「介護施設の入居者がファッションショーのモデルに」
以前、『10才若返り』をコンセプトに50才以上の一般の方を対象にしたシニアファッションショーを開催しました。
このイベントのコンセプトは、普通に暮らす一般の方がファッションショーの舞台にたって、好きな衣装に身を包み、いつもと違う非日常の体験を楽しんでほしい、と企画して開催したイベントです。
応募条件はたった2つだけで、50歳以上で、プロのモデルさんでなければ誰でも申し込めるというものでした。
新聞やシニア向けのフリーペーパーでモデル募集をしたところ、社会福祉法人きらくえんの「けま喜楽苑」にご入居されているご高齢者2名が「ぜひ出演したい」とのことで、けま喜楽苑のスタッフ様からご連絡を頂きました。
介護施設の入居者の方が出演されるイメージをしていなかったため、お断りしようか迷ったのですが「50歳以上ですし、プロのモデルでもありません!」とのことで熱心にお話頂いたためぜひ出演いただきたいと思ったのですが介護ができるイベントスタッフを用意していなく、「施設のスタッフさんがお連れいただいて、サポート頂けるならぜひご出演ください」とお伝えしたところ、「介護の職員がお連れして終日付きそいますので」ということで出演されることになりました。
50歳以上のファッションショーということで、いろんな方が出演されたのですが、施設に入居されている要介護の方は、このけま喜楽苑の入居者様お二人だけでした。
他のお若い50代のモデルの方々も喜んで頂いたのですが、特に施設のご入居者二人はその方々以上に非常に楽しんでいただき、その時の写真を良い想い出としてお部屋に沢山飾ってくださっているとのことでした。
出演されたモデルのご家族からも「家族の100年の宝物の想い出になりました!!」と嬉しいメールを頂いたのも嬉しかったのを覚えています。
介護施設の人材不足が叫ばれる中、なぜ外部の結婚式場に入居者をお連れしてファッションショーのモデルとして、施設の職員さんがお連れすることになったのか、、
施設の方に話を改めて聞いてみたいと思い、インタビューに伺ってきました。
なぜ高齢者施設に入居している高齢者さんが出演することになったのか?
お話を聞くために今回、約7年ぶりにその後のお話をけま喜楽苑のスタッフさんに当時のお話を伺ってまいりました。
当時、介護スタッフがモデル募集の広告を見て、利用者さんにファッションショーに出演しませんか?と声がけしたところ『出演してみたい』とのことで代理で介護職員さんからご応募いただいたようです。
司会などの演出、舞台製作、衣装のスタイリングや貸し出し、ヘアメイクは当社がおこないましたが当時、けま喜楽苑のスタッフさんが会場までお連れくださり、今思えば特養の介護職員さんが車で会場までお連れするのは大変だったのでは?
と思いその時のことを聞いてみました。
「外部の会場へ利用者さんをお連れするというのは大変じゃなかったですか?」と質問したところ
「施設で日々平穏に暮らされている利用者さんも、ときには目一杯おしゃれをしたいこと、人前でたくさんの拍手をもらうような非日常の体験をすることは人として当然の想いで、それを支えるのが介護の仕事だと考えています。あのようなイベントを開催してくださってありがとうございました。」
また、「いまだにお部屋には当時のモデルのときの写真をたくさん飾られています。」という嬉しいお言葉を頂きました。
介護というと、排せつやお食事の介助、というイメージが世間では大きいと思いますが、
高齢者の衣食住だけでなく「人がその人らしく心豊かに生きること」をサポートするという介護の仕事の素晴らしい奥深さを感じました。
執筆:フクシル株式会社 倉橋健太