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巽病院介護老人保健施設 ~その人らしく過ごせるための取り組みと課題~

2021年6月16日

巽病院介護老人保健施設(大阪府池田市)は、急性期病院の巽病院に併設され、利用者の人生を連続してサポートする「シームレスの支援」をモットーとしています。4階フロアマネジャーを務める介護福祉士の網井美希(あみい・みき)さんは「コロナ禍にあって早く日常を取り戻したい」と期待を込めていました。

ご自身のプロフィールを教えてください。

老健施設で実習をする機会があり、介護の仕事が面白いと思ったことがきっかけになり、20歳でこの施設に就職しました。働きながら勉強して就職から3年後に、介護福祉士の資格を取りました。それから18年がたちました。
今、4階のフロアマネジャーを務めています。
80歳代の後半から90歳代と年齢層も高く、認知症の症状も進んでいる人が多く、認知症患者ではなく、一人の高齢者として向き合っていいます。

コロナ禍で職員のミーティングも中止が多く、情報共有が課題となっていて申し送りノートを活用しています。

日ごろ、取り組んでいることを教えてください。

利用者さんが不安なく過ごせることを心掛けています。認知症の利用者さんは夕方になるとそわそわしだしたり、「家に帰りたい」と言ったり、認知症に特有の不穏な行動を「夕暮れ症候群」と呼びます。「帰りたい」と話す根本的な理由を知ることが大切です。

認知症の方は、環境が変わるだけでそれまでできたことができなくなることがあります。
新型コロナウイルス感染リスクを抑えるため、ご家族との面会も中止になりました。ご家族も、利用者さんも、互いの顔が見えない不安をどう乗り越えられるかが課題です。洗濯物を届けられるご家族に、職員が利用者さんの状態や表情を詳しく伝えています。タブレットを活用したリモート面会も定着しました。1階のご家族とフロアの利用者さんをつなぎます。

コロナ対策の消毒を徹底した副次的な成果でしょうか。インフルエンザもノロウイルスも一人の感染者も出ていません。

どんなとき、やりがいを感じますか。

利用者さんのお役に立てたと感じたとき、やりがいを感じます。
何気ない日常の会話でも、笑えるものです。認知症の方は、最近の記憶はあいまいでも、昔の記憶ははっきり持っています。昔、喫茶店を営んでいたとか、過去の仕事や家族の大切な話になると、ご本人の気分も盛り上がります。かつての自分を取り戻し、すごくいい表情をされます。話を聞くだけで安心され、そこから信頼関係が生まれます。

入所間もない時期に利用者さんと職員が打ち解けず、心のバリアを乗り越えられないこともあります。安心されたら、ほっとしていい笑顔を浮かべます。逆に、職員がうまく回らないと不安に思っていると、それが伝わります。認知症の方は雰囲気にとても敏感です。

今後の課題はどのようなことですか。

ガーデンパーティー、夏祭り、フェスティバル、敬老会など2カ月に1回程度、大小のイベントを開いていました。しかし、コロナ禍のため、変化に乏しい毎日です。何か楽しいと思えることを一緒にやりたい。職員みんなが一緒になって、利用者さんが落ち着ける環境を整えたいと願います。
コロナ禍は本当に大変です。職員も、ステイホームを強いられ、プライベートもなく、旅行にも行けず、実家に帰ることもできず、ストレス解消の機会がありません。モチベーションを維持できない1年が続いています。
早く日常を取り戻したい。日常の当たり前のサイクルに戻ったら、利用者さんにも、心から明るく接することができると期待しています。

おれんじねっとを通じて、地域社会に伝えたいことをお願いします。

私も4年前の夏、和歌山県の実家で家族と一緒に98歳まで長生きしたおばあちゃんを看とりました。
老健施設の介護サービスはまだまだ知られていません。面倒をみるご家族が倒れないように、福祉や介護のサービスをうまく使っていただきたいのです。
家にいたい高齢者の方も多いでしょう。昼間の通所リハビリや週末だけでもショートステイを利用するとか、自宅と施設を行ったり来たりする方法もあります。

副施設長の中谷茂子(なかたに・しげこ)さんは、地域における支え合いの大切さを強調していました。

地域で支え合うためにも、認知症の当事者の立場に立った情報発信が求められます。最も身近なご家族が相談できる場所が地域包括支援センターです。池田市内の地域包括支援センター4カ所のうち、この施設内に石橋巽地域包括支援センターがあります。市民向けの相談窓口を知ってもらうと、介護保険や介護福祉のサービスにつながることができます。

認知症の理解を広げるためにも、地域で支え合うためにも、情報を発信する側と受け取る側がつながっていくことを大切にしています。

施設案内



医療法人マックシール 巽病院介護老人保健施設
所在地:大阪府池田市天神1-5-22
電話番号:072-762-1980
入所定員120人
通所定員35人

執筆:おれんじねっと記者  中尾卓司

1966年4月、兵庫県丹波篠山市生まれ。
1990年4月、毎日新聞入社。大阪社会部、外信部、ウィーン支局、社会部編集委員を経て、2020年3月、毎日新聞を早期退職。記者一筋に30年の経験を生かして、おれんじねっとの取材チームに加わり、記者活動を展開中。「つなぐ、つながる、つなげる」を掲げて新しい情報発信のかたちを提案している。
大阪大学箕面キャンパス「現代ジャーナリズム論」非常勤講師
関西大学社会学部「ジャーナリズム論」「時事問題研究2」非常勤講師

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