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「地域包括支援センター」とは?その役割と利用方法を紹介

2021年3月18日

地域包括支援センターをご存じですか?地域包括支援センターとは各市町村に設置されている「介護」「医療」「福祉」の総合相談窓口です。現在全国に5,079箇所(※1:平成30年4月時点)設置されています。

※1:地域包括支援センターの運営状況について:厚生労働省老健局

高齢により生活に支障が出てきた、もしくは物忘れが多くなり認知症の始まりではないかなど不安を抱えていませんか?

地域包括支援センターを上手に活用することで、住み慣れた地域でこれからも安心して生活し続ける手助けとなります。

そこで、今回は地域包括支援センターとはどのような場所であるのか、対象や役割、また実際の利用方法などをご紹介します。

地域包括支援センターとは?

ここでは地域包括支援センターの説明や、ケアマネジャーとの違いなどを説明します。

地域包括支援センターと利用対象

地域包括支援センターは各市町村が設置主体となり、直接もしくは社会福祉法人や民間企業などに運営を委託し、各中学校区に1つの割合で全国に設置されている機関です。

国の地域包括ケアシステムによってつくられた機関です。今後更に増加する高齢者の健康維持促進、また認知症やその他介護が必要な状況でも、適切な支援を受けることで在宅生活が維持できるように、医療・福祉・介護の面から総合的に支援する目的があります。

利用対象はその地域に住む65歳以上の高齢者とその家族です。家族が離れて暮らす独居の高齢者の場合、家族はその高齢者の方が実際に住んでいる地域包括支援センターに相談する必要があります。

地域包括支援センターを構成している3つの職種

地域包括支援センターでは必ず以下の3つの職種が常駐しています。

  1. 社会福祉士
  2. 主任ケアマネジャー
  3. 保健師

高齢者の権利や人権、金銭的課題から介護医療までそれぞれの知識と経験をもった専門家です。

また現在増加傾向にある認知症対策にも力を入れており、認知症の早期発見早期対応のために、保健師はもちろん認知症サポーターなどの資格を持った職員もいます。

ケアマネジャーとの違い

ケアマネジャーはそれぞれの企業である「居宅介護支援事業所」に勤めています。地域包括支援センターとの違いは主に対象者の違いです。

地域包括支援センターの対象は地域の65歳以上の高齢者全てに対して、ケアマネジャーは介護認定を受け介護度を持っている方のみです。

地域包括支援センターは、介護認定を受けていない方でも医療から福祉などさまざまな相談を受け、支援や専門機関との連携をおこないます。また介護度の「要支援」にあたる方の担当は地域包括支援センターになりますが、地域包括支援センターからの「委託」と言う形で居宅介護支援事業所のケアマネジャーでも担当することができます。

地域包括支援センターの4つの役割

ここでは地域包括支援センターの柱でもある4つの役割について詳しく説明します。

介護予防ケアマネジメント

支援や介護が必要な方に対して、介護認定の手続きから介護予防に関する支援を行います。具体的には、「要支援1.2」に該当する方の介護予防ケアプランの作成と継続的支援をおこなうことです。

これ以上介護度が上がらない、もしくは改善を目標に自助具や住環境の設備、もしくは運動教室などを提案するなど介護予防の観点から支援を行います。また、身体状況が悪化するなど介護度が上がった際は、居宅介護支援事業所に引き継ぎケアが滞りなく提供されるよう働きかけます。

また、介護予防支援として地域のリハビリ施設や行政と連携して運動教室や介護予防教室を開く活動もしています。

総合相談・支援

高齢者の相談の窓口として常に相談をすることができます。緊急の場合など事業所にもよりますが、24時間連絡を受け付けているところもあります。

ご本人やご家族の相談はもちろん、お隣の高齢者の方が最近姿が見えないなどの近所の方の相談も受け付けており、その際は安否確認から必要に応じて地域の民生委員や自治体の支援も受けながら対応してくれます。

権利擁護

高齢者の権利を守る働きも役割の一つです。身内がおらず高齢で自己決定が難しい高齢者に対して金銭や各種契約などを支援する成年後見制度のサポートを行います。また、高齢者の虐待や悪質な詐欺、金銭的被害の防止などのさまざまな高齢者の権利に関わる問題解決の支援を行います。

包括的・継続的ケアマネジメント支援

地域包括支援センターの対象者は高齢者でありますが、対象地域の「居宅介護支援事業所」の相談窓口でもあり、ケアマネジャーが抱える支援困難事例へのアドバイスや支援なども行います。

また数年前より行われている地域の専門職を集め開かれる「地域ケア会議」では、ケアマネジャーの担当する利用者のケアプランを通して、高齢者の自立のための支援方法の共有と地域の課題や資源などを洗い出し把握する役割を担っています。

地域包括支援センターはどんな時に相談する?

具体的にどのような状況の際に相談・利用するべきなのか相談例を通して説明します。

相談例~認知症~

相談者:52歳女性Aさん、75歳になる母親Bさんと二人暮らししている。

Aさんが一人で地域包括支援センターに相談に訪れる。最近母親が怒りっぽく、同じものを何個も買ってきたり鍋を焦がしたり、昼間一人で過ごさせることが不安になってきた。しかし仕事Aさんは仕事をしているため、どうしたらいいか悩んでいるとのことと。

後日Aさん在宅時に包括職員が自宅を訪れBさん面談。認知症の可能性があり支援が必要と判断し、専門病院の受診を促しその後介護認定手続きを行った。結果「要介護1」の認定を受け、居宅介護支援事業所へ引継をした。その後Bさんは内服薬をはじめながら昼間は時折デイサービスに通うなど在宅生活を続けながら支援を受けている。

相談例~1人暮らしの高齢者~

相談者:55歳男性Aさん、78歳の母親BさんはAさんと別の県で離れて一人で暮らしている。

Aさんより地域包括支援センターに電話にて、離れて暮らす母親のBさんが心配と相談あり。時折帰省するが、表情が暗くご近所の方の話では最近はあまり外で見かけなくなったとの話も聞いた。様子が気になるので時々気にかけてもらえないだろうかと相談を受ける。

後日包括職員がBさんの自宅をBさんと顔見知りでもある民生委員とともに訪問する。最近足腰の痛みから、家にこもりがちとなっているとのこと。立ち上がりや移動の動作も不安定な様子が見られる。お話を伺い、息子のAさんと相談をし介護認定を受け「要支援1」の認定を受ける。

介護保険で移動の補助具をレンタルしながら、地域包括が主催している無料の運動教室への参加を促し、介護プランの評価も含め包括職員が定期訪問を続けた。数か月後、運動の機会が定着し、自助具のレンタルも終了し現在も自宅で独居を続けることができているが、引き続き定期訪問は継続した。

相談例~ご近所の方相談~

相談者:近所に住むAさん、当事者のBさん夫婦

近所に住むAさんより、最近Bさん夫妻の自宅から御主人の怒鳴り声が聞こえるとのこと。特に奥さんの姿を最近見ない為心配だと来所にて相談を受ける。

後日、Bさんのお宅に相談を受けた件は伏せて様子伺いに訪問する。自宅内は整理されておらず、最近妻の体調がすぐれず寝ていることが多くご主人がほぼ身のまわりのことをしているとのこと。ご主人も足腰が不安定であり疲弊の様子が伺われる。妻は見える範囲では暴力などは受けている様子はなかった。

身内は近くにおらず支援が受けられないとのことで、かかりつけ医に相談をし介護認定を行い夫婦ともに要支援1の認定を受ける。食事に関しては宅配弁当の紹介をし、身のまわりの家事に関しては介護予防訪問介護を導入し家事や買い物の支援を受け御主人の負担を軽減した。定期的に訪問を続けることで、ご主人の怒鳴り声は聞かれなくなった。

まとめ

地域包括支援センターとは「医療」「福祉」「介護」の相談窓口として各市町村に設置されています。高齢者のさまざまな相談を受け付けており、必要に応じて専門機関に連携を取ることもできます。

生活に不安を感じた際は、早めに相談することで生活の立て直しが可能となり住み慣れた自宅で長く安心して生活することができます。

まずはご自分の住んでいる地域の地域包括支援センターがどこになるのか、各市町村のホームページや市報などで確認してみましょう。

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