【事後手続き】「看取り」に伴う備え~事後手続きについて~
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人生の最期を自宅で迎える「看取り(みとり)」を希望する方が増えているようです。
たとえば、大阪市が平成29年3月に実施された一人暮らし高齢者実態調査の報告によると、「万一、あなたが治る見込みのない病気になった場合、人生の最後をどこで過ごしたいですか。」という問いに対して、約42%が「自宅」と回答しています。
また、国も「看取り」に対して積極的で、たとえば、厚生労働省は、終末期医療に関し治療方針の決定手順などを定めた国のガイドラインを、現在は主に病院を念頭に置いているため、自宅や施設での看取りに活用できるよう見直す、といった動きがあります。
「看取り」を希望する人が増え、国も積極的ではあるが・・・
ところが、現在の状況のままで多くの人が「看取り」を選択し、かつ、国も「看取り」を積極的に勧めた場合、問題が生じるのではないかと思われます。「看取り」の後、死後の手当てが全くされていない点です。
先に記載したとおり多くの高齢者が「看取り」を希望していながら、同じ調査によると46.2%の高齢者が、終末期の過ごし方について「誰とも話し合ったことがない。」と回答しています。
ほかにも、大阪市のある地域包括支援センターが実施したアンケートでも、高齢者に対して「死後のこと」を尋ねたところ、「明確な返答がなかった」、「葬儀、死後の事務の話は、本人に拒否される」という回答が寄せられています。
「看取り」をすると、死亡届を出すことができない。
このような状況で親族とも疎遠な高齢者が「看取り」を選択した場合、死後に複数の問題が生じます。 まず、死亡届を出すことができません。死亡届の提出義務者は同居の親族、その他の同居者及び家主・地主又は家屋若しくは土地の管理人で(戸籍法87条1項)、届出権利者はその他の親族と成年後見人、保佐人、補助人及び任意後見人(以下「後見人等」という。)ですが(同2項)、亡くなった方が一人暮らしで、しかも、自宅が持ち家又は分譲マンションである場合、1項の提出義務者は誰もいません。
さらに、親族とも疎遠で後見人等もいない場合、親族が誰も死亡届を出してくれなければ、当該高齢者の死亡届が出されない状況が続いてしまいます。その結果、火葬の許可(墓地、埋葬等に関する法律5条)が滞り、戸籍・住民票が残っているなどの問題が生じます(※:最終的には自治体・法務局が調整し死亡記載を行うが、これには大変手間がかかります。戸籍法44条3項、24条2項)。
一人暮らしの高齢者は、死後事務委任契約のご検討を
この問題に対処するために、終末期を迎える前、「看取り」を選択する前に、火葬、供養、行政官庁等への諸届等に関する事務を第三者に委任する死後事務委任契約を締結することが考えられます。
これを締結すれば、当該第三者が受託した死後事務を行うことができますし、また、副次的に委託者・本人の生前から、いわゆる専門職の職務上請求によって委託者・本人の親族調査を行い、判明した親族に対して終末期の過ごし方などについて話し合うことを促すこともできると思われます。
あわせて、任意後見契約を締結しておけば、任意後見人として死亡届を提出することができます。親族とも疎遠でひとり暮らしの高齢者が「看取り」を選択する場合には、死後事務委任契約及び任意後見契約が必須であると思われます。
今後、「看取り」を希望する人へは、死後事務委任契約・任意後見契約をご検討されることをお勧めいたします。
用語解説
- 「看取り」とは:
「看取り」とは無理な延命治療などは行わず、高齢者が自然に亡くなられるまでの過程を見守ることをいいます。もともとは、病人の世話をすることや、看病することを指す言葉でしたが、最近では人生の最後の看取りのことを「看取り」と呼びます。 - 死後事務委任契約とは:
人が死亡すると、葬儀の主宰、役所への行政手続き、病院代等の清算、年金手続き、クレジットカードの解約など、様々な事務手続きが発生します。一般的に、これら事務手続きは家族や親族が行ってくれますが、身寄りがいない方の場合には誰もその作業をしてくれる人はいません。このように、死後の煩雑な事務手続きを生前にうちに誰かへ委任しておくことができる制度が「死後事務委任契約」です。
作成:中尾法律事務所 弁護士 中尾 太郎
大阪弁護士会所属。同会高齢者・障害者総合支援センター 介護福祉部会長。 |