認知症を認めない方の気持ちと家族にできる対応とは?
・同じことを何度も言う
・約束を忘れている
・物を無くすことが増えた
そんな姿を見て、家族が「もしかして認知症?」と気づくことがあります。
しかし、家族が心配して病院受診を勧めても、当の本人は「うっかりしていただけ。認知症なんかじゃない」と認めず、時には怒り出すことも。
どうすれば本人も納得できる形で病院受診につなげられるのでしょうか。
今回は認知症を認めない方の気持ちを解説すると共に、家族ができる対処法をご紹介します。
認知症を認めない方の気持ちとは?
認知症を「怖い」「恥ずかしい」と感じている
2011年に実施された高齢者が「認知症」に抱くイメージ調査の結果(※1)によると、7割以上の方が認知症に「怖い」「悲しい」「大切にされない」というイメージを抱いており、認知症になることに強い不安を示していました。
また、約6割の方が「恥ずかしい」と思っており、そう思わない人に比べて受診への抵抗が強いことも分かりました。
認知症を認めない方の背景には、こういったネガティブな感情があると考えられます。
※1 高齢者における「認知症」に関するイメージと知識 看護学統合研究
「認知症は治らない」と思っている
先の調査では、「高齢者がどの程度認知症に対して正しい知識を持っているか」についても調査され、その結果、約7割の方が「病院に行っても治らない」と考えており、そう思わない人に比べて受診に強い抵抗を感じていました。
確かにアルツハイマー型認知症など完全に治せない認知症もありますが、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫などによる認知症症状は手術で改善できます。また、治せない認知症も薬物治療で進行を遅らせることは可能です。
認知症の正しい情報を知らずに「治らない」と思い込むことも不安を高め、「認めたくない」という気持ちを強める要因だと言えるでしょう。
家族の言うことを素直に聞けない
「自分が家族を支えている」と自負している方は、「家族を支え続けるために自分が病気になる訳にはいかない」という責任感から、認知症を認めることに抵抗するかもしれません。
また、家族を支える立場から支えられる立場になることに「申し訳なさ」や「屈辱感」を抱く可能性もあります。
家族を大切に想うからこそ、「認知症なのでは?」という指摘を素直に受け入れられない方もいるのです。
認知症を認めない方に対して家族ができること
気持ちに寄り添って話を聴く
認知症を認めない方の多くは、本当に「自分は認知症じゃない」と確信している訳ではありません。
「認知症かもしれない」と思ったときに浮かぶ「認知症なんて恥ずかしい」「もう治らない」などの不安に耐えきれず、「自分は大丈夫なんだ」と自分に言い聞かせているだけなのです。
まずはそんな不安な気持ちを落ち着かせることが大切。そのためにも本人の気持ちを否定せずに聴いてみましょう。
「私は認知症じゃない!」と訴え続ける方でも、否定せずに話を聴くと「鍵を閉め忘れるのだけは心配」「火の消し忘れが怖い」など、認知症になる不安を話し始めることも。その話題をきっかけに「それは病院で相談してみると良いかもしれない」と促すことができます。
「家族のために受診してほしい」と頼んでみる
「あなたの〇〇なところがおかしいから受診した方がいい」と伝えると、本人は傷つきますし、「おかしくないから病院には行かない!」と拒否したくなります。
受診を促すときは「本人に問題がある」と伝えるよりも「家族のため」という名目で頼んでみるのがおすすめです。
「ずっと元気でいてほしいから念のため受診してほしい」
「病院に連れて行けば良かったと後悔したくない」
など、あくまで「家族のためにお願いしている」という形を取ることで、本人も「家族のためなら仕方ないな」と感じやすくなります。
認知症初期集中支援チームの力を借りる
家族の言葉に耳を貸さない場合には、「認知症初期集中支援チーム」の力を借りてみましょう。
認知症初期集中支援チームは、認知症が疑われる方を医療や介護につなぎ、住み慣れた地域での生活を維持できるよう支援する役割を担っています。
具体的には、
- 基本的な認知症に関する情報提供
- 本人や家族への心理的サポート
- 病院への受診勧奨や誘導
などを行ってくれます。
多くの場合、各市町村の地域包括支援センターなどに設置されていますので、ぜひ問い合わせてみてください。
まとめ
認知症を認めない方の背景には、
- 認知症に対するネガティブなイメージ
- 認知症に関する正しい知識の不足
- 家族を支えられなくなる罪悪感や屈辱感
などがあります。
これらを無視して、認知症を認めるよう訴えても、かえって本人は反発します。
- 本人の気持ちを否定せず聴く
- 「家族のために受診してほしい」と頼む
- 認知症初期集中支援チームの力を借りる
などの方法で、本人の気持ちやプライドを大切にしながら、医療や介護のサービスにつなげることが大切です。