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【健ラボ通信vol6】認知症になっても安心して暮らせるまちに 認知症サポーター養成講座をおすすめします

2021年11月30日

高齢者の5人に1人が認知症になる時代が近いといわれるほど、認知症は誰にも身近な課題です。認知症サポーター養成講座は、認知症の当事者を温かい目で見守る人づくりを目指して各地で開かれます。
「人生の最後まで自分らしくありたい」。そんな願いを支える人が増えたら認知症になっても安心して暮らせるまちになります。
養成講座を受講した健康ラボステーションの佐光瑞穂さん、大原奈緒さん、樋口遥香さんにアドバイスを聞きました。

認知症サポーターは、広く知られるようになりましたか。

樋口さん 誰でも認知症サポーター養成講座を受講できますので、受けるハードルはかなり低いようです。介護の仕事に携わる人はみなさん、受けているでしょうが一般の人はまだ、認知症サポーターを知らない人も少なくないと思います。

オレンジリングを見て「それは、何?」と尋ねられます。オレンジは認知症支援のシンボルカラーであり、オレンジリングは、認知症サポーター養成講座を受けた証です。オレンジリングは、認知症の当事者や家族を応援しますというサインと考えてください。

「話を聞くことはできます。一緒にサポートします」という意思表示になります。

身近な経験はありますか。

大原さん 私は2年前に、認知症サポーター養成講座を受講しました。ちょうど、祖父が認知症と診断された時期でした。

認知症の症状を学んだことは、祖父との関係づくりに役立ちました。本人ができることを奪ってしまうことは避けようと家族に伝えました。

私は管理栄養士なので食事のサポートができないかを考えました。おいしい味付けを工夫したり、珍しい食材を使ったり。アルツハイマー型認知症になって、大好きな野球のテレビ中継に関心を示さなくなるとか、祖父の趣味や性格が変わったように見えました。

家族の名前を言えなくなって、娘に当たる私の母親も戸惑っていました。認知症の知識があるのとないのとでは、本人の変化の受け入れやすさも変わってくると思います。

佐光さん 私は大学生のとき、社会福祉学科で高齢者福祉を学ぶ一環として、認知症サポーター養成講座を受講しました。

認知症の初期段階では、ご本人も、もの忘れによる失敗に混乱し、不安やつらさを感じていると学びました。今までできていたことができなくなる不安や恐怖で落ち込むこともある、認知症の当事者に対する接し方も学びました。

認知症カフェにも通い、当事者の方と接する機会もありました。そこでは、「この人、認知症だから」と身構えないでください、と教えられました。そのことを知るだけでも、当事者の方との向き合い方が変わります。

認知症サポーターとは

認知症サポーターは、認知症について正しく理解し、認知症の人や家族を温かい目で見守る「応援者」です。

認知症とは

「認知症」は、脳の病気や障害などさまざまな原因により、認知機能が低下し、日常生活に支障が出てくる状態を指します。

認知症には、脳の血管が詰まる、脳の細胞が死ぬなど、原因となる病気があります。

認知症サポーター養成講座を受講して、変化はありましたか。

樋口さん 過去の健康測定会で、睡眠不足に悩まれていた方がいました。親御さんが認知症になってどうしたらいいかわからないと介護の問題に悩んでおられました。測定の結果に響くほど深刻そうでした。話をしながら泣き出してしまいました。「オレンジリングを着けた人を見つけてください。きっとサポートしてくれます」とお伝えしました。

そういうお話ができたことは受講した成果です。助け合える相手がいることが大切です。

佐光さん 周囲の人には頼りたくない、とかたくなになるタイプの人がいらっしゃいます。学生時代に実習で出会った男性のケースでは、飲食店の仕事も、奥さんの介護も懸命に取り組んで「自分がやるしかない」と頑張っておられました。

正しい理解がないと認知症のご家族の存在を隠しがちになって、家族は周囲から孤立します。そして外出もせず、介護や福祉のサービスを敬遠してしまいます。

認知症サポーターが近くにいると、心を開いていただくきっかけになるかもしれません。

小学校や中学校にも、広がっているそうですね。

佐光さん 中学生向けの認知症サポーター養成講座もあります。

防災がらみの話で、社会人や大学生は、日中地域にいないことが多く、いざというときに地域で頼りになるのは、中学生だと聞いたことがあります。認知症でも、中学生がきっと役に立ってくれます。まさに地域密着です。学校で学んだことを実践してみようとか。やんちゃな中学生がご年配の人にやさしくしていたら、ほほえましいですよね。

サポーター養成講座をどうやって広げたらいいでしょうか。

樋口さん 「私たち、受けたよ」「私も受けました」と周囲に伝え合って広げることでしょうか。講座を受けたいと思う人を増やす。そんな雰囲気が広がるといいな、と思います。

認知症の当事者や家族は孤立しがちです。心のよりどころとなる存在が近くにいることで何かが変わります。一緒にサポートできますよ、とお伝えして、助け合いやコミュニケーションのきっかけが生まれるといいですね。

佐光さん 認知症の当事者になる瞬間は、突然やってきます。周囲に頼れる人がいないと、一人で介護を抱え込むことになりかねません。

自分の身内にちょっとした異変が起きた際、知識があると早期発見につながると感じました。認知症の兆候に気づくことができると、打つ手も出てきます。

地域で多くの人が受講したら、地域みんなで支え合える関係を築けます。

大原さん 認知症の知識があると、家族が認知症になったときに備えることができて、動きを取りやすくなります。養成講座で認知症カフェの存在を知りました。交流の場や憩いの場から、家族同士の相談の場が生まれます。

ご家族の方が学ぶ場として認知症サポーター養成講座を活用してください。いろんな世代の人が当たり前のように受講すると、きっと地域は変わっていきます。

認知症サポーターに期待されること

① 認知症に対して正しく理解し、偏見をもたない
② 認知症の人や家族に対して温かい目で見守る
③ 自分なりにできる簡単なことから実践する

認知症の人に接する基本姿勢

① 驚かせない
② 急がせない
③ 自尊心を傷つけない

具体的な対応 七つのポイント

・まずは見守る
・余裕をもって対応する
・声を掛けるときは一人で
・後ろから声を掛けない
・相手に目線を合わせてやさしい口調で
・おだやかに、はっきりと話す
・相手のことばに耳を傾けて、ゆっくりと対応する

認知症サポーターキャラバン

大阪府内の認知症サポーター養成講座の自治体事務局

健康ラボステーションの活動を紹介するシリーズ「健ラボ通信」。

Vol.1:「楽しみながら病気の予防を」

Vol.2:「食」の楽しみ提案 健康づくりをアドバイス 管理栄養士

Vol.3:まちの「かかりつけ薬局」に 健康づくりに薬剤師ができること

Vol.4:コロナ禍の知恵 オンラインで健康づくりをアドバイス

Vol.5:画像やデータで体を〝見える化〟 健康測定を体験した

組織案内

認定特定非営利活動法人 健康ラボステーション
所 在 地:大阪市北区天満橋1-8-30  OAPタワー10階1005号
電話番号:06-6948-8015

執筆:おれんじねっと記者  中尾卓司

1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。
1990年4月、毎日新聞入社。大阪社会部、外信部、ウィーン支局、社会部編集委員を経て、2020年3月、毎日新聞を早期退職。記者一筋に30年の経験を生かして、おれんじねっとの取材チームに加わり、記者活動を展開中。「つなぐ、つながる、つなげる」を掲げて新しい情報発信のかたちを提案している。
大阪大学箕面キャンパス「現代ジャーナリズム論」非常勤講師
関西大学社会学部「ジャーナリズム論」「時事問題研究2」非常勤講師

認知症の基礎知識

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