認知症のうつ状態とうつ病の違いとは?
認知症は記憶障害や日時が分からなくなる見当識の障害が有名な病気ですが、気分の落ち込みや意欲低下などうつ病と似た症状も見られます。
認知症のうつ状態とうつ病は、実は似ているようでその特徴は異なると言われています。
今回は認知症のうつ状態とうつ病の違いについて解説するので、高齢者への接し方の参考にしてみてください。
認知症のBPSD
認知症の症状は、記憶障害などの認知機能の低下による中核症状と、中核症状に加えて心身や環境の影響を受けて生じる周辺症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)の2種類に分けられます。
BPSDのうつ状態は、以下のような症状が見られやすいです。
- 気分の落ち込み
- 不眠
- 意欲の低下
- 無気力な感覚が強まる
- 不安や焦りが強まる
など
このようなうつ状態は、記憶力の低下など認知機能の衰えから生じることもあることをまず知っておきましょう。
認知症のうつ状態は、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症で見られやすい傾向があります。
高齢者のうつ病と認知症のうつ病
認知症のうつ状態と、高齢者の気分が落ち込むうつ病は、同じ気分の落ち込みでも異なる特徴があります。
本記事では症状の出方、特徴、進行の3点について解説しますが、中には2つの病気が合併する場合もあることも覚えておきましょう。
症状の出方
うつ病の場合は、気分の落ち込みや活動意欲の低下など気分の障害が特徴的です。
「自分はダメな人間だ」「こんな自分では今後どうすればいいか分からない」など自分を責めてしまったり、「もう消えたい」などと希死念慮を感じてしまったりすることもあります。
一方認知症の場合は認知機能の低下が主症状であり、自分の言動そのものを忘れてしまう記憶障害が特徴的であるため、自責や希死念慮を抱くほどの落ち込みは少ないと言えます。
症状の特徴
うつ病の場合は、1日の中でも気分の浮き沈みがあり、身体に異常がないにも関わらず頭痛や腹痛などの体調不良が見られやすいです。
不安の強さから、貧しくなることや病状が悪化することへの過度な心配も強まりやすく、やる気が出ずに動けない場合も多く見られます。
認知症の場合、気分の波は特にないですが、「物を盗られた」「人が家に入ってきた」などの被害妄想が強まる特徴があります。
また、穏やかだった性格の人が急に攻撃的な性格に変わってしまうことも特徴的です。
症状の進行
症状の進行具合にも違いがあり、うつ病の場合はライフイベントなどの出来事がきっかけとなり発症するのに対し、認知症は加齢とともにゆっくりと進行していきます。
認知症の初期は症状が見え隠れするため気づきにくいですが、落ち込む様子や突然の体調不良が確認できる場合はうつ病の可能性があるでしょう。
うつ状態への対応
認知症の中核症状の改善は困難ですが、BPSDであるうつ状態やうつ病は改善可能な症状です。
うつ状態への対応としては、薬に頼る以外に食事や睡眠、日中の活動など生活リズムをきちんと整え、散歩など軽めの運動を取り入れることが必要になります。
高齢者のうつ病はコミュニケーション不足や孤独感からも生じやすいため、コミュニティを作ってお話する時間を確保したり、気分を落ち着かせる神経伝達物質の「セロトニン」を分泌するため朝に日光を浴びたりすることも有効です。
家族の介護や死別、退職など気分が落ち込むきっかけが考えられる場合は、心のケアも重要です。
加齢や気分の落ち込みから判断力や理解力、思考力が低下していることが多いため、根掘り葉掘り話を聴こうとせず、共感的な態度が望ましいでしょう。
まとめ
認知症のうつ状態も高齢者のうつ病も、一見同じように見えて特徴は異なります。
認知症 | うつ病 | |
---|---|---|
症状の出方 | 記憶障害により自責や希死念慮は少ない | 落ち込みから自責や希死念慮がある |
症状の特徴 | 気分の変化は特になし 被害妄想、攻撃的な性格 |
気分の浮き沈み 身体の体調不良 |
症状の進行 | ゆるやかに進行 | きっかけから発症してわかりやすい |
気分の落ち込みや不安は改善可能な症状であるため、生活リズムの見直しやストレスフルな出来事に共感し、高齢者の負担を少しでも和らげてみましょう。