「家に帰りたい」は危険信号!? 〜早期発見のために〜
どんな症状においても、早期発見ができるに越したことはありません。
そのためには、周りの環境が大切だと言えます。自分自身では気づかない変化を、家族や周りの人が、いち早く「いつもと違う」と思ってくれるかが重要なのです。
では、認知症の早期発見のサインは何なのか?
そのパターンを事前に知っておくことで、「もしかしたら?」といち早く気付けるようになるでしょう。
認知症の症状
自分が誰なのかわからない、家族のことを忘れてしまったなどと、代表的に挙げられている症状には気づきやすいものです。
しかし、それで気づいたのであれば、遅すぎるケースがほとんどです。
それは、認知症を疑わせるサインを、日常の行動として見逃してしまっていたからです。
認知症の症状は大きく「認知機能障害」と「行動・心理症状(BPSD)」に分けられます。
多くの人が認識している認知症の症状とは、ほとんどが認知機能障害に当てはまるものです。しかし、気づくべきポイントの殆どが行動・心理症状にあるのです。
認知機能障害は見逃しにくい
ほぼすべての認知症の人に見られるのが、この知機能障害です。
例えば、記憶障害であったり失語、失認などがこれに当てはまります。
例えば、今日がいつなのか、自分がいている場所がどこなのかがわからなくなるのは見当識障害に当てはまります。
この症状が現れた時、多くの人が「おかしいな」と気づきます。
他にも、上着を下半身に着ようとする症状を失行といい、こちらも認知機能障害に当てはまります。
認知機能障害は、久しぶりに会った家族でも「おや?」と気づきやすいため、注視せずとも見落としにくいです。
BPSDを視野に入れておく
著明な認知機能障害が現れる前に、どうやって気付けば良いのか。それには行動・心理症状(BPSD : Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)を知ることが重要です。
行動・心理症状は、環境や身体、またはケア等の要因に左右されるため、すべての人にその症状が起こるわけでは有りません。
例えば、昼夜逆転や不眠も行動・心理症状として挙げられます。
これをいきなり認知症の症状ではないかと結びつけるのは難しいはずです。しかし、知っていれば「おや?」となるはずです。
このように、生活のなかに症状がさり気なく潜んでいるのです。
また、帰宅願望も行動・心理症状の一つとして挙げられます。
買い物に出かけたはいいものの、「帰りたい」「家に戻ろう」と執拗に言い出した際は、認知症の前兆かも知れません。
頑なに否定するのではなく、「今日は帰りましょう」「これだけ買って帰りましょう」などと優しく声掛けをすることが大切です。
他にも行動・心理症状はたくさん有ります。
中でも、実際の危害があるような「暴力」や「弄便(便をいじる)」、おかしいと気づきやすい「徘徊」や「異食」も含まれています。
これらは、認知機能障害と同じように比較的気づきやすい症状に当たります。
だからこそ、それに隠れてしまっているような気づきにくい症状を知っておくことが、早期発見のためには必要です。
何事にも予防、早期発見のために必要なのは「知ること」です。
情報を得て、それを自身の生活に照らし合わせることが、日本の超高齢化社会ではより求められていると言えます。
監修大阪市立大学大学院医学研究科 神経精神医学 講師 内田 健太郎先生 日本認知症学会専門医 |