話を聞きました。
施設の特色を教えてください。
利用者さんが気持ちよく過ごせるように、職員みんなでいい介護サービスを目指しています。職員一人一人がやれることをきちんとやる。「やってみよう」といろんなことを試す。そんな雰囲気があり、職員のコミュニケーションも活発で、チームの連携はうまくいっています。今は、コロナ対策のために控えていますが、外出や外泊、買い物にも、よく出かけていました。
春日さんのお仕事や役割をお話しください。
認知症ケア専門士として、認知症ケアや介護技術向上プロジェクトを担当しています。職員の声の掛け方ひとつで利用者さんの反応が変わり、落ち着かれます。
福祉科のある高校を出て介護福祉士の資格を取得、介護の現場で働いてきました。最初は自信がありませんでしたが、「春日さん」と名前で呼ばれて、「春日さん、トイレ連れて行って」と声を掛けてもらえるようになりました。職場の上司から「排泄の用事は誰にでも頼めるわけではない。利用者さんから、信頼されている証拠」と教えられました。これが介護のやりがいだと感じるようになりました。利用者さんには、最後に笑って「また来るね」と声掛けすることを心掛けています。
利用者さんとは、どんなエピソードがありますか。
ご家族と会話が少ない男性の利用者さんがいらっしゃいました。こちらから、ご家族に話しかけることを繰り返し、ご家族から「おれ、誰かわかるか。元気か?」とご本人にお話しされるようになりました。グリーンライフにて最期を看取った後、「みなさんのおかげです」とお礼の手紙をいただきました。時間がかかっても、できることをきちんとやろうと心掛けています。
音楽を流したり、歌ったり、折り紙を折ったり。日々の活動を通じて、ご本人の過去を知る努力を重ねます。「こんなことをやったら落ち着かれたよ」と多職種で情報を共有して、その人に合う方法を探ります。入所から1、2カ月かけて環境に慣れて落ち着かれると、職員同士で「やったね。できたね」と確認し合います。
これから、どんなことに取り組みたいですか。
食事、トイレ、入浴、そして今、コロナ対策の消毒……とやることは多く、利用者さんに付き添える時間は限られます。それでも、一人一人にもっときめ細かくケアすることに力を注ぎたいと考えています。
一人でも大声を出す方がいると、他の方までその雰囲気が伝わり、そわそわする方が増えます。まずは、相手を知るところから。支援相談員が聞き取った生活暦や家族関係の情報をヒントに、利用者さんの性格やくせを把握します。最初からうまくはいきません。時間がかかるのは当たり前です。折り紙やボール遊び、歌なら演歌なのか童謡なのか。さまざまなレクリエーションの機会に、「この活動には興味を持たれる」ということに注目します。
利用者さんを深く知る地道なプロセスを大切にしたいと思っています。
おれんじねっとを通じて、伝えたいことをお願いします。
よりよい認知症ケアを提供するためには、小さな取り組みの積み重ねが大事です。そして、ケアに当たる現場のスタッフが健康で元気であることが欠かせません。コロナ禍で大変なことは少なくないですが、「がんばっていきましょう」と伝えたいと思います。
事務長の奥田寛之(おくだ・ひろゆき)さんも、病院のソーシャルワーカーの経験があり、現場の職員と一緒になって認知症ケアに向き合っています。
高齢者同士が助け合う「老老介護」の問題など、自宅で悩んでいる方はまだまだいらっしゃいます。私たちとつながることができれば、きっと何らかの支援ができます。困っている方が駆け込めるように、私たちの存在や窓口、制度を知っていただきたい。入りやすい地元のスーパーマーケットのように、気軽に私たちを使ってほしい。どんなに小さな悩み事を相談にこられた方でも、その「SOS」を受け止められる存在でありたいと考えています。
施設紹介
社会医療法人大道会 介護老人保健施設グリーンライフ
所在地:大阪市城東区東中浜9-3-9
電話:06-6965-0666
入所定員:100人(短期入所含む)
通所定員:27人
執筆:おれんじねっと記者 中尾卓司
1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。 |